お洒落

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ちょっとお洒落をして出掛けてみた。数日前の晩のことだ。それはいつもと違う、ちょっとシックなタイプのお洒落。ひらひらとしたシルクのブラウスに肩のかちりとしたジャケット、黒のベルベットの細身のパンツ。そして踵の高いエナメルシューズ。そんな装いで出掛けるのが好ましい集まりだったからだけれど、翌日になって、時にはそんな装いをするのも良いものだ、と思った。特別買い揃えたものはなく、いつも身に着けることのないものを、ああでもない、こうでもないと言いながら組み合わせただけ。いつもは気楽なスタイルなのだ。何しろ座り仕事なので、かちりとしたジャケットや細身のパンツでは肩がこる。それから街を散歩している時も気楽なスタイルが多い。カメラを鞄に忍ばせてふらふら歩くのに、踵の高いエナメルの靴やひらひらしたしシルクのブラウスもでは都合が悪い。友人たちと会う時だって、皆、気の知れ合った仲だから、例えばちょっと踵の高い靴を履くことはあったとしても、其処まで洒落こむこともない。ちょっとシックなお洒落。時には良いかもしれない。

旧市街を歩いていると、時々はっとすることがある。先日、そんな風にして足を止めたのは、店の内装が美しかったからだ。不思議な形のシェードが天井から吊るされていて、私の目を楽しませてくれた。店に置かれている服は、私には少々甘すぎて好みの対象外であるけれど、このお洒落な内装には強く惹かれて思わずカメラを向けた。そうしているうちに店内に美しい水色のセーターがあることに気がついた。水色のセーターには少しシルバーが混じっていて、ああ、こんなセーターはどんな女性が買い求めるのだろうなどと想像した。若いお嬢さんだろうか。それとももう少し年上の、大人の女性なのかもしれない。そんなことを考えながら、歩き出したところ髪の長い、ようやく20歳になったくらいのチャーミングな女の子、と言うのがぴったりくるような人と衝突した。衝突したばかりではない。私はショートブーツの堅い踵で彼女の足を踏んでしまった。あ、ごめんなさい。そう言ったのは彼女だった。彼女は私の手元のカメラにぶつかったのではないかと思ったらしく、大丈夫だったかしらと言いながら私の手元のカメラを指さした。私は思い切り彼女の足を踏んでしまったことに気が動転していて、ごめんなさいの声すら出なかったのだが、はっと気がついて言ったのだ。いいえ、私の方こそごめんなさい。足を踏んでしまって。そして気が付けば私はまだ彼女の足を踏んだままだったので、ああ、ごめんなさい、と再び彼女に詫びた。足などどうでもよいがあなたのカメラはどうなのよ、と彼女はとても心配そう。大丈夫、大丈夫と答えるとやっと安心したらしく、安堵の溜息をついて私に手を振った。チャオ! そうして彼女は私が眺めていたあの店に吸い込まれていった。ああ、この店には彼女のような人が良く似合う。可愛くて優しくてきちんとした。ごめんなさいを言える人だもの。ありがとうもごく自然に発することが出来る人に違いないのだ。きっと素敵な大人の女性に成長するだろう。

明日を境目に雨降りになるようだ。冬の雨降りは悲しい。それでなくとも雨の日は憂鬱でならないというのに。


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コメント

こんにちは。
あー、きれいなお店ですね。今日はきれいなものを発見できてよかったとうれしいですね。
自然の美も例えば、空の色とかはっとするときがありますよね。刻々と変わる夕焼け空。それに近いのかな。
ほー、yspringmindさんのおしゃれはかっこいいですね。そんな大人の女性の装いが似合う内面を持ちたいな。かわいいばかりではない。いざ、そのような場面に出掛けるとき、でーんと自分のために着れるよう。
yspringmindさんの手持ちの服選びがすごく楽しそうです。

2014/11/25 (Tue) 14:16 | つばめ #- | URL | 編集

べネツィアのリアルト橋の近くにあった(今あるかどうか)セーターだけ
販売している店でそのセーターを買ったことがあります。
これが欧州で初めて購入した衣類です。

で、最初50号サイズのものを試着させようとスタッフさんがしたのですが、「Grande Per Favore」と言うと52か54のものを
出してくれました。
でも、それでもきついので結局店にある在庫で一番大きい58サイズを試着。
さすがに心地よい着心地でしたが。

それを買ったのは1990年代前半。今は右の肘部分が擦り切れてしまい、
たんすに眠っています。レザーでも当てて修繕して、この冬きてみようかと
考え中です。

2014/11/26 (Wed) 01:30 | ひろぽん #nEEbkvUM | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。この店の内装はなかなか素敵だと思うのですよ。いいですね、こういうものは単に眺めているだけでも目の保養になります。そう言うものを沢山見てセンスを磨くのも良いでしょう。
私はこんな装いで何処かへ行く機会が滅多にないために、いやあ、どうしようかなあ、と一瞬困りました。こういう時に迷うことなく、クローゼットから衣服を引っ張り出すことが出来る人はかっこいいと思うのですが、私の場合はかなり苦労しました。歳ばかり重ねましたが、大人の女性の装いは難しいものですね。でも、時には良いです。つばめさんも時々どうぞ。

2014/11/26 (Wed) 22:48 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

ひろぽんさん、こんにちは。其の店は今もあるのでしょうか…今度行った時に探してみることにしましょう。ところで大きいサイズですか。それとも大きめの衣服が好きなのですか。緩めで着心地が良いからと。そういえばひろぽんさんはバックパックを背負って旅ができると言っていましたっけ。少しづつひろぽんさん像が浮かび上がってきましたよ。
私は気に入ったものは長く着続けます。だから購入するときはちょっと奮発するのですよ。ひろぽんさんのセーター。右の肘部分が擦り切れて箪笥に眠っているそうですが、修繕して復活させてくださいよ。

2014/11/26 (Wed) 22:56 | yspringmind #- | URL | 編集

「バックパッカー」は所謂「バイカー」と同類で、前者はバックパックを背負って旅を生活の旨とし、後者はバイクに乗って生活をすることを旨とする、のように非常に頑なな考えを持っていたので、自分を敢えて「バックパッカー」と言うのが憚る20代、30代でした。

さすがに40代になってからはスーツケースに変わりましたよ。つまり移動していく旅をしなくなったからかもしれませんね。旅ってそもそも「移動」するのが醍醐味なはずなので、スーツケースですと「旅」とは言えないかも知れませんね。そういう意味では最近の海外旅行は「旅」という気がしないです。単に2,3週間だけ生活の場所が変わるだけ、です。

セーター、補修できるお店探してみます。

2014/11/27 (Thu) 03:12 | ひろぽん #nEEbkvUM | URL | 編集
Re: タイトルなし

ひろぽんさん、バックパッカーは確かにバックパックを背負って旅を生活の旨としていますね。あれは若者の特権、と私は思っているのですがどうでしょうか。だってあの重いバックパックを背負って旅するのは、本当に体力が必要ですからね。私は元よりスーツケースの旅を好みます。そして移動型の旅はしません。2,3週間、ひとつの町に暮らすように滞在するのが好きなのです。ということはあれは旅とは呼ばずに、一瞬生活場所を変えた、と呼ぶべきなのでしょう。

2014/11/29 (Sat) 21:35 | yspringmind #- | URL | 編集

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