お洒落さん

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昨夕の雨と言ったら。バケツをひっくり返したような降り、と言ったらぴったりくるだろうか。豪雨と言えばよいだろうか。兎に角、傘を差して歩くことなど不可能なほどの降りだった。いや、可能と言えば可能。しかし私のような雨嫌いは雨の中を、傘を差しても全身びしょ濡れになるような雨の中を歩くなんて天地がひっくり返らなければありえないことなのである。そんな雨に洗われた、今日のボローニャの空気は清い。久しぶりに空気が綺麗だ、と感じるほど。今日も降りそうだと朝から空を眺めながら一日を過ごした。向こうの空に黒い雲の一群。しかし其れも風に押されて何処かへ行ってしまった。残ったのは明るい太陽の光、そしてきらきらと光る樹の葉を揺らすひんやりした風。向こうの丘が黄色く染まっているのは花が咲いているからだろう。以前は頻繁に足を延ばしたというのに、ここ数年は訪れていない。

今週はPITTI UOMOだった。PITTI UOMOとはフィレンツェで催される男性MODAで、この時期になると、とんでもなく洒落た人々で街が一杯になる。MODAとは何のつながりもない私とて、関心を持たずにはいられない。フィレンツェで宿を確保出来ず、ボローニャに宿をとってフィレンツェ通いする人もいる。だからボローニャ旧市街で素晴らしくイカシタ人に遭遇したりして、全く良い刺激である。この時期に合わせて、街のブティックのショーウィンドウが秋冬物になる。MODAの世界はいつも先の季節に焦点を合わせるものらしく、だから6月にしてそんな具合になる。それにしても私が何時も思うのは、流行とが繰り返すものだということだ。先日旧市街のショウウィンドウに目が釘づけになった。それは赤ワイン色の革のジャケットで、足を踏み入れたことはただの一度しかないGUCCIのウィンドウだった。この店に置かれているものは実に丁寧に作られている、と思う。縫い目を見ればそれが分かる。高級すぎて手が出ないけれど、もう少し手頃な値段がついていればと思わないでもないけれど、まあ、手に入らずに鑑賞するだけのものがあっても良いだろう。GUCCIのものは私にとってそんな存在。鑑賞して楽しむものなのである。それでこの赤い革のジャケットだけど、勿論そっくりとは言わないけれど、昔、母の洋服箪笥に似たようなものがあったと思ったのだ。コロンとした形のボタンは同じ革でくるんであって、かっちりした印象の細身のジャケット。どれほど前のことだったか、あまりに遠い昔のことで思い出せないけれど、確かにこんな感じのものがあったと思った。若い頃、母は大変な美人だったらしい。其の上、明晰とあったから、あれこれ良い話があったようだ。でも、子供の時代に戦争を通過して母親を失くしたり家族が離れ離れになったことから、地味だけど堅実で優しい父と結婚したそうだ。父はお洒落とは無縁の人だった。私が覚えているのは父がハンチング帽に拘りを持っていたことくらいだ。それ以外は関心が無くて、母が選んでくるものをまるで当り前のように身に着けていた。母はお洒落に関心が人一倍あって、フランスやイタリア製の美しい生地や毛糸を見つけると見過ごすことなど出来なかったらしく、それどころか見た瞬間にどんな形に仕上げようなどとイメージまでもが浮かんでくるらしく、それらを購入して、時には自分で、時には馴染の仕立て屋さんに持ち込んで美しいジャケットやセーターを手に入れた。だから、母の洋服箪笥はいつも美しいものが一杯で、母が留守の時にこっそりと箪笥を開けては物色したり自分に当てて鏡に映してみたりした。姉と私は夏休みの夕方、風に吹かれながら母のスタイルブックなるものを本棚から引っ張り出して、此れがいい、あれがいいと批評して楽しんだものである。母が持っていたあのジャケットがGUCCI製であることはまずない。多分そういうものが流行だったのだ、あの時代は。そうして何十年も経った今、また流行が戻って来たということか。母がこれを見たら、大そう喜ぶことだろう。流行と言えば、サングラスもそうだ。90年代初めにアメリカで購入した、気に入りのサングラス。あまりの気に入りで20年も活用して、皆から流行おくれだから別のを購入しただどうかと笑われたものだけど、昨年くらいから気に入りのサングラスと同じスタイルのものがお洒落と言われるようになって、目を白黒させたものである。以前私を笑った人達は一体どう思っただろうか。あんなに笑ってくれたけれど。

ところで私は流行というものをあまり気にしない人間である。私はこういうものが好き、というものが体の中心に存在するので、お洒落さんを見るのは好きだけれども、それとこれは別物なのである。シンプルで素材の良いもの。それが一番自分らしい。


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コメント

こんにちは、yspringmindさん。
いいですね。目の保養になるものがいっぱいあることは、いつまでもこうしようと発想がわきますね。
わたしも、見てみたいなあ。

2015/06/21 (Sun) 09:51 | つばめ #- | URL | 編集

yspringmindさん、こんにちは。
私もこういうシルエットのジャケット大好きなのですが、胸が大きい、、、ではなくて胸板が厚いので、どうも決まらないのですよ。マニッシュなものが好きなのに残念なのです。
グラマーなイタリア女性は、こういうカチっとしたラインをどうやって着こなすのでしょうか。
見てみたいです。

2015/06/21 (Sun) 12:18 | micio #O/XG6wUc | URL | 編集
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2015/06/21 (Sun) 16:22 | # | | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。
本当に目の保養になるものが沢山あります。見るばかりで手に入れることはありませんが、観ることで感性を磨くことは出来そうですよ。ところでこのジャケットの値段が素晴らしいのです。日本に帰る飛行機代と滞在費と同等・・・と考えて頂ければよいです。

2015/06/21 (Sun) 22:03 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

micioさん、こんにちは。成程、私もこういうのが好きなのですが今ひとつに合わないのですよ。胸の大きな女性は、前を閉めることなく着こなすでしょう。イタリア人はこんなジャケットを決行誰でも平気で上手に着こなします。多分それは、生まれながら上手く着こなすというか、上手に自分を格好よく見せることに長けているからなのではないかと。沢山の通行人がこのショーウィンドウの前で足を止めました。

2015/06/21 (Sun) 22:07 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

鍵コメさん、こんにちは。この革、見るからに柔らかそうで、多分身に着けたらどんな体系の人にもぴたりとくるのではないかと想像しました。GUCCIは縫製が丁寧で脱帽です。多くの人が魅了されるのも訳ない、と思う次第です。
そう言えばマイケル・ジャクソンも赤の皮ジャケットを着ていましたね。あちらの赤は少し明るい赤だったけれど。確かに、あれも衝撃的でした。
鍵コメさん、私は思うのですが洋服をオーダーするののは決して贅沢ではありません。そうして仕上がったものは大切に長く切るわけだし。私は、安いからどぽろぽろお金をこぼす方が散財だと思うのです。本当に好きなものにお金を注いで長く使う。とても良いことですよ。
ところでDAMIANIですが、二週間前の昼間に強盗が入りました。そして数日前にはガッレリアの中のブルガリに同じほうとうと思われる人が全く同じ時間に入り口横のガラスを打ち破ろうとしたのですが、未遂に終わりました。ということで、この辺りの宝石商は只今強盗に怯えているのですよ。
・・・・・雨降りはやっぱり嫌いです。何故ならば、足元が濡れるからなのです。家に居る日ならばよいのですけどねー。

2015/06/21 (Sun) 22:19 | yspringmind #- | URL | 編集
雨の日。

yspringmindさん、こんにちは。
ボローニャも結構な頻度で雨が降るのですね。
雨の朝は、先ず靴を選んで洋服を選びます。お気に入りの靴が傷んでは悲しいですもの。昔靴のお修理をして下さる伯父さんに、靴も生き物と同じだから!一度濡れた皮は元通りには出来ないから大切に扱わないといけないと教えて頂いた事があり、それ以来雨の日の靴選びを慎重にするようになったのです。

やはり子供の頃、母の洋服はお手本になります。
また幼い頃に与えられた洋服の色目やデザインは、幾つになっても不思議と鮮明に記憶しておりますよね。
そして、ファッションのリバイバル・・・好きな物は中々処分できない性格のせいか数年着用したりと、矢張り時代は変わっても基本ベースはきっと同じなのです。
素敵なサングラスブラウンでしょうか。
ご自身のスタイルをお持ちのお母様は、今も凛としたお洒落を楽しんでいらっしゃることでしょう。


2015/06/22 (Mon) 15:03 | すみれ #GYxcADzc | URL | 編集
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2015/06/22 (Mon) 16:05 | # | | 編集
Re: 雨の日。

すみれさん、こんにちは。この時期こんなに雨が降るのは、それほどスタンダードなことではありません。雨がよく降るのは通常10,11月ですからね。気を許すと直ぐに雨が降ります。夕立みたいなものもあれば、それをはるかに超えた大雨も。私は足元が濡れるのが大嫌いで、特に気に入りの靴が濡れるなんて耐えられない、と言う訳です。そのあたり、すみれさんと気持ちを共有できそうです。うふふ。
私は昔、母の服を譲ってもらったことがあります。それは60年代後半のコートで、それはとてもシックで、レトロチックで、何処へ来て言っても人に褒められたものです。そしてこれもまた母に譲って貰ったもので、革のバッグ。赤茶色の説明の難しい形のもので、コートによく合う、昔風が素敵でした。そんなものに身を包んでいた母をお洒落だなあと思ったものです。
リバイバル、そうですね、そんな風に呼びますね。長く生きれば生きるほど、そういうものを目にすることが多くなっていくのでしょう。それも楽しみのひとつです。

2015/06/23 (Tue) 20:24 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

鍵コメさん、そうそう、服はシンプルでベーシックなものが良いのです。私はオーダーした服を長きこと着ていません。日本を発って以来、服をオーダーすることが無くなってしまいましたから。鍵コメさんが羨ましい。私はいつかカシミア生地の軽くて暖かいコートを自分の手で縫い上げることが小さな夢のひとつですが、それはどうにも実現しそうにないので、作ってもらうのも良いかなあ、と。しかしそうそう簡単に手に入れてはいけないのです。何かのお祝いに、何かの象徴に、と思っています。だからもう少し仮我慢です。
日本の治安の良さは素晴らしいです。自動販売機がそのよい例で、それから田舎によくある無人野菜販売などはイタリアでもアメリカでも驚愕の的です。そんなことあり得ない、と信じて貰えないことだってあるほどです。そんな安全な日本に生まれ育ったことを私は嬉しく思うのです。
写真は手頃に楽しめるのがポイントです。楽しむ、それが大切ですよね。

2015/06/23 (Tue) 20:32 | yspringmind #- | URL | 編集

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