ボローニャの色

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今日は一日雨降りだった。酷い降りではなかったけれど、霧のように細かい雨が身に纏わりつくような感じだった。傘を差すほどではないが、差さねば頭のてっぺんから肩から何からじっとりと湿ってしまう。そんな雨。朝晩の低温はともかく、昼間は10度もあるのだから。なのにひどく寒く感じるのは湿度のせいだ。深々と体の芯まで届くような、ボローニャの湿気。この時期の風物などと言ったら聞こえが良いが、これを好む人はあまりいない。

先日、ボローニャ郊外のメディチーナという町に足を延ばした。この辺りは全くの平地だから、この季節は霧が濃い。車で走っていると時々Banco di nebbia (霧の壁) に遭遇する。壁と言っても幻想で、ただ壁に見えるだけだ。運転している本人はそれを重々承知なくせに、あっ!と急ブレーキを踏んでしまう。だから玉突き衝突が多く、それを防ぐためにもこの辺りはスピード制限が厳しくて、測定器も沢山ある。ゆっくり走りましょう。事故を少なくしましょう。と言うことらしい。事故も嫌なら罰金も嫌だから、相棒と私はのんびり運転を決め込んで、周囲の景色を楽しみながら車を走らせた。
メディチーナに行くのは数年振りだった。この町の旧市街に、亡くなった相棒の妹夫婦が住んでいたらしい。住んでいたらしいと言うのは、私は彼女に会ったことが無いからだ。彼女の夫、つまり私の義理の弟にあたる人には幾度も会ったことがあるけれど。メディチーナの旧市街の家は彼らが結婚した時に購入した家で、思い出深いこともあり、彼女の夫は妻に先立たれてからはそこには暮らしていないけれど、かといって妻との思い出が消えてしまいそうで残念だからと、あれから既に23,4年が経っているのに手放さずにいるのだ。時々疲れると、この家に立ち寄って数時間を過ごすらしい。立ち寄ってと言ったって、彼はラヴェンナ市に住んでいるのだから、この家にわざわざ出向いていると言ってもよかった。前回この町を訪れた時、相棒が教えてくれた。ほら、此処がその家だよ、と。旧市街の古い建物の二階だっただろうか。私は相棒の妹と彼女の夫がその家を選んだことも、残った夫が今も大切にしたいと思った気持ちも、よく分かるような気がした。しかし、先日この町を訪れたのは、別にそんなセンチメンタルな理由からではない。私達は猫に会いに行ったのだ。ボランティアが運営しているところらしく、大いに道に迷ってやっと到着したのはもう直ぐ日没と言う頃だった。捨て猫や、迷い猫、もう買うことが出来なくなった猫たちの世話をしているところだ。私と相棒は其処に子猫が居ると知らされて、会いに行くことにしたのだ。純粋にボランティアで世話をしている女性たちが3人。170匹も居るのよ、と笑っていたが、一体何処にそんなにたくさんの猫が居るのかと思う程、広い敷地だった。野原あり、樹木あり。猫のパラダイスみたいなところで、此処に居れば空腹を逃れ、雨風を逃れ、毎日厚意で見に来てくれる獣医さんに健康を守られるのだ。私達が事前に電話をした例の猫を欲しがっている夫婦であることを述べると、歓迎してくれた。歓迎してくれたのは何も彼女たちばかりでなく、猫たちも大そう嬉しそうだった。子猫は5匹いた。私は其の中の一番小さい、奥にへばりついて怖がっている子猫、なのに私達をじっと見つめて目を離さない子猫を選んだ。ただ、猫はまだ人間が怖いらしく、獣医がもう少し待ってほしいと言うので、連れて帰ることが出来なかった。それから沢山の質問を受けた。数日後、連絡をしてくれるらしい。そして譲ってもらえるかどうかが分かるのだそうだ。つまり、私達は今、試されているようなものなのだ。本当に猫を大切にできる人たちなのか、どうかを。さあ、どうだろう。合格できるだろうか。どうかなあ。もう子猫を家に連れて帰る、心の準備も、実質的な準備も万端というのに。

昨日ボローニャ旧市街を歩きながらふと気がついた。メディチーナの旧市街は、何とボローニャに似ていることか。勿論同じエミリア・ロマーニャ州で、ボローニャ県ではあるけれど。でも、あの壁の色、回廊の在り方、空気の流れるリズムなどが、ぴたりと重なる。ボローニャ生まれの相棒の妹と、ラヴェンナ生まれの彼女の夫がメディチーナに家を持ったのは、互いの家のちょうど真ん中あたりに存在するからと言うだけではなかったに違いない。多分、ボローニャの色があるこの町に、相棒の妹が拘ったに違いないのだ。実にボローニャ人らしい拘り。勿論、此れは私の単なる想像にすぎないけれど。


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コメント

こんにちは。
ねこちゃん来るといいですね。
義理の妹さんはたぶん幸せですね。そのような愛情があるんですね。なんだか生きてるうちにまわりの家族を大切にしたくなりました。ありきたりのし幸せがいいなとわかっていますが、忘れがちになります。ありきたりなんかないのだとも一方で分かっています。今日は、晴れでした。飛行機雲がたくさん見えました。明日は雨だそうです。

2014/11/27 (Thu) 16:04 | つばめ #- | URL | 編集
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2014/11/28 (Fri) 02:10 | # | | 編集

お洒落なお店の写真、とても素敵でした。こんなお店の前を通りかかったら思わずうわっと思わず声が出そうです。
ほんと、たまにドレスアップするのはいいですよね。わたしの職場はジーンズでも全然大丈夫というカジュアルな環境で、すっかりドレスダウンに慣れてしまいました。たまにはきちんとした格好をしないと、ジャケットが似合わなくなってしまいそうです。

足を踏まれたことよりもカメラの心配をするお嬢さん、かわいいな。

猫ちゃん、無事におうちに迎えられるといいですね。

2014/11/28 (Fri) 06:20 | mk #- | URL | 編集

yspringmindさん、こんにちは


季節は、冬に向かっているのでしょうか?

京都は、これから落葉の季節となります

紅い絨毯が、美しいですよ^^


御写真の自転車の籠

とっても可愛らしい♪

2014/11/28 (Fri) 07:22 | 高兄 #eP1cGWnA | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。義理の妹とは会ったことが無いので、あまり実感が無いのですが、あの家を見るたびに、確かに彼女が存在していたことを感じます。優しい夫を持った幸せな義理の妹。私もいつも思うのです。
相棒はもうひとり妹が居ましたが、その妹も病気で亡くなってしまいました。彼女とは一度だけ会ったことがあります。私と相棒が結婚前にボローニャに来た時に、一度だけ。生きていると言うことを彼女たちのことを思い出すたびに感じます。生きているうちに感謝して、生きているうちに満喫すること。私は彼女たちを思い出すたびに教えられたような気持になるのです。

2014/11/29 (Sat) 21:41 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

鍵コメさん、こんにちは。私も約20年猫のいない生活をしました。いつかまた、と思いながら20年経ちました。アメリカからボローニャに猫を連れてこれなかったことが、私に猫を飼ってはいけないような気持にしたのかもしれません。鍵コメさん、猫の額ほどの裏庭にノラ猫が来るんですか。面白い!可愛がってあげてください。

2014/11/29 (Sat) 21:52 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

mkさん、こんにちは。たまにドレスアップすると気持ちにメリハリがつく、と実感しました。私の職場も、ジーンズで大丈夫なんですよ。皆カジュアルなので、気が楽、有難い、と言うのが本心ですが、確かに、確かにね、そのうちジャケットが似合わなくなってしまいそう。mkさんのあまりに適切な表現に、笑ってしまいました。
・・・あのお嬢さんは絶対足が痛かったに違いないのですよ。

2014/11/30 (Sun) 00:00 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

高兄さん、こんにちは。こちら樹木の気の大半が落ちてしまい、低気温もあり冬の雰囲気満点です。オーバーコートを着て出掛けるようになりました。京都はこれからが落葉ですか。毎年11月になると、京都に行きたい!一度でいいからこの季節の京都を訪れたい!と思うのですよ。
ボローニャ辺りにはこんな籠をつけた自転車をよく見掛けます。

2014/11/30 (Sun) 00:03 | yspringmind #- | URL | 編集

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