感情

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一日中雨が降った水曜日は、其れでなくとも週の真ん中で愉しいことなど何もないのに、横殴りに雨が降ろうものならば、溜息のひとつもついてしまう。勿論、悪いことばかりではない。乾燥していた空気が雨に濡れ、埃や塵が洗い流される。この雨が上がった日は、空が青く澄み渡ることだろう。

もうじき復活祭がやって来る。この移動型祝日には本当に手を焼く。兎に角、毎年復活祭の日が違うから、復活祭までに必ず終了させるなどと約束したら大変だ。例えば相棒がそうだ。私の好きな幅広の箪笥を復活祭までに必ず修復して寝室に置いてくれると約束したからだ。ねえ、もうじき復活祭だけど、と言う私の催促じみた言葉に、彼は初めて気が付くのだ、今年の復活祭は4月第1週日曜日であることに。なんてこった、と嘆く彼。約束は約束だものねえ、と冷淡な私。さて、彼の約束は果たすことが出来るのだろうか。
箪笥は友人から譲られたものだ。舞台役者が夢だった彼は、それを追うために数年前に骨董品店を畳んだ。ローマ近郊の小さな町の劇団か何かと良い契約をしたからだった。時々彼から連絡があって、その町で上手くやっていること、やはり役者が彼の運命の仕事であること等を嬉しそうな声で報告するのだった。その後フランスに渡り、浮いた話が幾度かあったが、少し前にボローニャに戻ってきた。此処が僕の居場所と笑いながら。ボローニャ人は飛び出しても、いつかまた町に戻ってくる、などと初めに言ったのは誰だっただろう。其れはまるで彼のことで、そして相棒の事のようにも思えた。しかし、飛行機の窓からボローニャの赤い街が見えると、胸が一杯になると思ったのは彼らではなく外国人の私だった。自分の町でも何でもないのに、此処で生まれ育った訳でもないのに。それは説明のしようのない感情で、多分私にしか分からないことだ。誰にでもそんな感情はあるものだ。理屈では割り切れない感情。言葉で言い表せない感情。

歴史的建築物に子供の頃から普通に接してきた人達。こういうものが、こういう色が、知らぬ間に心や脳に植え付けられていく。いつか彼らが大人になってボローニャから離れても、大きな世界に羽ばたいていっても、帰ってくるのだろう、故郷に。そうであってほしいと私は願う。


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コメント

こんにちは、yspringmindさん。
若者の背中がかわいらしく、ゆったりとした時間が流れてますね。
建物が直線だけでなく、アーチもありますね。

2015/03/26 (Thu) 10:11 | つばめ #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。そんな彼らの後姿を眺めていたら、私も昔、こんな風に過ごしたことを思い出しました。この年齢の若者たちの時間は、本当にゆっくり流れているのでしょうね。
ボローニャには曲線が沢山存在します。何しろ回廊の町ですから。

2015/03/28 (Sat) 18:05 | yspringmind #- | URL | 編集

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