うちには猫が居ない

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急に寒くなったような気がする。家で暖房をつけるのは勿論のことだが、それにしたって朝晩の冷え込みが身に沁みる。元々寒がりなのだ。だから寒さが人の3倍も身に沁みる。暖かいジャケットに身を包むも、短い丈だから腰から下が妙に寒い。今日こそ冬のコートを、と思いながら未だにそれを着ないのは、まだ町の人たちが其処まで厚着をしていないせいだ。寒がりのボローニャ人たちでさえ冬のコートを着ていない。それが私の勇気をくじかせる。11月一杯はショートジャケットで頑張ってみようか。

ところで最近の私ときたら、猫に夢中だ。と言っても家には猫が居ない。夢中なのは上階に暮らす家族の、幸運、と言う名の猫である。血統書などない。何種の猫でもない。でも、どうしようもなく可愛い。
上階に猫がいると知ったのはこの夏のことだ。ある日家にも帰るために相棒と坂道を歩いていたら、彼らのテラスに猫がいるのを発見した。そうか、彼らのところには猫が居るのか。そうと知ると私たちは急激に、彼らに親しみを感じた。しかも明らかにごく普通の、普通の猫を飼っている。上階の家族は、この辺りでも案外知られた人達だ。ひとつはとても良い人達であること。そしてもうひとつは大変豊かであること。所有しているものを見れば直ぐわかる。それから山に家を持っているとか、大学に通う息子の生活とか。でも少しも気取らない、常識のある彼らは、大変豊かであるにも拘らず、私たちに近い人間に思えたりするのだ。つまりごく普通の人々。猫を発見して数か月経ったある夕方、私は上階のご主人と階段で一緒になった。其れで訊いてみたのだ。あなた達のところには猫がいるでしょう、と。彼は口髭のある人物で、顔の作りがいつも微笑んでいるように出来ているのだが、更に頬を緩めて嬉しそうに言った。そうだよ、猫がいるんだ。白と黒のこんな大きな猫さ。私が夏頃テラスに居るのを目撃したこと、私は猫が大好きなこと、私も猫が欲しいことを話すと、今度、うちに遊びに来るといいと言った。猫のことなら僕の奥さんに訊いたらいいから、と。そのことを相棒に話すと、やれやれと言いながらも満更でもなさそうな顔をしていたので、数日前の夕方、相棒の腕を引っ張って彼らのところに行ってみた。彼らの家は上の階を全部占領した、ホテルのような広々とした美しい家だった。この建物の中にこんな家があったとは、誰が想像できただろうか。そんな中に猫は居た。遠目で見るよりもずっと大きくて、ずっと可愛かった。人見知りをするのか、テーブルの下で氷のように固まっている。でも動物と言うよりも、まるで猫の置物のようだった。年をとっているらしく、妙に髭が長い。その顔は飼い主によく似ていて私たちの笑いを誘った。ご主人が言っていた通り、奥さんはかなりの猫通で、猫のことなら何でも知っていた。何処へ行けば猫を手に入れることが出来るとか、猫を飼う時はこうしなくてはいけないとか、ああしなくてはいけないとか。面倒がらずに、実に楽しそうに教えてくれた。そして翌日彼女は下の階に降りて来て、此処に電話したら子猫が居るから、と電話番号をくれた。どうやら近い将来、私たちは猫と生活することになるらしい。なるらしい、と言うのはまだ猫が居ないからと、もう19年も猫のいない生活をしているために実感が湧かないからだ。戸惑いはないが、まだ、夢を見ているようだ。それとも本を読んでいるような。
私は猫だけでなく犬も好きだ。犬との生活は一生の夢。でも一生夢で終わるのかもしれない。何故なら散歩に連れていく時間をどうしても生み出せないからだ。それとも大きな庭があったらばよかったかもしれない。犬を飼っても犬を開放的な気分にさせることが出来ないならば、私が我慢するしかないだろう。猫は、違う。猫は外に連れ出さなくても良いし、放任しておくのが猫の幸せ。例えば私の昔の猫がそうだったように。遊んでほしい時にはすり寄ってくるが、それ以外の時は、放っておいてちょうだい、と言わんばかりに離れたところで寛いでいる。私たちと丁度よい距離感。でも一緒に暮らしている、言うなれば同居している友達みたいな存在。昼間仕事をして留守がちな私たちと、上手くやっていけるに違いない。貰った電話番号に掛けてみたら、相手は凄いおばあさんだった。話がちっとも通じなかった。彼女のは典型的なボローニャ辺りの方言だった。其れで相棒にもう一度掛けて貰ったら、案の定話が通じた。この年齢の人達にはボローニャ辺りのの方言で話すのが一番いい。それで近いうちに猫を譲ってもらうことになった。勿論、彼女が私たちを気に入ったらのことだ。誰にでもいいから、なんてことはこの辺の人はしない。私の可愛い猫ちゃんをこの人たちになら任せられると思わなければ、譲ってもらうことも出来ないのだ。ああ、その日が待ち遠しい。今夜の私はとても幸せな気分である。

うちには猫が居ない。でも、もうじき猫が一匹、うちにやって来る。


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コメント

久しぶりです。
こんにちはyspringmindさん。

なんだか私は記事を読んで勝手にわくわくしてしまいました。
恐れ多くも、まるで自分が長年猫を飼っていなくて、
ずっと猫と生活をする事を、ぼんやり夢見ていたみたいに。
変ですね、わたし。(笑)

どんな性格の子で、
どんな毛並みで、
どんな猫さんとの性格が待っているのか!
楽しみですね。

2014/11/21 (Fri) 04:45 | Naomin #- | URL | 編集
よかった!

yspringmindさんへ。
こんにちは。スッカリご無沙汰です。
元気にしていらっしゃいますか?
元気ですよね、猫が来るんですもんね(笑)
その内こちらでも可愛い猫ちゃんのお写真が見られるのでしょうか。
ウチは現在、家の中に6匹、外に3匹の大所帯です。
どの子も本当に可愛いです。猫と暮らすようになってから性格が一変しました。
もし猫がいなかったら、どんなに性格の悪い男になっていたか分かりません(笑)
本当に自分のことのようにワクワクします。
素敵な年末になりそうですね!

ブノワ。

2014/11/21 (Fri) 09:17 | ブノワ。 #kZkdgmoI | URL | 編集

こんにちは。
猫は飼ったことないですね。子供の頃から犬、金魚、ハムスター、ウサギ、ウコッケイ、文鳥、鈴虫は飼ったことあります。もらってきたものが多いのですが、結構いますね。いまは、犬だけです。やはり、動物は人と時間の流れが違うのが見ていて和みますね。いつ見ても、ラララーンという感じです。
猫との思い出は、学校の帰り道とても太った猫が水路の溝を歩いていました。挟まって動けなくなるのではと気になって追っかけたこと。大丈夫でした。また、小さな子猫が後を着いてきて、もう小さすぎてかわいそうだけど飼えないから走って逃げたこと。
ちょっと思い出してもお腹のあたりがぎゅっとなります。
楽しみですね。

2014/11/21 (Fri) 16:34 | つばめ #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

Naominさん、こんにちは。忙しい中、遊びに来てくださってありがとう。
猫と言えばNaominさんもかなりの猫好き。わくわく感が伝わったようですね。まだどんな猫が居るのかも分からないのですが、猫を迎える準備を進めています。ああ、此れで飼い主が、あなたじゃ駄目よ、信用できないわ!何て言って猫を譲ってもらえなかったらどうしよう。と、楽しみにしながらも私の心は波乱に満ちているのですよ。

2014/11/22 (Sat) 17:56 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: よかった!

ブノワさん、こんにちは。元気ですよ、何しろ猫がうちに来るんですからね。
ブノワさんのおうちには全部で9匹の猫ちゃんですか。凄いですね。みんなを平等に大切にできるブノワさんて、一体どういう人なのかしら、一度お会いしたいものだわ、と思いました。恐らく猫の心も手を取るようにわかってしまうのでしょうね。今度、猫相談にのってもらいましょう。
写真嫌いの猫っているのかどうか知らないけれど、そのうち勿論、猫の写真も登場させますよ。うふふ。

2014/11/22 (Sat) 18:01 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。つばめさんは随分沢山の動物を飼ったことがあるんですね。私は子供の頃、亀を飼ったことがありますが、庭の土を掘って家出されてしまってから、亀はもうだめなんです。悲しい思い出のひとつです。
犬を飼っているつばめさんが、ラララーンとしているのを想像してみました。いいですね、いい感じではありませんか。私も近いうちに、ラララーンってなるのかと思うと、今からとても楽しみです。

2014/11/22 (Sat) 18:06 | yspringmind #- | URL | 編集

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