平日の散歩

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最近直ぐに眠くなる。夕食の片付けやら何やらをすっかり終えて腰を下ろすと、途端に眠気がやって来る。これは疲れているせいか、昔ほど若くないせいか、それとも季節的なものだろうか。細かな用事を片付けたくとも、さて、と椅子に座った途端に頭の中がぐるりと回る。睡魔の登場だ。この睡魔が巧みに私を誘う。さあ、さあ、と。おかげで幾つものことが先延ばしになり、最近沢山のことが不透明になっている。物事がクリアであるのが好きな私だ。だからじれったくて仕方がない。今日こそ、今日こそと思いながら、しかし私は睡魔に促されるまま、心地よいシーツの中へと吸い込まれていくのだ。

今日は仕事を休んだ。別に病気だったわけではない。平日にしかできない諸々のことを片付けるためだ。休みだというのにいつも通りに目を覚まして早々に家を出た。用事が全て終わったのは昼過ぎだった。いや、全てではない。本当のことを言えばあとみっつあったけれど、疲れてしまったので今日はこの辺にしておこうと打ち切ったのだ。疲れたと言いながら、しかし旧市街を小一時間ぶらりと歩き回る元気はある。此れが無くなったらおしまいなのだ。ああ、元気で良かったと思いながら、旧市街を歩いた。平日の散歩は週末の散歩の3倍も楽しい。何しろバスが通常通り運行しているし、旧市街の混み具合は週末の半分だし、何しろ人が働いている時間帯に散歩などしている、その事実に価値がある。嬉しいなあ、嬉しいなあ、と思いながら路地から路地を渡り歩いた。こんなに嬉しいと思いながら散策する人が居るのだから、ボローニャの街もさぞかし喜んでいるだろう。そうして歩いているうちに、私は昨年の秋のことを思い出した。秋と言っても大そう寒く、襟巻をぐるぐる巻いて、暖かいコートを着込んでいたけれど。友人がボローニャにやって来たのだ。料理の世界で活躍する彼女は関心の全ては料理と食料品に注がれていたから、彼女と共に何かをするということはつまり、食事をする、カッフェをする、食前酒を楽しむ、と言うことだった。私にとっては少々困った分野だった。其れと言うのもいつの間にかひどく小食になってしまったからだ。以前のようにあれもこれもと堪能できたのが嘘だったように、胃袋が小さくなってしまったからだ。勿論今も美味しものは大好き。でも、美味しいものをちょっと、で充分なのである。そんな私のことを例えば相棒は酷く心配するのだけど、しかし病気なわけではない。単に食が細くなった、胃袋が小さくなった、お腹が一杯のサインが人より早めに出るだけのことだった。本当のところ自分自身も心配して医者に相談もしてみたが、そのうちまた食欲が出るでしょう、と一蹴されたくらいだから心配はないようだ。それにしたって折角日本から来た友人と少しだって多くの時間を過ごしたいと思い、毎夕待ち合わせをして今日は此処、明日はあそこでと夕食を楽しんだ。そのうちのひとつが偶然通りかかった古びた食堂だった。テーブル数は少ないし、しかし何やら美味そうな印象の食堂。私達は隅っこの席に居場所を確保して夕食をすることになった。この店の得意とするのは家庭料理。給仕とメニュー。それらを取り除けばまるで家に居るような夕食だった。パスタ料理も美味しいけれど私は野菜料理が嬉しかった。昔はあんなに嫌いだった野菜。母が食べなさいと言えば言う程、嫌ったのに。今は何はさておいて野菜がいい。特に火が通った野菜がいい。野菜が持った甘みや苦みがはっきり表れるような調理が良い。さらに付け加えれば、家庭料理程美味しいものはない。料理の世界で活躍する友人がどう思ったかは別にして、私は上機嫌だった。それでついつい食べ過ぎてしまったけれど、店を出る前に店の人が小さなグラスに食後酒をご馳走してくれたから、消化するのは時間の問題だった。あれは楽しい一週間だった。四晩も外で夕食を済まして帰ってくる妻に、相棒は開いた口も塞がらないという感じだったけれど。

そんな秋もあったけど、この秋に友人がボローニャに来る予定はない。どこかへ出掛けて食事をする予定もなく、専ら家で普通の食事。でも、群青色の空に細い細い月。空気が冷たい日は空が青いけれど、月夜も飛び切り美しい。そんな月を眺めながら、今夜は黒パンとスモークサーモン、そして相棒が近所のミケーラ夫婦に親切にしたお礼に貰って来た上等のスプマンテ。それにサラダやチーズなどを用意したら、小食な私にぴったりに夕食だ。怪獣のような食欲の相棒は、こんなものは前菜にしかならぬ筈。さて、どうしようかな。


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コメント

平日の休みは、こそぐったくなるようなうれしさですね。

2014/10/29 (Wed) 15:49 | つばめ #- | URL | 編集

先日カラブリアから戻ったことも手伝って、今日の寒さは堪えました。秋を飛ばして一気に晩秋が来てしまったようですが・・食欲の秋も到来中です(笑。

素敵な相手との食事はいつでも楽しいものですよね。気の合う友人となら、なおさら。

2014/10/29 (Wed) 21:51 | erieri #- | URL | 編集

平日の朝、体調が優れず職場に休みの連絡を入れる。
すると次第に調子が良くなってくる。
昼飯を食べに近所の食堂(夜は居酒屋)に行くと、
「夜も昼もありがとうございます」と店員さん。
調子に乗って出かけたりすると良くない。
出先で「あれ、体調悪いかな・・・」ってな感じで帰宅。
すると熱が37度を超えてしまっている。
仕方なく近所の医者に行くと、お決まりの薬を処方してくれる。
調剤薬局の薬剤師も淡々と薬の説明をするだけ。

体調悪くてもとりあえず出勤した方が良さそうです、僕の場合。

2014/10/30 (Thu) 01:46 | ひろぽん #nEEbkvUM | URL | 編集

街を散歩するという楽しみ。ウィークデーなら、より一層でしょうか。

親しい友人とのお食事は、おしゃべりを楽しんで、ついつい食べ過ぎてしまいますね。

2014/10/30 (Thu) 18:09 | アルプス #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。平日の休みは、一日の価値が数倍多く感じられるのは私だけなのでしょうか。

2014/10/31 (Fri) 00:14 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

erieriさん、こんにちは。カラブリアから帰って来たばかりなら、ボローニャの寒さは身に沁みるでしょう。相棒はまだ秋だと言い張りますが、私には晩秋、初冬の寒さです。でも、寒くなるとこんな私でも少しは食欲が出るというもので、特に赤ワインの美味しさは格別ですね。この時期の家族や友人との食事には、美味しいものが沢山並んで豪華版です。

2014/10/31 (Fri) 00:19 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

ひろぽんさんは体調少しくらい悪くても、出勤した方がよいのですね。私は体調が悪くて休むときは本当に一日中ベッドに横になっていますよ。今回の平日の休みは溜りに溜った有給休暇を一日有効に使うというお休みでした。ホームドクターや役所関係、銀行関係と言った平日でないと空いていないところを渡り歩きましたよ。まあ、早々に切り上げて散歩などもしましたが。たまにこんな風に休むと気分転換になるようです。

2014/10/31 (Fri) 00:24 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

アルプスさん、平日の散歩は全く楽しいです。勿論これが毎日となると別なのかもしれないけれど。いつもは平日=仕事だから、定日の休日の価値が上がると言ったところでしょう。
楽しいお喋りをしていると私の場合それでおなかが一杯になってしまうようです。どうしてなんでしょうねえ。

2014/10/31 (Fri) 00:27 | yspringmind #- | URL | 編集

そんなことを書かれたら、遊びにいきたくなってしまいます。秋のボローニャさぞかし美しいことでしょうね・・・散歩話に最近よく月が混ざるのですね。

2014/10/31 (Fri) 05:20 | ineireisan #pNQOf01M | URL | 編集
Re: タイトルなし

ineireisanさん、こんにちは。いいですね。それではボローニャに遊びに来ませんか。最近暗くなるのが早いので、空を見上げるとすぐに輝く月が目に入ります。しかも急に寒くなったために、飛び切り美しく見えるのですよ。とか何とか言って、私は昔から月が大好きで気になって仕方がないのです。

2014/10/31 (Fri) 21:17 | yspringmind #- | URL | 編集

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