扉の向こう側

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このところ、私の生活は慌ただしい。そういう生活を好まない私には、心身ともにお手上げ気味。しかしそれも昨日で終わり。これからは自分好みの穏やかな、ごく普通の毎日になる筈だ。昨晩、旧市街へ足を延ばしてみたらPiazza Maggiore周辺の大通りは早くもクリスマスの照明が美しかった。これから少しずつライトアップの輪が広がっていくだろう。そうして完了した頃には、私の家にもクリスマスツリーが置かれるのだ。

昨晩遅く帰って来て、眠りに就くのが遅かったから、今朝は思い切り寝坊した。どちらにしても土曜日だ。休みの日くらい朝寝を楽しまなくては。目を覚ますと外は灰色だった。朝方は濃い霧に包まれていたのかもしれなかった。雨が降った訳でもないのに路面が濡れて黒く光っていた。そのうち太陽が顔を出して、私を外に連れ出した。さあさあ、土曜日は外に出なくてはね、と私の腕を引っ張るようにして。
いつもより随分手前でバスを降りた。ずっと前から昼間に歩きたいと思っていた通りがあったからだ。リアルト通り。最近は爪のケアをしてくれるお嬢さん、ソニアのSTUDIOがこの通りに引っ越したので、この通りを歩くようになった。随分長い間、リアルト通りの存在は忘れていたのに、こうして再び歩いてみるとなかなかいい感じの通りだった。ただ、いつも仕事帰りに立ち寄るために暗くてよく分からない。加えていつも急ぎ足だから、堪能できるわけがなかった。昼間のリアルト通りは違った印象を持っていた。ひっそりとした感じは昼も夜も同じだけれど、ちょっとした宝箱のような印象で、私のような目的のない散策にはぴったりの場所だった。通りは一方通行で、くねくねと先に続いている。右手にあるのは鞄や靴を修理する店。何年も前に人からそういう店がこの辺りにあることを聞かされていたが、ああ、此処のことなのか、と今頃になって頷く。道の反対側には小物の店。何度見ても何の店だかよくわからない。色んなものが置かれていて、其れなりに調和した不思議な店。その先には右手にオステリア。左手にカフェ。オステリアは夜にしか開けないのだろう、中は真っ暗だったけど、カフェは感じの良い初老の男性が忙しそうに動き回り、通りがかりの、外から中を覗き込むだけの私に手をあげて挨拶してくれた。こんにちは、シニョーラ。こういう店はいい。いつか中に入ってみよう。その先の右手には映画館。すっかり綺麗になって、21年前に見たあの古臭さは何処にもない。その先にはソニアのSTUDIO、銀製品の店、花屋、手打ちパスタの店と続くのだが、私が一番気に入ったのは夕方通るときはいつも閉まっていて中を見ることが無い、大きな扉の奥の様子だった。大きな扉は、恐らく随分昔のもので、当時は馬車が此処を通り抜けたに違いない。扉が開いていたのは、ちょうどそこの住人が中に入るために扉を開けたからだった。あっ! と思ったのは、まさか扉の中にこんな情景が隠されているなどと想像していなかったからだ。中は広い敷地らしく、奥へ奥へと道が続いていた。多分、修道院があるのだろう。この辺りには大きな修道院があると、私がボローニャに暮らし始めた当時、相棒の友人がそう言っていたから。それにしたって、こんな素敵な情景を扉の中にしまっておくなんて。そうしているうちに木製の大きな自動式扉は再び閉められた。私が中の様子を堪能したのは、時間にしてわずか30秒くらいのことだっただろう。だけど、1時間分の散策に相当するほどの喜びだった。中に入れて貰えることは出来ないだろうか。あの、美しい色に染まった蔦の葉が落ちてしまう前に。今度近くのカフェでワインなど頂きながら、店主から情報を得ることにしよう。

夜が早くやって来る。最近は夕方の寄り道が断然少ない。仕事と家の往復なんて私らしくもない。そうだ、近いうちに焼き栗屋へ行ってみよう。それともワインでも飲みに行こうか。こういうことは積極的に。元気なうちに沢山楽しんでおかなくては。


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コメント

こんにちは。
一瞬でも扉があいたなんて、絶妙ですね。あるんですね。
それをこのカットで撮るyspringmindさんがすごいですね。入り口の天井が丸いのかとか蔦が生えてもそのままなのねと思いました。そうそう日本ではヘチマカーテンやゴーヤカーテンを夏の暑さよけのために作ることが流行ってますがね。
まさか暑さよけではないでしょう。家を痛めるからと蔦は取りそうですが、確かに同じ町内にあるイタリアレストランも蔦が生えてます。まあ石造りレンガ造りだからでしょうね。こちらの価値観で言うと夢もへったくれもないですね。美に両国とも敏感なころはた確かです。こちらはみんなの共同スペースまで美が浸透してない気がしますがね。実益重視のような。だから、私はね、昭和の頃に建てられた建物があるんですけど、見つけるときれいだなあったかいなと思うんです。あー、また長くなりました。

2014/11/23 (Sun) 14:14 | つばめ #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。この瞬間に遭遇できたことは、全くの幸運でした。あ!と思って鞄からカメラを取り出しているうちに再び閉まり始めたので大急ぎで写真を撮りました。どんなふうにとろうなんて考えている暇などありませんでしたよ。もう夢中だったんですから。ボローニャでは時々美しく蔦が絡まる建物を見かけます。それは歩く人たちの足を止めて、魅了するのです。確かにレンガや石造りの家ならではの技でしょうか。蔦を絡ませるのはまさに美しく見せるための演出です。
昭和の頃に建てられた建物。どんな建物でしょうか。つばめさんが、見つけるときれいだなあったかいなと思う、その建物を見てみたいと思いました。

2014/11/23 (Sun) 21:41 | yspringmind #- | URL | 編集

こんにちは。
昭和の頃の家は、私の中では2パターンあるのです。ひとつめは、平屋の木造。ふたつめは、日本が初めてごくごく普通の一般家庭に洋風建築を取り入れた造りのおうちです。
ひとつめの方は、重厚な和の様式ではなく、瓦も風が吹けば飛びそうな素焼きのような青色やえんじいろ。窓枠は木わく。
ふたつめは、壁はコンクリートに石を吹きかけたようなザラザラ感で、窓はやはり木わく。
どちらもなにか大工さんの慈しみや昭和の余裕が感じられるような家です。
祖父の家に遊びに行ったとき、周りがそのようなおうちがあったから好きなのでしょう。

2014/11/24 (Mon) 13:41 | つばめ #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、成程、大変わかりやすい説明を有難うございます。思い出してみれば私が小さいころ住んでいたとうきょうの家の近くには、平屋の、一番目のタイプの家が幾つもありましたよ。縁側なども存在して、平和な感じが漂う家でした。そうか。あれは昭和の家なのか。と、思い出してちょっとうれしくなりました。今でもそんな家が残っているなんて。生命力ありますね。

2014/11/24 (Mon) 19:33 | yspringmind #- | URL | 編集

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