美しさ

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今日は春分の日。近所の庭に李だかの花が咲いている。その様子は満開と言うよりは、大騒ぎしながら咲いていると言って良い。無数の花たちが春だ春だと歓喜の声を上げながら、咲いているように見えた。
春だもの、と週末にしては早起きして散策に出掛けた。ボローニャ旧市街は人で一杯だった。旅行者も多く見掛けたが、見本市に訪れている見受けられる人も多かった。明日まで催されている美容関係の見本市だ。誰に教えて貰わずとも、この見本市に来た人達と分かる彼らは、すれ違いながら成程ねえ、などと感心してしまうような風貌なのだ。着飾っていると言うのでもないけれど、美しいことに携わる人達、美しいものに関心を持つ人達というのは、ほんの一瞬どこか違うような気がする。長くこの街に暮らしながら、この有名な見本市に足を向けたことが無い私だけれど、こんな風に彼らを観察しては美の世界にほんの少し参加したような気分になるのである。私はいつも思うのだけど、美しさの在り方は、人によって違うと言うこと。どれが美しいとか美しくないとか、どれが綺麗とか綺麗でないとか、ひと言には言えないのだ、と。

昔、こんな人がいた。アメリカに居た頃の友人、シャロンだ。彼女は一見女らしさが無く、周囲の男たちも舌を巻くほどの強い精神の持ち主だった。写真を撮るためにタクシードライバーと言う職種を選んだ。何かはっとしたものに出会った時に、心惹かれる情景を目にした時に、すぐに車を止めて写真を撮ることが出来るように。そんな理由でタクシードライバーをしている人を私は沢山知っていたが、彼女は其の中でも情熱的な人だった。痩せた体形にシンプルなシャツにジーンズと言った姿で、分厚いセルロイドフレームの眼鏡を掛けていた。其れは彼女の拘りで、彼女自身が作り上げたシャロンスタイルだった。周囲の男たちはそんな彼女を女っ気が無くてとか、洒落っ気が無くてとか言っていたけれど、本人はそれを気にすることもなく、彼女は自分の道をまっすぐ見つめながら一歩、また一歩と歩いていた。そんな彼女を私は美しいと思っていた。何かにまっすぐな人は、何かに一生懸命な人は、それだけで美しい。きっと中身が充実しているからだ。私もそんな風でありたいと思っていたから、彼女の存在を眩しく思い、そして嬉しく思っていた。何時だったか、彼女に言われたことがある。あなた、変わっているわねえ、と。え? 私が変わっている? と訊き返すと、そうよ、あなた、変わっているわ、それって素晴らしいことなのよ、と言って笑った。それでいいのよ、あなたはあなたのままでいるといい。
彼女はその後、写真で生活をたてるようになった。写真のクラスで教えたり、個展を開いたり、スタジオを持つようになったり。彼女がまっすぐ見つめて追いかけてきた彼女の世界が、花開こうとしているのを知ってとても眩しく思えた。

私は。私は途方に暮れている。テラスに置かれたジャスミンが蔓を延ばす方向を見失って宙ぶらりんでいるように。そんな私は美しさに欠けているに違いない。でも、幸せでないわけではない。むしろ今ある全てに感謝しているのくらいなのだから。でも、私の蔓はこれからどちらに延ばしたらよいだろう。答えは知っているのに、そうと認めるのが少し怖い。本当は簡単なことなのに。


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コメント

yspringmindさん、こんにちは

御自分で、御自分を暗示する様なエピソードですね

yspringmindさんの、文章は

いつも、心に布石をくれる気も致します^^


変わらない事の強さ、変わる事を恐れない強さ

はて、どちらが、本当は強いのでしょうね・・・・

2015/03/22 (Sun) 00:51 | 高兄 #eP1cGWnA | URL | 編集
Re: タイトルなし

高兄さん、こんにちは。
私は時々自分のことが自分でもわからなくなることがあるようです。其れとも分かっているのに分からない振りをしているのかもしれません。だから時々自問しなければならないのですよ。
変わらない強さ、変わる強さ。どちらも同じくらい強いと思います。どちらにも必ず理由があって、どちらが良いと決めることは出来ないでしょう。本人が納得しているのであれば。多分それが大切なのです。

2015/03/22 (Sun) 22:47 | yspringmind #- | URL | 編集

こんにちは、yspringmindさん。
春らしくなってきました。
シャロンさんの言葉、あなたはあなたでいいにふっと力が抜ける思いがします。
個性が出せる世界はいいですね。
つるは、延びる方にのびていきます。きっと。

2015/03/23 (Mon) 00:50 | つばめ #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。シャロンは大変個性的で魅力の詰まった人でした。そう言う人と知り合うことが出来たことを私は大変な幸運と思っています。私は自分の蔓を自由に伸ばそうと思っています。それが一般的でない方向に向かっても、それが自分なのだと受け入れるのがいいと思うのです。

2015/03/24 (Tue) 00:18 | yspringmind #- | URL | 編集
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2015/03/26 (Thu) 10:40 | # | | 編集
Re: タイトルなし

鍵コメさん、こんにちは。私には選択肢があまり無い…と思っていたのですが、言われて改めて考えてみたら、案外あることに気が付きました。ありがとう。でも、選択肢は誰にでもあるものなのだと思います。ただ、気が付かないか、選ぶのが怖いか・・・自分で選択の幅を狭めていることもありますね。選ぶのには勇気が要りますから。ほんの少しの勇気でいいのに。

2015/03/28 (Sat) 18:14 | yspringmind #- | URL | 編集

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