今日で冬の休暇が終わってしまう。

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冬の休暇の最終日は祝日。祝日なのに店の多くが開いているのはサルディが既に始まっているからだ。夏にしろ冬にしろ、サルディが始まって一番初めの日曜日や祝日は普通に開ける店が多いのだ。このサルディで今シーズンのものを売り払ってしまおうと思う店側の意気込みも大きいけれど、私たち市民のサルディに向ける思いはそれ以上に大きいに違いない。それは豊かな人にしても、そうでない人にしても同じなのだ。豊かな人は日頃からぽいぽいと高価なものを購入している訳だけど、でも、その高価な店の気に入りの品が大きな割引で手に入るとなれば、嬉しくない筈はない。そして私達普通の人達にしてみれば、こんなチャンスを逃す手は絶対ないのである。例えばリネン類。バスルームで使う大小のタオルや、シーツ類。イタリアではこれらの割引を俗にFiera del bianco などと呼んでいて、新しい年なのだからタオルやシーツと言ったリネン類をこの割引を利用して新調しましょうよ、みたいなものである。これは案外ようアイデアで、新しい年に新しいシーツやタオルを下ろすと確かに気分爽快だ。私はシーツこそ新調しないけれど、大小のタオルを毎年この時期に買い足すのだ。日用必需品のタオルを半額近くで手に入れて、普通の生活の中に新しいタオルが新年早々登場するのがうちの習慣となっている。相棒はそんな私に目をぱちくりさせているけれど、しかし彼もまたこの習慣を好ましく思っているのを私は知っている。イタリアで長く続いている習慣でもあるのだから。

うちの近所にシチリア人が経営する小さな店がある。大通りに面した、バスの停留所のすぐ近くのその店が主として売っているのは鳥の丸焼きだが、付け合わせのじゃが芋を揚げたもの、野菜をグリルしたもの、茄子を煮たもの、それからシチリアならばどこの惣菜屋にもあるようなものも売っている。総菜屋、と呼べばいいのか、鳥の丸焼き屋と呼べばいいのか、これは誰にもわからないところであるが、兎に角大変な繁盛ぶりである。何がよいかと言えば安い。美味い。其の上、看板娘的存在の女の子が陽気で良い。シラクーサ出身の恐らく20代、の女の子。背が高くて豊かな体つきで目が大きくて、踊るような軽やかな足取りで狭い店の中を動き回る。少なくとも私は、シチリアの太陽のような印象を持つ、彼女の明るい接客が大好きだ。私はこの店の鳥の丸焼きを求めることはあまりない。では、何を求めるのかと言ったらば、様々な野菜をグリルしたもの、それから茄子を煮たもの、ときどき見かける、中に野菜や肉やチーズがたっぷり入った調理パンのようなもの、そして焼きたてのパンだ。一般的にシチリアーノと呼ばれる、白ごまがたっぷりついた縦長のパン。鳥の丸焼きを求める客がパンを一緒に購入できるようにと始めたらしいが、何しろとても美味しいので、最近はこれだけを求めに来る人も多いようだ。夕食時には、手を抜いて、でも美味しいものを食べたい人達で狭い店が一杯になる。殆どが持ち帰りの客で、ほんの一握りが3つしかないテーブル席について食事をする客である。私がこの店に行くのは大抵土曜日の昼時。旧市街から帰えるバスの中で、そうねえ、何を食べようかしら、と考える。そうしてバスの停留所で降りた途端に、いい匂いがする。私はその匂いに誘われるまま、店の中に吸い込まれていくのだ。歩き疲れて帰って来て、手を掛けずに美味しいのを頂く。何処かの店に入って昼食をとるのも良いけれど、出来立てを持ち帰って、うちにあるワインと共に家でのんびり昼食を楽しめるのも贅沢な話なのだ。今日は祝日。さて、開いているだろうか。そう思ったのは、勿論手を抜きたかったからだ。行ってみたら開いていた。しかも随分な混みようで。焼きたてのパンを一本、茄子を煮たものをふたり分、調理パンをひとつ、そしてシチリアの菓子をふたつ。10ユーロもしない。帰ってきて、昨晩栓を抜いた残りの赤ワインで食事をした。猫は興味津々だ。この茄子を煮たものは何なの。調理パンは何ていい匂いなの。焼き立てパンの中は何て白くてふわふわなの。リコッタチーズの菓子が美味しそう。今日のワインはとても赤いのね。猫は鼻をくんくん動かして、どれもが気になってしょうがない。でも、どれも猫が食べられないものばかり。猫は食餌療法中だからだ。私達は見て見ぬふりをするしかない。それにしたって美味しい。手を抜きながらもこんな美味しくて楽しい昼食を楽しめるなんて。だからあの店は繁盛しているのだろう。だから私は土曜日の昼についつい立ち寄ってしまうのだ。

ところで今日、店のショーケースの中に刻んだ唐辛子が入ったペコリーノチーズを見つけた。美味しいの?と愚問をぶつける私に店の女の子がウィンクを投げる。私は大好きよ、と。次回、購入してみようか。やはり、暫く土曜日の昼食は、この店に頼ることになりそうだ。

枯れ木だとばかり思っていたが、窓辺から目を凝らしてみると小さな芽が。この冬の寒さの中に、木は、季節が確実に春に向かっていることを感じ取っているのだろうか。自然には驚きが一杯詰まっている。

今日で冬の休暇が終わってしまう。特別なことが何もないのに此れほど楽しかった休暇は、ひょっとしたら初めてのことだ。


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コメント

yspringmindさん、こんにちは

今日で休暇終わられますか

少し、憂鬱ですよね^^;


ちなみに、我が娘、今日から冬休みも明け

小学校に行きました


シチリア料理は、知っていましたが

シチリアーノと云われるパンの存在、初耳でした^^

2015/01/07 (Wed) 07:50 | 高兄 #eP1cGWnA | URL | 編集

こんにちは。
寒いです。昼間は晴れたのですが、夕ぐれはもう真冬の寒々しい空でした。

美味しそうな品ぞろえですね。
ふかふかのパン。リコッタチーズ。ナスはこの季節もあるのですね。ワイン。
出来立てのパンの香りがしてきそうです。
yspringmindさんはどんなワインが好みですか。濃いの、軽いのなど。

2015/01/07 (Wed) 10:48 | つばめ #- | URL | 編集

わあ、なんだかものすごく美味しそう・ 読んでいて どんどん おなかが空いてきてしまいました。
うちも週末はマルシェで匂いにつられて 鳥の丸焼きと美味しいパンとサラダ なんてことが良くあります。マルセイユに長らく住んでいた友人はそれに フーガスというおかずパンが 週末御飯だったって言ってましたっけ。ちなみに私はリヨンにすんで居ます。
猫はまだ食事療養中なのですね。もうすこしで終わるのかしら? きっと 美味しい匂いで拷問状態になっているのでしょう、、、
楽しい冬の休暇。でもそれはきっと あなたが上手に日常の中の楽しみを見つけられるからすごせたのだと思いますよ。
わたしも今日 久しぶりの車の運転をしました。マルシェにも行って オレンジをうんとこさ買い込みました。1月になると食べる がレット ド ロア も 美味しいパン屋さんのを買ってきました。荷物はまだ持てないので 家人と一緒の行動でしたが、だんだん 元のように自分でいろいろなことができるようになってきて、うれしくなりました。
日もすこしずつ 伸びてきて 確実に新しい季節に向かっているのですよね。

2015/01/07 (Wed) 11:56 | kimilon #036/uE16 | URL | 編集

どれもこれも美味しそう。私の好きな物ばかりです。惣菜屋は時々、デパ地下に入っているパリの惣菜屋を利用するくらいです。近所にそんな活気のある安くて美味しい惣菜屋があったら定期的に通ってしまいそうです。yspringmindさんのお話に影響されて、なすとトマトの重ね焼きを作ってしまいました。冷蔵庫にあったイタリアやデンマークのチーズもたっぷり入れて。

私の休みは6日まででした。私もとても楽しい休暇を過ごせました。6日はフレンチのお店に頼んでおいたガレット・デ・ロワを頂きました。我が家では毎年これを頂くのを楽しみにしています。

植物観察はどの季節も見どころがいっぱいです。植物生態学は奥が深いです。

2015/01/07 (Wed) 17:23 | アルプス #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

高兄さん、こんにちは。二週間の冬の休暇がついに終わってしまいましたよ。少し憂鬱…? いいえ、すっごく憂鬱でした。何がと言えば、仕事の渦に巻き込まれることや、それから2週間全く仕事のことを思い出さなかったので、さて、昨年の続きはどうしたらよいのだったかしら…とか。でもですね、二週間全く思い出すことが無かったなんて全くの幸せ者ですよ。こんなにすっかり休暇に没頭できるなんて。
お嬢さん、元気に学校行きましたか?

2015/01/07 (Wed) 22:26 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。そちらも寒そうですね。ボローニャも一頃の寒さに比べれば随分楽ですが、朝晩の冷え込みは身に沁みますね。なんたって真冬ですからね。
この店、外観は何ともさえないのです。内装も同じように冴えないのですが、食べ物はどれも美味しい。しかも手ごろな値段と言うのもポイントなのです。
私は赤ワイン派で、まろやかでコクのあるものが好きです。と言いながらもフルーティな爽やかな白ワインも好きなのですよ。

2015/01/07 (Wed) 22:30 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

kimilonさん、こんにちは。美味しいものを美味しく頂けるのは健康な証拠。幸せ以外の何でもありません。私は胃袋が意外に小さくて大量に食べることが出来ない。だから美味しいのを少しづつ、がモットーです。美味しいものには目が無いので、食いしん坊とのあだ名がついていますが、それでいて胃袋が小さい。可笑しな話です。
リヨンに住んでいるのですか。とても興味深い街ですね。マルシェ、響きが良いではないですか。此れがイタリア語だとメルカートと、あまり洒落た響きはありません。猫は未だに事療養中ですが、もう元気なので食べたくて食べたくて仕方がないみたいです。ごめんなさーい、と言いながら目の前で美味しい食事をとるのは心が痛みますよ。
そう言えばオレンジ。私もシチリアのオレンジを買いに行きましょう。オレンジがあれば冬の寒さも吹き飛びます。
kimilonさん、少しづついつもの生活に戻り始めているそうですね。安心しました。こういうことが嬉しいと思えるのだから、健康は誰にとっても一番大切ですね。暖かくなる頃には、すっかり元気で街の散策ですね。

2015/01/07 (Wed) 22:42 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

アルプスさん、こんにちは。ええ、どれもとても美味しいのですよ。こんな店が近所に在ること、本当に感謝なのです。ところで日本のデパートの地下の食料品売り場には無いものなんて無いのではないでしょうか。そんな店が近所にあったら…通いますよ。総菜屋の話からはそれますが、私は日本の薄い皮の餃子を食べたいんです!そんな店がボローニャの何処かにあればいいのに!
アルプスさんもガレット・デ・ロワなんですね。私はまだそれを頂いたことがありませんが、これはフランスではこの季節のお菓子なんでしょう?日本では本当に何でも手に入りますね。全く感心です。

2015/01/07 (Wed) 22:49 | yspringmind #- | URL | 編集

あけましておめでとうございます。

なんだか、図々しいかもしれませんが、
記事を読んでいて、私もその食卓にお邪魔しているような錯覚に陥りました。 笑
そしてその匂いに連れられて子猫ちゃんがじっとしていられない姿も目に浮かぶよう。
茄子を煮たものってどんなお惣菜なんだろう?
シチリアのお菓子って何?
焼きたてのパンの香り〜
yspringmindさんの食べ物の文章を読んでいると、
本当に美味しい気持ちが伝わって来て大好きです。


ところで、餃子のレシピなのですが、もう少し待ってください。ごめんなさい。
ボローニャでは、餃子の皮って手に入りますか?

2015/01/10 (Sat) 03:24 | Naomin #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

Naominさん、あけましておめでとうございます。
嬉しいですね、何時でもうちの食事にご参加ください。豪華な料理は並びませんが、美味しいものと楽しいお喋りだけは欠かしません。茄子を煮たものですが、シチリア風カポナータです。これは茄子をトをザクザク切ったものをオリーブオイルと玉葱を刻んだもので煮たという、実にシンプルなものなのですが、ほんのり甘くて懐かしい味なのです。とても柔らかくて口の中でとろけるよう。此れだけで食べるというよりは、焼きたてのパンを手でちぎって、其れですくって食べると言った感じが家庭風でよいです。そしてこういう料理を食べている時は、とても話が弾むというものです。
餃子のレシピ、楽しみにしています。皮はアジア食料品店で冷凍のものが手に入るそうなのですが、できれば自分で作りたいのです。何事も挑戦。此れが今年の目標のひとつなのです。

2015/01/10 (Sat) 23:53 | yspringmind #- | URL | 編集

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