10月の雨

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10月を迎えた朝、雨が降った。雨はじきに止むだろうと思っていたが夕方になっても止むことなく、それどころか雨脚は強くなる一方だ。暗くなるのが嫌に早い。19時を回ったばかりというのに、空がすっかり暗くなった。10月の雨。そう言えば1996年の10月初旬もこんなだった。あくる日もあくる日も雨で、しけった気分になった。仕方がないよ、ボローニャの秋冬はこうなんだから。そう言う相棒に、しかし昨年はこんなではなかったではないかと言って困らせたものだ。でも実際、10月の声を聞いた途端にこんな気候になるのも本当だ。それは私がその後、幾度も10月を迎えて飛び切りの青空が昼がるようにと。ようやく分かったことだ。かと言って、素晴らしい10月が存在することも本当だ。だから私は祈るのだ、明日は快晴になるようにと。飛び切りの青空が広がるようにと。

10代後半だった頃の自分を思い出した。それは久しぶりにあの頃聴いた音楽が通り掛かりの店に流れていたからだ。私は色んな夢を見て、様々なことに夢中だった。そのひとつがアメリカのラジオで、暇さえあれば聴いていたから、勉強はするのかと母から叱られたことが幾度もある。世の中にはラジオに耳を傾けながら勉強ができる人が居るが私はそれほど器用なタイプでなかったから、どちらかひとつしか出来なかった。母に叱られながらも、私はラジオに夢中だった。早口の外国語。早口でなかったかもしれないが、意味の半分以上が理解できなかった分、早口に聞こえたのだろう。私にこのラジオ局の魅力を教えてくれたのは姉だ。4歳と7か月年上の姉が家に持ち込んでくるものは、いつも新鮮だった。アメリカのラジオ局がいい例だが、例えばイギリスのビスケット、例えばビートルズの音楽、例えば、例えば、上げ始めたらきりがないほど沢山の物事。全てが全て素晴らしいことだったわけではないかもしれない。しかし姉は尊敬すべき存在だったから、10代の私には姉が好むどれもこれもが素晴らしく見えたのだ。
店から流れていた曲は、あの頃ラジオから頻繁に流れていた。毎日、一日に何度もかかっていた曲だった。あの頃、私の前方には幾つもの可能性がちりばめられていて、どれもが可能に見えた。幸せな10代だった。だからその曲は、私の幸せな10代の象徴みたいなものだ。あれから随分年月が経った。あの頃の様々な可能性は、結局私に似合うダイヤモンドではなかった。ピカピカに見えて、きらきらしているように見えたけれど、手にしてみたら私には不似合いなものばかりだった。私にとっての本当のダイヤモンドを見つけたのは、アメリカへ行こうと自分で決めた時だ。それは見た目には小さいけれど、手のひらに載せてみればずしりと重くて眩いほどの光沢を放っていた。心から望むもの。それが私にとっての本当のダイヤモンド。誰のためにではなく、誰かに決めて貰うでもなく、自分で自分の歩く道を選ぶこと、それがダイヤモンドなのだと思う。昔よく聴いたあの曲。少しも古びて聞こえない。

少しメランコリー。あの曲を聴いたからだ。それにこんな10月の雨の日は。


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コメント

わたしは妹がいて、そしてあまり優しい姉ではなかったのですが、もしかしてわたしがうちに持ち込むものを彼女は新鮮にとらえていたのかしら、とふと思いました。大人になるとそうでもないですが、子供の頃の数年の年の差って大きいですよね。
イギリスのビスケット、が一番気になりました、笑。あの赤いパッケージのシリーズでしょうか。

ところで、ボローニャの近くに大きな公園があるのですね! 緑の豊かな大きな公園、勝手にイメージがふくらみます。イギリスの義母がイタリア好きでわたし達もよく誘われます。いつかボローニャに行くことがあったら、ぜひ石畳の街の外れにある大きな公園に行ってみたいものです。

2014/10/02 (Thu) 06:02 | mk #- | URL | 編集

そうですね。そうですよね。
心が望んでいるもの、単純明快なことですよね。

2014/10/02 (Thu) 16:31 | つばめ #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

mkさん、こんにちは。恐らく妹さんはお姉さんがすること全てが新鮮だったと思います。私の姉は、私に特別優しい訳ではなかったけれど、そんな姉に何時もくっついて歩く私がさらに鬱陶しかったのではないかと思うのです。今は姉と私は大の仲良しで、甥っ子が私たち姉妹の仲の良さに感激したくらいなのですよ。私達は顔を見合わせて、うふふ、と微妙に笑うしかなかったけれど。
イギリスのビスケットは、まさにあの赤いパッケージのシリーズですよ。
まあ。イギリスのお義母さまがイタリア好きなのですね。いつかボローニャに立ち寄ってください。大きな町ではありません。でも居心地がいいのは保証付です。

2014/10/04 (Sat) 19:17 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。自分の心に正直になるのは良いことです。そして自分の為に何かすることも良いことなんですよ。自分の人生ですものね。案外簡単なことなのですよ。

2014/10/04 (Sat) 19:19 | yspringmind #- | URL | 編集

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