安堵の溜息

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寒さは何だ。外は冷蔵庫のような冷たさ。唯一の救いは晴れ渡った空。朝は光が眩くてサングラスが欲しいくらいである。こんな日が続けばよいけれど。あと数日だけでも良いから。

今日は仕事を少し早く切り上げてボローニャ郊外にある公証人のところに出頭した。などと書くと呼びつけられたみたいに聞こえるけれど、そして実際そうなのだけど、決して悪い理由からではない。昨年4月に今住んでいる家を購入する手続きをこの公証人の元で済ませたのだが、実はひとつだけ完了していないことがあったのだ。実際の家の状況と書類に記されている状況が一致しなかったのである。不一致の点は窓。存在すべき窓が無く、存在すべきではない窓が存在していた。どうやら家の持ち主が、市に届けることなく勝手に工事をしたらしい。イタリアはこの手の事に厳しく、許可なく工事して見つかるとと罰金が科せられるのである。そして許可を得て工事した場合は、図面を訂正せねばならない。そのどの手続きにもそれなりの費用が掛かるため、内々に工事をしてそのままと言う人が案外いるようだ。この家の前の持ち主もそのタイプの人間で、約束だったにも拘らず何の手続きもせずに売買契約に臨んだのだった。私の失望よりも公証人の怒りの方がはるかに大きくて、おかげで私は一言も発することなく公証人が売主にこまごまとした注文を付けて再出頭を命じたのである。ひとつは6か月以内にすべての手続きを完了させて提出すること、ひとつは保証金としてそれなりの額の小切手を公証人に預けること。万が一6か月以内に完了しなかった場合は、法律に基づいて家の買主に小切手が手渡ること。私は手続きが完了しなかったことに失望したものの、この公証人が居る限りは大丈夫と自分に言い聞かせて我慢したのだ。いやなに、数か月すればすっかり完了するのだから、と。ところが6か月経っても完了しなかった。公証人は小切手を貰う権利があると私に促したが断った。私にとっては小切手よりも書類が完了することが大切だったのだ。10か月経つころになってようやく書類完成の連絡を貰った。この辺りは環境保護地区なので、例えば庭の木を引っこ抜くだけでも市に届けて許可を得なければならないそうだ。それが建物の外観ともなると益々面倒くさい。おかげで10か月もかかってしまったと、相手側の建築士が遅延を詫びた。イタリアにはよくあることだ。何をするにも時間が掛かる。それでも忍耐強く待った自分を褒めるというよりは、それでも忍耐強く手続きをしてくれたことが嬉しかった。公証人が保管していた小切手は持ち主の手元に戻り、私の手元には正しい図面と証明書が届いた。すべてがあるべきところに納まったというのだろうか。互いに相手に見られないようにこっそりと安堵の溜息をついた。それにしたって公証人のところへ行くのは好きではない。何か堅苦しくて疲れる。もう暫くの間、公証人から離れた場所に居たいと思う。

満月を過ぎてしまった月。冷たい空気に包まれて美しく光っている。春になったらお月見をしよう。テラスの小さなテーブル席で。今からとても楽しみだ。


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コメント

バルコンでお茶

写真に写っているのは建物の装飾の一部ですね。なんという華麗な細部でしょうか。イタリアの壮麗な歴史を感じさせてくれますね。
公証人というのはフランスでも 不動産の売買や公証証書の手続きで欠かせないものですが 署名する前に二度も三度も内容を確認しないとうっかりミスが結構あるので大変です。私も今週の金曜日 公証人のところに行く用があるのです。面倒だけれども、飛ばすわけにも行きません。
住んでいらっしゃるおうちにはバルコンがあるのですね。いいなあ。私は 一度もバルコン付きのところに住んだことがありません。ひそかにあこがれているのです。春先に 美味しいお茶 飲めるの 楽しみですね。

2015/02/11 (Wed) 09:27 | kimilon #036/uE16 | URL | 編集
Re: バルコンでお茶

kimilonさん、こんにちは。写真は旧ボローニャ大学の壁に飾られている家紋の数々です。何世紀も前にこの大学に籍を置いた学生たちの出身家の門なのです。所々がラテン語で書かれているので読めませんが、素晴らしい名家の子息たちが此処に籍を置いていたようです。
公証人のところに行くのは実に神経が疲れます。まあ、今回の件は私にとっては良いことだったので、疲れこそしましたがやっと完了したことで肩の荷が下りた感じです。kimilonさんは今週の金曜日? 速やかに事が運びますように。
ところで私のアパートメントは小さい癖にテラスは3つもあるのです。でも一番の気に入りは長細い、遠くに丘が見えるテラスで、其処に小さなテーブル席を設けてあるのです。月が美しい晩に此処でワインを頂けるように。贅沢な楽しみや洒落たことは何もない私の生活ですが、こんな小さな楽しみがあればご機嫌に生活できるというものです。

2015/02/11 (Wed) 22:54 | yspringmind #- | URL | 編集

まあ 学生たちの出身家の家紋ですか。きらめく星のようですね。
yspringmindさんのアパートにはテラスが3つもあるのですか。もう少し暖かくなったらお月見ですね。それは小さな そして とても贅沢な楽しみではありませんか。

2015/02/12 (Thu) 16:08 | kimilon #036/uE16 | URL | 編集

こんにちは、yspringmindさん。
こうしょうにん。そんな仕事があるのですね。
そうか、聞くにはおもしろい仕組みですが、できれば会わずにですね。

2015/02/12 (Thu) 16:59 | つばめ #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

kimilonさん、イタリアの家紋、色々あって溜息が出ます。見ていると面白いのですよ。家紋のデザインに興味を持つ人、案外沢山いるようです。フランスにも様々な家紋があるのでしょう。今度ネットで調べてみます。
うちにはテラスが3つ在るけれど、どれもとても小さいのです。ま、贅沢は言い出したらきりがないのでこれで満足としましょう。

2015/02/14 (Sat) 20:04 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。イタリアに限らずヨーロッパでは、何かある度に公証人の世話になります。公の証人によって作成された書類でないといけない仕組みなのですね。これがまた世話になると大そうお金がかかるのです。ちなみに公証人になるのは狭き門で、公証人の父親を持つ息子…とかいった具合なのですよ。公証人イコール裕福と思うと正解です。

2015/02/14 (Sat) 20:08 | yspringmind #- | URL | 編集

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