帰り道に見つけた

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6月2日。火曜日だけれど家でのんびりできるのは祝日のおかげ。イタリア建国記念日の今日は朝から快晴。折角の休みだから朝寝坊しようと思っていたが、外があまりにも明るくて陽気な空気に満ちていたので早々に起床した。降り注ぐ太陽の光。雲ひとつない空。寒がりの私が朝から半袖シャツを着ようと思うくらいの気温。良い季節になったと思う。テラスの植物に水をくべるのですら楽しいと思えるのは、心も身体も元気な証拠。特に良いことなどないけれど、そんな小さな事に気が付いては感謝と喜びを感じる。平日なのに家に居る私を、猫はずる休みをしていると思っているだろうか。それとも彼女もちゃんとイタリアの祝日であることに気が付いているのだろうか。

先日の帰り道に食料品市場界隈へと向かって歩いていたところ、私が時々立ち寄るフランス屋の前で店主が3人の男性と話をしているのを見かけた。男性たちは見るところ70歳前、それとも70歳半ばくらいにも見え、しかし年老いて疲れた様子など無く、ちょっとお洒落をして楽しそうな様子だった。彼らが親しそうに店主と話しているところから、以前からの知り合いか、それとも店によく顔を出す客たち、と察した。そうして彼らは人差し指で上を差すと、すたすたと店に入り、上の階へと続く階段を上がって行った。そんな様子を遠くから眺めていた私を店主が見つけ、やあ、シニョーラ! と挨拶を投げかけたので、素通りするのもなんだからと美味しいワインを一杯頂くことにした。店に入ると注文することもなく店主が勝手にワインを選んでグラスに注いでくれる。私が赤ワインが好きなこと、どんなタイプが好きであるかをいつの間にか理解した店主ならではのことである。今日はこれがいい、と言って選んでくれるものがいつも当たりなので、私も黙って任せているといった具合なのだ。そうしているうちにまた年齢層の高い男性がひとり。もう居るかい?と人差し指で上を差しながら訊ねる。居ますよ、と店主が短く応えると男性は上の階に上がって行った。そしてまたひとり同じような男性が来て、上へと続く階段に吸い込まれていく。不思議で、それが知りたくてたまらないといった表情をしていた私に、店主が含み笑いしながら教えてくれたのは、こんなことだった。彼らは何時の頃からか、金曜日の夕方遅くになるとまるで約束をしていたみたいにしてこの店の上階に集まるようになったのだそうだ。みんなが一緒に店に入ることは無く、ひとりふたりと仲間が来ていることを確認すると上に行く、と言った具合だった。どうやら昔からの仲良しらしい、とは店主が随分前にワインをサービスする時にテーブルに行った時に聞こえてきた会話からの推測だった。子供の頃に引っ越しをして、引っ越し先でも常に足が東京へと向いていた私には子供時代からの友達はごくわずかだ。其の上、祖国を離れて暮らしている今は、昔からの友達、若しくは知り合いと、膝をつけ合って、又は肩を並べて話をするようなことはごく稀なことになってしまった。彼らの年齢になった時に彼らのような集まりを持てるとは思えない。いいわねえ、私もそういうのしたいわねえ。と言葉をこぼすと、店主はうんうんと頷いて同意した。どんな話をしているのだろう。広場でサッカーをしたこととか、それとも夏の休暇先での冒険とか恋とか、それとも家族の事とか。と、女性客が入ってきて、年齢層の高いグループは来ているかと店主に訊ねた。店主が来ていると答えると、彼女は上に上がって行った。店主と私は顔を見合わせて、一体どういうことだろう、と無言で問い合った。そのうち大きな笑い声と騒ぎが聞こえて来て、どうやら彼女が誰かの娘であることが分かった。おとうさん、やっぱりここに来ていたのね。などと言われていたのかもしれない。女性は直ぐに降りてくることなく、話に交わった楽しい声が聞こえてきたから、上手く話が付いたのだろう。楽しそうねえ。という私に、楽しそうだな、交ぜで貰おうかと店主が言ったので、私達は声を上げて笑った。金曜日の夕方を楽しむ。しかもちょっとお洒落をして、フランス屋などでワインを堪能しながらお喋りをする楽しみ。上階に居る彼らを素敵に思い、良いお手本にしようと思った。

私は沢山の友達を持っていない。知り合いと仲良しさんが沢山いて、友達と呼ぶような人はほんの少しだけ。でも、飛び切りの友達。腹を割って話が出来る、自分を砂糖で飾る必要のない、本当の意味での友達。両手の指で数えるほどしかいないけれど、こんな宝物は無いと思う。皆どこかに散らばっていて思うように会うことが出来ないけれど。同じ地球の上に居るのだ。寂しいことは無い。元気にしていればまた会えるさ。


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コメント

yspringmindさん。こんにちわ。
その紳士たち。ちょっとおしゃれしてって言うのが素敵ですね。きちんと折り目のついた麻のシャツとズボンなんていうおしゃれなんでしょうか?パナマの帽子を被って。。。なんて想像していまいました。
ほんの少しでも本当の友人がいればそれは幸運なこと。私にもいます。たまにしか会えないけれど私を私のままで受け入れてくれて、いろいろなことを分かち合える友人が。これからも大切にしたいと思っています。今夜は満月ですね。テラスでお月見ですか?私は アパートの窓から楽しみたいと思います。

2015/06/02 (Tue) 17:11 | kimilon #036/uE16 | URL | 編集
Re: タイトルなし

kimilonさん、こんにちは。この男性たちは、きちんと折り目のついたシャツとズボン、だけどちょっと着崩していて、私にはちょっと真似できないタイプのお洒落でした。シンプルだけどお洒落に見えたのは、多分気つがピカピカに磨かれていたことと、潔い程の銀髪のせいかもしれません。それにシャツにしてもズボンにしても明るい赤だったり、レモン色だったりで、人の目をどのようにして引くかをよく知っているような感じもしました。
友は財産です。ひとりだっていい、自分をそのまま受け入れてくれる友が居るのは何よりもの財産ですね。

2015/06/03 (Wed) 22:33 | yspringmind #- | URL | 編集

レモン色やオレンジ色のシャツに磨き込まれた靴、わあ、お洒落だなぁ。自分も楽しみ、ひとも楽しませるお洒落ですね。
古くからの友人がこの夏、フランスに来てくれそうです。楽しみです。

2015/06/04 (Thu) 07:37 | #036/uE16 | URL | 編集
Re: タイトルなし

私が想像するに、フランスの男性はイタリアの男性よりもお洒落上手なのではないでしょうか。これは実際に行って、確かめなくてはいけません。私も思うのですよ。お洒落とは・・・自分も楽しみ、周囲の人の目も楽しませるものだって。
ご友人、遊びに来るそうでいいですね。私の友人も来ればいいのに。

2015/06/06 (Sat) 22:22 | yspringmind #- | URL | 編集

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