言葉

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冬の快晴とは、何と気持ちの良いものか。勿論、どの季節だって快晴は気持ちの良いものだけれども。空がすっきり晴れ渡ること、空がとてつもなく高いこと。其れだけで一日気持ちよく過ごせるのだから、気候が与える人間への影響力は何て大きいのだろう。いや、人間に限らず、動物や植物にしたって同じことなのかもしれない。例えば猫が窓ガラス越しに空を眺めているのも、そんな理由なのかもしれない。そう言えば、テラスに置かれた植物だって、何時もより輝いて見えるではないか。明日も天気になればいい。そして明後日も、その次の日も。

昨日の午後、いつものバールへ行ったのは、近所に暮らすイタリア人の女の子と日本語を話すためだった。先週は酷い頭痛で会えなかったから、会うのは2週間ぶりと言う訳だ。近所に住んでいるのでいつも小銭をポケットに入れて手ぶらで来るというのに、彼女は珍しく大きな鞄を持ってやって来た。どうしたのかと思えば、鞄の中には何冊もの本が入っていた。まずは、と彼女は3冊の本を取り出した。私が頼んでいたフランス語の勉強のための本だった。1月のうちにフィレンツェへ行くから、フィレンツェ旧市街にある小さなフランス語の本屋で何かいいのがあったら入手してこようかと彼女が言うので、それではお願い、と頼んでおいたものだった。私のリクエスト通り簡単なものばかり。子供が読む本もあれば初心者が分かるように説明してあるものもあった。有難う!とその代金を払い終えると、別の3冊の本を取り出した。今度のは、彼女が家で日本語を勉強するための本だった。一冊目は日本の漫画。輸入品なのでとても高くて驚いた。夏に日本へ帰ったらば、何冊か彼女にお土産を持ってくることにしよう。二冊目は吉本ばなななど外国でも名が知られている若い作家の短編をまとめたものだった。英語の説明がついていて、勉強を愉しくするにはもってこいの本だった。最後の一冊は、元々は国内で日本語を学ぶ外国人向けに発行された本だったが、それを中国向けに出版した本だった。始めの一ページだけ中国語で書かれていたが、後はすべて日本語だった。彼女はこれをインターネットで見つけて手に入れたらしい。これが実に面白くて、彼女ばかりでなく私まで夢中になった。20もの文章が書かれていて、各文章の後に様々な設問があった。其の中に、こんな話があった。屋台の話だ。日本には屋台があって、少ない座席しかなくて7人も座ると一杯になる。しかも肩と肩が触れ合うほどの狭さで・・・と書かれているのだが、先を読んでいくと文章を綴った人の観察力とか表現力に驚いたり、くすりと笑わされたりするのである。仕事に疲れたサラリーマンが屋台に吸い込まれていくとか、偶然隣に座った人や店の人と話しているうちに疲れが癒されていくとか、そんなことが書かれていて私は笑いが止まらなかった。そして設問には、屋台で食事をするとどうして体ばかりでなく心まで温まるのでしょう、などとあって、このニュアンスを外国人がどこまで理解できるのだろうと思うと同時に、この文章や設問を書いた人の人間味たっぷりなところに私は酷く惹かれた。ねえ、この感じ、理解できる? と訊ねる私に、彼女は何となく分かると言った。例えばバールの立ち飲みワインみたいなもの、例えば夏に出るスイカ屋さんみたいなもの。彼女はそう言った。うーん、少し違うけれど、確かにバールでワインなどを頂いていると、知らない人とも話が弾む。夏のスイカ屋さんだってそうだ。黙々と黙ってスイカを食べる人なんていやしない。何となく楽しい気分になってくるものなのだ。それにしたって外国人が、こんな風にして日本語を学んでいるのだと知って、とても新鮮だった。私もフランス語を地道に勉強することにしよう。私は彼女と日本語を話して彼女の日本語の勉強の手伝いをしているのだけれど、私はそんな彼女から、知らない言葉を学ぶ、低姿勢で地道で辛抱強い心を教えて貰っているのだ。彼女はそんなつもりはないだろうけれど、確実に、確実に、私はそれを彼女から学んでいる。

ところで若い人は言葉を習得するのが早いと言うけれど、猫もまた、子猫の脳は吸収が早いらしい。猫が家に来てから、まだふた月も経たないけれど、思うに、私の日本語を理解している。長年一緒にいる相棒よりも、猫の方が日本語理解力のレベルはずっと上なようだ、と言ったらば、相棒は怒るだろうなあ。


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コメント

こんにちは、yspringmindさん。
屋台の設問は絶妙ですね。
なんだこれと笑えますね。

2015/01/19 (Mon) 12:33 | つばめ #- | URL | 編集

yspringmindさんのために、フィレンツェで本を買ってきてくれる友人がいらして、yspringmindさんは幸せな方だなと思います。その方との素敵な関係をこれからも益々発展させて下さいね。
私も昔イタリア人の友人から子供向けの本を頂いた事があります。簡単だからこれで勉強してねと渡された本は、子供向けにしてはヘビーな内容の本だったのですが、とてもとても有難く嬉しかった事を思い出しました。

2015/01/19 (Mon) 17:18 | アルプス #- | URL | 編集

むかし白犬を飼っていたのですが、汚いとか臭いと言うと、うなだれてトボトボと自分からお風呂に入っていくのです。
人の気持ちも察するし、一緒に暮らしていると動物って凄いですよね。
もし彼らに話す能力があったら、語学習得は人間より早いのではなかろうかと思うことがあります。

2015/01/20 (Tue) 13:54 | micio #O/XG6wUc | URL | 編集

お互いにいい刺激を自然に与え合えるお友達がいるって素敵ですね。

私は今スペイン語を学び中ですが、語学はそこの文化や生活なども含めて学べると、
楽しみが何倍もに増すように思えます。

ペットたちは発されている言葉よりも 人の感情やイメージを読みとっているらしく、
飼い主さんが犬を散歩に連れて行こうかなと思った瞬間に
犬にはそれが伝わったりするらしいです ^・^

猫ちゃんとの生活いいですね~~♪

>micioさまのワンちゃんのお話、可愛くて心がほっこり和みました ^・^

2015/01/20 (Tue) 18:01 | るみこ #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。まさか此処で屋台の話を読むとは思ってもいませんでした。それにしてもこの設問は、なかなか味があって、今も思い出しては、ふふふ、と笑ってしまうのです。なかなか良く説明していますよね。

2015/01/21 (Wed) 21:09 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

アルプスさん、こんにちは。全く親切な女の子です。わざわざ方向違いの場所にある店まで足を運んでくれるなんてねえ。此れを幸せと言わずに、何と言いましょうか。
ところで子供向けの本と言えど、私にとってはフランス語の本はやはり難しいのです。アルプスさんも昔に子供向けのイタリア語の本を貰って勉強したことがあるそうですが、どうですか、難しかったですか。でも、有難い話ですようね。そんな風に心遣いしてくれる友人がいるってことは。アルプスさんの嬉しかった気持、十分想像できます。

2015/01/21 (Wed) 21:15 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

micioさん、こんにちは。きゃっ。可愛いですね、その白犬。うなだれてトボトボと自分からお風呂に入っていくなんて。
動物と言うのは本当に愛しいですね。私も思うのです、動物がもし話をすることが出来たら、と。例えばうちの猫ちゃんが話をすることが出来るなら、毎日大騒ぎになるでしょう。何しろうちは、私も相棒も大変なおしゃべり好きですからね。

2015/01/21 (Wed) 21:20 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

るみこさん、こんにちは。お互いに刺激を与えるというか、多分私と彼女の間では彼女が私に刺激を与えてくれているのではないかと思うのです。私が刺激を与えているかどうかは・・・疑問ですねえ。でも、少しは役に立てているようですよ。
るみこさんのスペイン語。其の中で生活するのですから、ぐんぐん伸びること間違えなしです。生活や文化、周囲の人達から楽しみながら学べますように。
動物たちは人の感情やイメージを読みとっているのですか。成程、それではmicioさんの話も納得ですね。私もこの話には思わずにこにこしてしまいましたよ。

2015/01/21 (Wed) 21:29 | yspringmind #- | URL | 編集

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