美しい赤毛

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相棒がシチリア産のオレンジを箱買いした。橙色の大振りのオレンジ。絞って頂くだけでなく、日本の伊予柑のように皮をむいて頂くのも良いだろう。それにしたって今はオレンジが一番手ごろな価格で手に入る時期で、だから2,6KGSでたったの3ユーロだ。こんなに安価で手に入るなんて。消費者の私達には嬉しいことに違いないけれど、オレンジ農家の人達は一体どんな風にして生計をたてているのだろうと心配になる。一生懸命育てたオレンジ。私達消費者に出来ることと言ったらば感謝していただくこと以外にないだろう。

窓の外を眺めてみたら天気雨が降っていた。と言っても目を凝らさねば見えない程の霧雨で、太陽の光に照らされたそれは、きらきらと光る金の粉のようにすら見えた。不思議なくらい寒さを感じさせない、2月の雨だった。昔のことを思い出していた。私が高校生だった頃のこと。いくら考えても名前を思い出せないが、女性の英語の教師が居た。すらりとした姿の、髪の短い若い教師で高校生だった私達と10歳も違わなかっただろう。当時私は英語が苦手だったくせに、英語が大好きだった。つまり英語の音が好きだったのだ。そしてその音が放つ異国の匂いが好きだった。苦手だったのは文法。文法がよく分からないくせに英語で手紙など書いてアメリカの女の子たちと文通などしていた私は、言葉とは心で通じるものなのだと、そしてコミュニケーションを交わそうと思う気持ちが大切なのだと信じていた。それでその若い英語教師だけれど、ある日こんな話をしてくれた。彼女は赤毛のアンの本を読んだのだそうだ。日本語に訳されたものを。するとたちまち夢中になったそうだ。私も読んだことがあったから彼女が夢中になった気持がよく分かった。想像力が豊かで美しいものが大好きなアン。彼女の気に入りの場所や物に次々と名前を付けていくアン。お喋りをしだすと止まらなくなるアン。私も繰り返し繰り返し読んだから。それで彼女だけれど、そのうち英語の、オリジナルの赤毛のアンを読みたいと願うようになったそうだ。それを読みたい一心で夢中で勉強をしたそうだ。彼女はそんな風にして英語の世界に引きずり込まれていったのだといった。それを聞いて私は何か感じるものがあったのだ。何だっただろうか。その話を彼女が授業中に話してくれたのか、それとも放課後に何かの拍子に話してくれたのか思い出すことが出来ないくらい遠い昔の話。そんな話を思い出したのは、恐らく赤毛のせいだ。街ですれちがっちた赤毛の女性。こんな赤い髪、見たことが無いと大人たちがアンの髪を指さして、アンも自分の赤い髪を好まなかったけれども、大人になると豊かな赤い髪は周りの人達を魅了したものだ。私が街ですれちがった女性は、赤い髪の美しさを十分承知していると見えて、小さく纏めるなどと言うことはせずに、豊かさを誇張するように長く垂らしていた。赤毛が更に美しく見えるように、計算されたかのように美しい緑色のスカーフを首に巻いていた。アンはこんなだったのかしら。私は彼女をこっそり眺めながら、それでいて何時までも目を話すことが出来なかった。そうしているうちにあの英語教師のことを思い出して、そうしているうちに私は昔、同じ年齢のペンシルヴァニアの女の子とその友達数人と文通をしていたことを思い出したのだ。彼女たちの字体はとても読みにくくて、そうしてはあの英語教師に見せて読んで貰ったから。あなた、テストの点数は良くないのに、へえ、英語の手紙を書いているの? 初めて解読してほしいと頼んだ時にそんなことを言われた覚えがある。恥ずかしかったけれど、英語教師は喜んで解読をしてくれたし、そうして私は彼女たちに返事を書くことが出来たのだ。そのうち互いが忙しくなってどちらからともなく手紙を書くのを辞めてしまったけれど、ペンシルヴァニアと聞くたびに、あの頃のことを思い出す。

赤毛のアン。私は英語のオリジナルを読んだことがない。いつか読んでみたい。そんなことを思いながらきらきら光る雨を眺めていた。


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コメント

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2015/02/16 (Mon) 13:43 | # | | 編集

こんにちは、yspringmindさん。
赤毛のアンの思い出、楽しく幸せな気分で読ませてもらいました。
ペンシルヴァニアの女の子と文通されてたんですね。やはり、なにかご縁がアメリカにあるのかもしれませんね。
赤毛のアンは、はちゃめちゃなところもあるけれど一生懸命でかわいいですね。
私も英語好きでした。学校の先生の英語はあまり面白くなかったのですが、英語の塾の女の先生がおもいっきりよく楽しそうに話すリズム感のある英語が大好きでした。少し変わっていて、お化粧は濃いし、フリル、花柄のロングスカート、でもかわいい感じではなく声はがらがら。とにかくその先生自体が英語が好きという熱意が伝わってきました。
yspringmindさんが、文通されていたということで、すっかり忘れていた、そうだった私もイタリアのトリノだったかなあ、パン屋の娘さんと文通していたなと思い出しました。そういえば。いっぱい思い出させてもらって、ありがとう。
霧雨の降るのを見て、お話いただいたことを思い出されたyspringmindさんはすてきだなと思いますよ。
あの、写真のおじさんは掃除中ですかね。

2015/02/18 (Wed) 14:06 | つばめ #- | URL | 編集

この写真の壁の色も素敵ですねえ。イタリアの色なのでしょうか。赤毛のアンの赤毛もこんな風に少しオレンジがかった赤だったのかしら。
この季節 驚くほど大きなかんきつ類がマルシェに出ていたりしますね。
うちでは毎朝 人参とりんごとオレンジのジュースを飲むので、かごの中を見ては少なくなってくると大急ぎで貝に走ります。 何時だったか 地中海の小さな町にヴァカンスで行ったとき シチリア産のオレンジがマルシェで売っていて その香りの良いことといったら。道行く人がみんな買っていくものだから すぐに店じまいになっていました。私たちも少しだけ 求めたのですが、あまりに美味しくて すぐになくなったのを思い出しました。それからも あの町のマルシェに行くたびに探してみるのですけれど、時期が合わないのか再会することはできていません。

2015/02/18 (Wed) 14:56 | kimilon #036/uE16 | URL | 編集

yspringmindさん、こんにちは

御写真の壁の色

イタリアーと感じます

日本では、こんな色、みられませんもん^^;


厳しい冬が去りつつ、春が顔を、見せ始めましたね^^

2015/02/19 (Thu) 11:32 | 高兄 #eP1cGWnA | URL | 編集
Re: 赤毛のアン

鍵コメさん、こんにちは。私の世代の人の多くが赤毛のアンの世界に大いに魅了されたようです。想像力豊かで、森や湖に恋してしまうアン。私はそんなアンが大好きでした。けれども黒髪に憧れる彼女が不思議でならなかったのは、私が赤毛を美しいとその頃から思っていたからでしょう。英語の本を探してみたいと思います。それを読んでどんな風に感じるのか、想像すると今からワクワクする思いです。
えっ。そんな方の家が近くに存在するのですか。何かの縁を感じますね。

2015/02/20 (Fri) 23:18 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。私はあの頃、外国の同世代の女の子たちにちょっとした関心を持っていたのだと思います。日本の外に暮らす人たちが、しかも私と同じ年齢の人たちが、どんな生活をして、どんなことを考えているのだろう、と。英語の手紙を読むのも書くのも難しかったけれど、あれは本当に良い経験でした。多分そんなことも、私をアメリカへと導いた理由のひとつなのかもしれませんね。案外いつかどこかでばったり出会うかもしれませんよ。何しろ地球は広いようで狭いのですから。
写真のおじさんは、古いお屋敷の管理人さんと思われます。真鍮の呼び鈴プレートを乾いた布で磨きこんでいる姿を、私は美しいと思いました。

2015/02/20 (Fri) 23:24 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

kimilonさん、こんにちは。この壁の色は、ボローニャの赤です。ボローニャには至る所にこんな赤が存在します。しかし赤と言っても橙色に限りなく近く、ところがボローニャの人々はこれを赤と表現するのですよ。
kimilonさんは毎朝、人参、林檎、オレンジのジュースを飲むのですか。それでは風邪知らずでしょう。うちには其処まで手を掛ける人が居ないので、シンプルにオレンジを絞るだけ。此れだって大した風邪予防です。シチリアのオレンジは本当に美味しいです。甘みも酸味も凝縮していて。私の冬の大好物なのです。ところがイタリアに暮らすまで私はちっとも知らなかったのです。オレンジと言えばカリフォルニアと思い込んでいましたから。
美味しいシチリアのオレンジを求めて、冬のシチリア旅行など如何でしょうか。素晴らしいところですよ。

2015/02/20 (Fri) 23:33 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

高兄さん、こんにちは。この壁の色、良いでしょう? ボローニャの赤です。イタリアの他の町に暮らす人達にも、ボローニャに暮らす人も、この赤に惹かれます。私もまた、そんな人のひとりなのですよ。
寒いと言いながらも確実に冬は終わりに近づいています。朝方の鳥のさえずりや、夕方の明るい空。京都もきっと同じでしょう。

2015/02/20 (Fri) 23:36 | yspringmind #- | URL | 編集

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