急ぎ足

DSC_0023 small


夜中のうちにまた雨が降りだしたらしい。折角の日曜日と言うのに、路面が濡れて黒く光り、向こうの方に傘を差して歩く人の姿を眺めながら、ああ、また雨なのかと溜息をつく。
昨日は運が良かっただけらしい。そんな雨降りの合間を縫うようにして旧市街を歩くことが出来たのは、全くの幸運だった。ボローニャの中央郵便局の前の広場ではフランス市場が立っていた。これは一昨年辺りに始まった市場。でも昨年までは駅のすぐ近くで催されていた。日本では駅前が賑わう土地柄とされているけれど、此処ではそんな常識はない。市民の大半は駅に行かなくても十分生活が出来るから、賑わう場所は旧市街の中心の大きな広場と言う訳だ。フランス市場もまた、そう言うことを学んだと見えて、大きな広場とは言わずとも街の中心に在る広場に引っ越してきたようだ。私にとっては此処は大変都合の良い場所。何しろ、この小さな広場の前のバスの停留所を頻繁に利用のするから。果たしてフランス市場は大変な賑わいで、私は急いでいる足を一瞬止めて見て回った。一番の関心は食べ物屋さん。軽食を楽しめる店もあればワインの立ち飲みを楽しめる店もある。それからワインを売る店、チョコレートの店、パンの店、ビスケットの店。ワインの立ち飲みを楽しめる店では生ガキも食せるようになっていた。だからなのか、赤ワインは一種類しかなく、冬はやっぱり赤ワイン、の私は多少なりとも残念だった。

急ぎ足だったのは、髪を切りに行くためだった。暫く切らずにいたら収拾がつかなくなってしまった。と言ってもやっと肩に着く程度であるが、この長さが一番手に負えない。それに私はすっきりと短い髪が好きなのだ。子供の頃は、あなたには長い髪がよく似合うから、と母から髪を伸ばすようにと教え込まれていた。大人になってからはその反動なのか、短くてすっきりした髪型ばかりだ。短いと言ってもベリーショートではない。あの髪型は、美しい頭蓋骨と美しい顔立ちが必要なのだ。そのどちらも持たない私には、ベリーショートは憧れのまた憧れ。だから街でそんな髪型をしている女性を見かけると、その美しい頭蓋骨に、美しい顔立ちに、一瞬見惚れて歩くのを忘れてしまうのだ。3連休の週末だから、人々はどこかに足を延ばしているに違いないと睨んでのことだったが、店に行くと大変な混雑だった。でも収拾のつかぬこの髪を切りたい一心で、どっしりと椅子に腰を下ろした。店を出たのは3時間後だった。そもそも昼前に出てきた私だ。空腹と寒さで頭が痛くなっていた。何か温かいものをとサン・ペトロニオ教会の背後にあるカフェ・ザナリーニに飛び込んで、腹持ちのよさそうな重い菓子と温かいカップチーノを注文した。その先に行けばフランス市場があるけれど、私には暖かい場所が必要だったし、どうせ行っても長蛇の列で食べ物を手に入れるまでに時間が掛かるだろうと思われたからだ。この時期にこのカフェに入るのはとても興味深い。冬の、しかもクリスマス前のこの時期は、皆、大変お洒落であるのだ。私の横に立った女性は、大きな黒い鍔のフェルト帽子を被っていて、ふんわりと軽い、しかし暖かいに違いないコートを羽織っていた。シンプルだが、何か、映画の中から飛び出してきたような、例えば70年代のイタリア映画の女優のような。私はそんな人を見つけると失礼にならぬようにこっそり観察するのだけど、彼女は誰から見ても素敵らしい。誰もが一瞬振り向いた。すっかりお腹が一杯になり、体も暖まったので、気をよくして再びフランス市場に立ち寄ってみた。ワインを売る店には、どんなものがあるのかしら、と少々関心があったからだ。私のフランスワインは、街の中心に在る、私が勝手にフランス屋と呼んでいる店からの購入品だ。なかなか良い店で、好みに合いそうなものを一緒に選んでくれる店主やその妻が、私をその店に呼び寄せるからだ。市場に店をささっと見て回りバスに乗って家に帰って来た。やはり頭が痛かったからだ。この頭痛が尾を引かなければよいと思いながら、帰りもまた急ぎ足だった。

案の定今朝は頭痛だった。其の上、扁桃腺が腫れて熱まで出た。今日はゆっくりすることにしよう。山のようなアイロンがけがあるけれど、それも明日に延ばせばよい。何しろ明日は祝日で、ゆっくり過ごせるはずだから。それに、今日のうちに直しておかねばならぬ理由がある。だって、明日は12月8日。クリスマスツリーを飾る日なのだから。そうしてクリスマスツリーを飾ったら、子猫に教えなくてはいけない。この木はね、遠くから見てた楽しむもの。昇ってはいけないよ。・・・理解してもらえるかどうかは、明日のお楽しみ。


人気ブログランキングへ 

コメント

こんにちは。
一日一日がすぎますね。
髪を切られたyspringmindさんを想像しながら読んでいました。教会の前の語らう人たちもyspringmindさんが見せてくれるので、なんだか身近に感じますね。こういう語らいが余裕を保つ心になるのかなと見たりしながら。
あー、濃いワインを一口飲んでみたくなりました。ああのー、質問なんですが、イタリアの女性は徒党を組みますか。なんと言ったらいいのか、わかりませんが、同じ組織においての女性同士のつながりは、日本と大差ないのか、日本よりあっさりしているのかということなのですが。結局、動物なのでどこもあまり変わらないのかもしれませんが、今後の参考のために。ちょっと気になったので。
ねこの女の子、すこし慣れてきたのかな。

2014/12/08 (Mon) 15:42 | つばめ #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。教会の前の階段に座って語らうのは、見ている分にはとても素敵なんですけれど、冬場は腰が冷えるんですよ。ねえねえ、あなた達、気を付けたほうが良いわよ、なんて思ってしまう訳なのです。昔私も階段に座って焼き栗などを食べましたが、いやあ、寒かったこと。
イタリア人はみんなで何かをするのが好きです。逆にひとりが駄目みたい。だからすぐにグループになるし、ひとりで何かをする人を変人にすら思う節があります。それは女性だけに限らず男性も。私には少々重いです。
猫は少し慣れてきましたが毎日気が変わるので、私達はかなり振り回されています。

2014/12/09 (Tue) 00:26 | yspringmind #- | URL | 編集

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する