違う色、違う空気。

DSC_0149 small


逃亡先はヴェネツィア。逃亡先にしては近過ぎると思うが、けれどもヴェネツィア。同じイタリアだけど、特急電車に乗ればたったの1時間半もかからないけれど、目に飛び込んでくる全てが非日常的に見えるこの町の様子は、私を大そう癒してくれる。ボローニャとは違う色、ボローニャとは違う空気が漂う町。

この町はいつ訪れても旅行者で溢れている。私のようにイタリアの他の町からくる人もいれば、国境を越えて、海を越えてやって来る人もいる。旅行者で溢れていない時期になどと思って様々な時期に訪れてみたが、結局分かったのはいつ訪れても旅行者で一杯ということだ。人混みを嫌う人にとってはヴェネツィアのような町は散策に不向きと言うことになるが、ところがところがこの町には、ひと気のない閑散とした場所も沢山隠されているのである。反対側から言えば、散策の宝庫なのである。迷路のような裏通り。裏通りと言うけれど、本当は表通りかもしれないヴェネツィアの生活路をなぞるようにして歩く楽しさ。ご近所さん同士が立ち話する脇を通り抜けながら、そっと耳を傾けてみる。聞こえてくるヴェネト地方のアクセントが私の笑いを誘う。ボローニャ辺りとは明らかに違うその話し方。そう言えば、ローマに居た頃、ヴェネト出身の男性の話し方を笑ったら、君の話し言葉だってボローニャ特有で可笑しいじゃないか、とローマ生まれの知人に笑われたものだ。日差しは強く、日向を歩いている分には暑く感じるほどだけど、一歩日陰に入ると酷く冷える。しかもラグーナや海からの風が吹き抜けると、ぴしゃりと頬を打たれるようだ。だから地元の人はまだまだ厚着。薄着をしたらあっという間に体が冷えて風邪をひいてしまうのを知っているから。反対に旅行者は薄着。もう袖無しのシャツなどを着て歩いている。老犬を伴って歩いて来る髪の手入れが良く施された女性と目が合ったので、挨拶を交わした。彼女もまだ腰丈の上着を着て海風対策万全だ。犬が歩き疲れたらしく、歩かなくなってしまった。彼女は、ほら、ほら、もう少しだから。そう言って犬を励まし、私に手を振って去って行った。後姿を眺めていたら、本当に直ぐ其処が家で、趣のある朽ちた大きな木の扉を手で押して入って行った。道から道へ。時々小さな橋を渡って、また小さな道へと渡り歩く。でも、時々行き止まりになるので、来た道を引き返し、そうすると方向感覚が無くなって、どちらへ歩いたら良いのか分からなくなってしまう。幾度通りすがりの人が道を教えてくれただろう。私が訊かなくても、この町の人達は方向を失って途方に暮れている人に見慣れているせいか、そういう人に自ら声を掛けて教えてくれる。そういう彼らを私は優しい人達と呼んでいる。それとも私がとんでもなく困った顔をしていたのかもしれないけれど。

散策に夢中になって、6時間も歩いてしまった。時々疲れては教会に入って腰を掛けてみたりもしたけれど。体がギシギシ痛むたびに、ヴェネツィアを歩いたことを思い出す。今度は、冬が訪れる前に行くことにしよう。ヴェネツィアの別の顔を発見できるに違いない。


人気ブログランキングへ 

Pagination

Comment

kimilon

水のある風景。それも建造物の中にとらわれた水のある風景はヴェネツィア特有のものなのでしょうか?それにしても イタリアはどこに行っても 歴史の香りがするのでしょうね。 まあ フランスもそうかもしれませんが。。
それにしても 絵になる風景ですね。
  • URL
  • 2015/04/27 08:03
  • Edit

つばめ

こんにちは、yspringmindさん。
光があたって、ぱっと突然空間が抜けたような場所ですね。yspringmindさんが訪ねられたから、知ることができる景色。
古い破れかかった窓もありますね。
子供のころ、なぜかよくこのようなアーチ型の窓の家を家を描いてました。あこがれだったのかな。

少し場所が変わっただけで、人も町も違っておもしろい。
最近、非常に窮屈さを感じていますが、私だけなんだろうか。
  • URL
  • 2015/04/27 15:38

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • 2015/04/27 17:19

basilea

そうですか、ヴェネツィアに行かれましたか。私は昨日からヴィチェンツァの近くにおります。天気が生憎なのは恒例になってしまいました。仕事の合間にヴェネツィアへも行ってみたいと思うのですがなかなかうまくいきません。あの町は徒歩が一番です。いつも発見があってワクワクします。旅行者で一杯の町だけれどどこかに必ず観光客のいない一角を見つけることが出来るのも魅力です。
  • URL
  • 2015/04/27 17:53
  • Edit

yspringmind

kimilonさん、こんにちは。水と共存する町なのでしょう、ヴェネツィアは。水野存在、水の色を計算したかのような色の壁が存在して、感嘆の溜息をこぼしてしまいます。早い話、これほど絵になる町は無いのかもしれません。しかし其れもまた、何時の日かフランスを訪れたら、同じようなことを感じるのかもしれません。
  • URL
  • 2015/04/27 21:25

yspringmind

つばめさん、此処にはいつか来たことがある記憶があります。でも、気の向くままに歩くので偶然辿り着くことが多く、次もまた来たいと思ってもたどり着けなかったりするのですよ。何しろこの町は迷路みたいなののですから。
私も窮屈に感じで逃避しました。時には良いものです。
  • URL
  • 2015/04/27 21:31

yspringmind

鍵コメさん、こんにちは。お母様とヴェネツィアを歩かれましたか。其れはとても素敵ですね。これはどんなに口で説明しても、どうしても伝わらない。だから伝えたい相手にヴェネツィアを観て歩いてもらうしかないのですよね。しかも大運河沿いではなく、内側の小さな運河が時々現れるような場所を。
ヴィヴァルディの音楽ですか。私の場合、映画のヴェニスの愛の音楽です。2年程前、この映画音楽がイタリアのジュエリーのコマーシャルに使われましたが、実にこの町にぴったりの、憂いある音楽です。
これから夏に向けて人が倍増するでしょう。だから私が次にここを訪れるのは、多分10月頃になると思われます。何度行っても飽きることがありません。
  • URL
  • 2015/04/27 21:38

yspringmind

basileaさん、こんにちは。ヴィチェンツァの近くにいらっしゃいますか。それにしたって毎度ながら雨に遭遇しますね。明後日には上がるそうですが、どうでしょう、すっきり晴れてくれるといいけれど。
ヴェネツィアは魔法の町。ひょいひょいと道をそれて歩いていくと誰もいない場所がありますね。ボローニャにだってそんな場所は滅多にありませんよ。今度は宿を2泊ほどとって、夜のヴェネツィアをそぞろ歩いてみたいものです。
  • URL
  • 2015/04/27 21:41

Post Your Comment

コメント:登録フォーム
公開設定

Utility

プロフィール

yspringmind

Author:yspringmind
ボローニャで考えたこと。

雑記帖の連絡先は
こちら。
ysmind@gmail.com 

フリーエリア

月別アーカイブ

QRコード

QR