理屈では説明できないこと

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先日、久しぶりに昔通った道を歩いた。通ったといっても車で通っただけであるが、何度も往復したものだから私の視覚が覚えていた。旧市街を取り囲む環状道路の外にある界隈で、その道を行った先には林や藪などが存在して、ボローニャ市内とは思えぬような場所に辿り着く。その辺りに相棒の友人の家があった。友人は私より幾分若い女性で、相棒と友人はアメリカで知り合った。いや、正しくは旅行でアメリカへ行った彼女とその友達が困ったことに遭遇していたから、自分の故郷であるボローニャから来たということも大いに手伝って相棒が何か助けてあげたらしい。もう25年以上も前の話らしかった。其れを彼女たちは覚えていて、相棒がボローニャに遊びにきたり、それから私達がボローニャに引っ越してくると、彼女たちは自ら進んで手助けをしてくれた。彼女は私達のアメリカから届いたコンテナ一杯に詰まった引っ越し道具を一時的に預かってくれた。彼女はアパートメントの地下に驚くほど広い倉庫を所有していたのである。そしてもうひとりの友達は、私達がボローニャに引っ越してきてから2週間、旧市街のアパートメントの彼女の部屋を使わせてくれた。当の彼女は近くに暮らす両親の家に戻って、時々私達が元気にやっているかを確認しに来るといった具合だった。私達のボローニャ暮らしの始まりは、彼女たちの応援なしにはあり得なかったし、彼女たちの親切は、この先もずっと忘れることは無いだろう。

それで久しぶりにその道を歩いた。暫く行くと右手にジェラートの店。この店が今もまるで当り前のような顔をして存在していることを嬉しく思った。私達は、あの夏、この前を素通りするのが難しくて、毎回ジェラートを買い求めていたのだから。その先へ行くと道が二股に分かれていて、左手の道は下り坂で、右手の道をは友人の家へと続いていた。その辺りには大きな古い建物があって、イタリア文化の全てが目新しくて恋に落ちた私だったから、敷地を取り囲む美しい柄の壁の虜になってしまった。此処にはどんな人が暮らしているのだろうとある日誰かに訊いた時、それが病院と知って大変驚いたものである。病院と言ってもプライベートの、普通の人たちが気軽に入ることが出来ないような病院だった。私の記憶は断続的で、この通りの全てを覚えている訳ではなかった。やはり車窓から見たものと言うのは、その程度の記憶にしか残らないのかもしれないと思うと、少々残念だった。
私達と彼女たちが離れてしまったのは、彼女たちが多忙になったことが理由かもしれない。ひとりは弁護士に、ひとりは絵画の競売などの目利きとして活躍し始めたからだ。それに反して私と相棒ときたら、なかなかボローニャの生活の軌道に乗れなくて随分長い間もがいていた。あれから20年も経って、それぞれがある程度の年齢になった。私はもう太陽の下をショートパンツに素足でスニーカーを履いているような若いお嬢さんではなくなったし、相棒にしても。彼女たちは素敵な女性になったに違いなく、結婚をして家庭をもっているのかもしれない。私達の間には長い年月が横たわっているけれど、一度連絡をとってみたいと思った。私達が今もボローニャに暮らしていること。物事がうまく運ばず、アメリカに帰りたい、と言って周囲を困らせていた私が、ボローニャを好きになって元気にしていること。私達が今でもあの時の感謝を忘れていないこと。それから。それから。

この通りを歩くことになったのは単なる偶然だっただろうか。それとも神様が仕組んだことなのだろうか。理屈では説明できないことが世の中には沢山ある。それでいい。そして私はそう言うことを心から愛しているのだ。


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コメント

こんにちは、yspringmindさん。
こった装飾の建物ですね。
このような建物があちらこちらにあったら、感心して見いってしまいますね。住まいでも、病院でもこのように美しくしようとする余裕があるってことかな。楽しもうとしている気がします。

yspringmindさんは、アメリカに帰りたいという気持ちをどこかで楽しみにかえられたのでしょうね。
いろんな偶然に気づくことが楽しいですね。

2015/03/12 (Thu) 08:04 | つばめ #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。ボローニャの町を歩いていると時々こんな美しいものに遭遇します。とりわけこの界隈は裕福な人々が暮らしていたこともあり、そして現在も豊かな部類の人たちが暮らしている訳なのですが、こういうものを目にしては立ち止まってしまうものだから、散歩に時間が掛かるのです。
偶然と運命は背中合わせなのかもしれません。そう言うことは私にとって大切なことなのですよ。

2015/03/14 (Sat) 19:24 | yspringmind #- | URL | 編集

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