姉妹

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姉からメッセージが届いた。夏の帰省の予定は決まっているのか、決まっているならば教えて欲しい、といった内容の。こんな風に連絡を取り合うようになったのは4年くらい前からだ。ネットで簡単に連絡を取り合える時代になったからと、それから多分私達が小さな気持の行き違いに気が付いたからだった。其れは傍から見れば本当に小さな小さなことだったけれど、私達にとってはとても大切で深い意味のあるものだったから、だから互いの理解間違いに気が付いたことで、いつも様々なことを分かち合ったあの頃の姉妹にもどったのだ。

そうだ、私達はいつも一緒だった。大概の場合は妹の私が姉の後を追うように、慕っていたという具合だったけれど、そして姉は時には泣き虫で弱虫で直ぐに熱を出す妹を面倒くさい存在と思っていたに違いないけれど、4歳半違いの私達が共に思春期を通過する頃になると小さな何かを共有するようになって、そして大人になると仕事帰りに待ち合わせをしたり、土曜日に一緒に出掛ける楽しみを持つようになった。姉はいつも私の憧れ的存在だった。何しろ新しいことを私に持ってきてくれる天才だったから。天才、というのはつまり、姉が大変賢いという事実だけではなく、どんなことを持ち込んだら私が喜ぶか、どんな風にして私の心を惹いてやる気や関心の芽を延ばすことが出来るかをちゃんと心得ていたからである。私は夢見る夢子だったが、弱虫で何かをする前に挫けてしまうか、ぐずぐずしている間にチャンスを逃してしまうような子供だった。たった4歳半しか違わない姉が何故もこう大人びて冴えているのだろうと、それは私のみに限らず、私の両親もまた思ったに違いないのだ。兎に角、私達は、まるで白い兎と黒い兎だったのだから。
私達が疎遠になったのは、私がアメリカに行ってからだっただろう。好き勝手なことばかりしている我儘な妹。姉は多分そう思っていた。大体、国際電話が高すぎる時代だったから、電話で話すことなどあまりなく、手紙を書いてもい姉はあまり筆まめではないほうだったから、返事を貰うことは稀だった。そうして私がボローニャへ行き、仕事を求めてローマへ行き、そして再びボローニャに戻り、などと姉からしてみたら、あなたいったい何を考えているの、もっと地に足をつけなくてはいけないわよ、と思うような時代を通過しているうちに、姉は私という妹を見放してしまったようだった。そして決定的だったのが小さな理解間違えだった。4年前、久しぶりに日本に帰って姉とふたりで亡くなった父のことを話しているうちに、姉が突然息を吸い込んで驚いているのを私は見た。姉が、私を誤解していたのが分かった瞬間だった。そして私が、姉が決して私を見放していた訳でないと知った瞬間でもあった。あれから私達は20年以上の歳月を取り戻すかのように、一生懸命だった。私達はやはり、到底心が離れ離れになれない仲の良い姉妹なのだ。それに気が付くことが出来て、私は嬉しかった。

姉は私が何時帰省するのか、日時を知りたいようだ。どうやらそれに合わせて仕事を休んで、何か一緒にしよう、ということらしかった。私は姉のそんな思いやりが好きだ。生まれ育った家は今はもうなく、長く遠くに暮らしすぎて本当の意味で戻るべく場所がない私に、少しでも寂しい思いをさせないようにと。そうして一日の終わりに、ああ、楽しかった、と言う私の言葉が一番の喜びかのように笑う姉。私はそんな姉を幾つになっても追い抜くことは出来ないだろう。やはり、こんな大人になってからも常に私の先を歩く、私の憧れ。姉はそんな存在だ。


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コメント

なるほど

そんな感覚よくわかります。私は姉のほうですが、いつも妹から連絡がきますよ。いつに帰ってくるのか、何をほしいのか、何を食べたいのか。
そんな風に連絡をとるようになったのも、つい最近になってからです。

2015/03/02 (Mon) 08:34 | inei-reisan #pNQOf01M | URL | 編集

すてきですね、お姉さまと又 仲良しに戻れたのは。私は妹のほうですが、うちはまだ なんだか遠い関係です。うちの姉もきっと、かってに奥へ行って好きなことをしている わがままな妹と思っているのだと思います。もう充分大人な年なのですけれど、家族というのは 時には簡単なものではありません。

2015/03/02 (Mon) 08:37 | kimilon #036/uE16 | URL | 編集

こんにちは、yspringmindさん。
今日は、とても寒いひな祭りになりました。
私は、姉妹の姉です。小さいときは、妹が私にぴったりくっついて来ていましたが、年子ということもあり、いつのまにかライバルのように。今は、すれ違いのときもありますが、きっと、年月とともにyspringmindさんのところのように、仲良しになれるのだろうと感じています。
夏にお会いできたらなとおもいますが、いかがでしょう。

2015/03/03 (Tue) 07:18 | つばめ #- | URL | 編集
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2015/03/03 (Tue) 17:27 | # | | 編集
Re: なるほど

inei-reisanさん、こんにちは。私は思うのですが、姉にしても妹にしても、遠く離れている糸の切れた凧のような家族に連絡をしてきてくれることは本当に有難いことですね。私はそんな家族がいる限り、遠くに居ながらも守られているような気がするんですよ。

2015/03/05 (Thu) 22:32 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

kimilonさん、こんにちは。本当に素敵なことです。姉と疎遠になってしまった長い年月は、私にとってとても寂しい時期でした。多分お互いに誤解して、お互い淋しいと思いながら意地を張っていたのかもしれないです。其の上自分勝手に飛び出してしまった妹でしょう? もう、お手上げでした。しかしそうしたことも、時期が来ると自然に修正されるものなのかもしれません。家族とは簡単でなく、しかしいつか必ず納まるようになっているのだと思います。多分それが家族なんです。

2015/03/05 (Thu) 22:37 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。成程、年子の姉妹ですか。其れは姉妹と言うよりも親友みたいな存在だったのではないでしょうか。年月と共に人間は柔らかくなっていくもので、分からなかったことが自然に分かるようになるようです。そしてやはり家族ですから、仲良しでいたいというのは誰の心の中にもある筈で。
夏、どうでしょう。お会い出来たら素敵だと思いますが、何しろせいぜい10日しか居ませんから、上手く時間が合うかどうか。もう少し具体的になったらお知らせしますね。

2015/03/05 (Thu) 22:42 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

鍵コメさん、こんにちは。たとえ家族でも、やはり分かり合うというのは大切なことで、家族であるからこそ、誤解があると拗れてしまう。私はそんな風に学びました。
8月の帰省と言っても僅か10日間ほどのことで、それはもう、あっという間に終わってしまうのですよ。私は日本の古い部分、昔ながらの日本らしい日本を探すのがすきです。だから麻布あたりとか、浅草とか、北鎌倉とか、六本木と言っても古い路地とか。そんな私に姉は目を丸くするのですが、其れは多分日本を離れているからなのかもしれませんね。私にはそんな日本を美しいと思うのですよ。
ミシュラン・グリーン・ガイド・ジャポンは聞いたことすらありませんでした。面白そうですね。早速見てみます。
ところで私も地元の菓子店が好きです。大きなデパートの中には有名店が目白押しですが、小さな店の美味しさも忘れてはいけませんね。

2015/03/05 (Thu) 22:52 | yspringmind #- | URL | 編集

yspringmindさん、こんにちは

何か、心が満たされていくエピソードですね

いつもながら

ひとつの物語を、頂いたような気分です^^

2015/03/06 (Fri) 09:05 | 高兄 #eP1cGWnA | URL | 編集
Re: タイトルなし

高兄さん、こんにちは。私は昔から姉が大好きだったのですが、これからもずっと同じように大好きでいるに違いないのです。そんな姉を誘って、京都へ足を延ばしたいといつも思うのですが、8月の京都は散策するには暑すぎるでしょうねえ。

2015/03/06 (Fri) 20:38 | yspringmind #- | URL | 編集
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2015/03/07 (Sat) 08:36 | # | | 編集
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2015/03/07 (Sat) 11:53 | # | | 編集
Re: タイトルなし

鍵コメさん、そう、プラン、まだプランなので分かりませんがいけたらいいなと思っています。京都に最後に行ったのは、もう30年ほど前です。確か母を伴っての旅でした。10月頃の、気候の良い時期だったと覚えています。
何しろ私の帰省はいつも10日くらいですから、忙しいのです。でも長すぎると迎える側が大変なので、そのくらいがちょうどよいのかもしれません。したいことや欲しいもののリストを作ることは無く、その時の気分で決めるので、ボローニャに帰って来てから様々なやり残しなどを思い出すのですが、それが丁度自分らしいのかもしれません。今年もそんな夏になります。

2015/03/08 (Sun) 22:34 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

鍵コメさん、こんにちは。ええ、まだ予定なんですけれどね。実現するかどうかは誰にもわかりません。京都の夏は暑いですが、でも秋や春と言った良い季節に休みをとれるとは思えないので、やはり夏しかないかなと思うのです。もし決まりましたら連絡しますね。

2015/03/08 (Sun) 22:38 | yspringmind #- | URL | 編集

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