急ぎ足

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夏が急ぎ足で去ろうとしている。其れと言うのも雨のせいだ。雨が頻繁に降っては気温をぐんぐん引き下げる。9月の初めにまさかジャケットとスカーフが必要になるとは。勿論ジャケットは短い丈の軽いものだし、スカーフとて透けるような薄さだけれど。でも、9月早々、必要だったことは今までない。少なくとも私がボローニャに暮らすようになってから、一番の涼しい9月上旬である。街には学生たちが戻って来て賑やかだ。故郷に帰っていた学生たちがボローニャに戻ってきて、それからこの町出身の学生たちは海や山や外国でも楽しい休暇を終えて家族の元に戻って来て、皆、とても楽しい夏を過ごしたような、満足げな表情だ。学生生活をすでに終えて社会人と呼ばれる人々も、良く焼けた肌を競い合うかのよう。よくもここまで焼けたものだと感心してしまう程の小麦色の肌。日本のどこを探したって、こんな小麦色の人はいないだろう。
それであなたは何処へ行ってきたの? とここ連日人に訊かれる。たっぷりと太陽を浴びて、と。しかし私は何処へも行っていないのだ。時々ボローニャ旧市街を1、2時間散策しただけ。しかも快晴の日は実に少なくて、日焼けなどする暇はなかったはずなのだけど。だけど、確かに私は他人より肌が焼けているように見える。嬉しいか嬉しくないかは別にして。

友人から連絡を貰った。もうじきブダペストで会えること。そして彼女の予定がどんなであるか、私と相棒がどんな予定を持っているのか。ブダペストに暮らす共通の友人には内緒にしておいて、突然目の前に現れて驚かせてやろう。そんな他愛ない話。けれどもそんな小さな事が、確かに心をわくわくさせる。今回私と相棒は絵を探すつもりである。数年前私が食料品市場の裏手に在る古ぼけた古道具屋で絵を購入した。それは私の目に留まって私を魅了した緑色が魅力的な古い絵だった。少しも立派でない古びた幅広の額縁に入っていても縦横30センチもない小さな絵だった。ボローニャに持ち帰って家に飾ったら、とてもいい感じだったのだが、驚いたことにその絵を見る人見る人が、あの日の私と同じように魅了された。骨董品店ではなかったから、それは私の財布を簡単に開かせるほどの安価だった。今度の旅行で私達は、ひと目で私たちを魅了してくれる絵との出会いを求めているのだ。あの日、私が古道具屋であの絵と出会ったみたいな。そういう店が沢山あるのだ。私はちゃんと知っている。何しろ好きで好きで通い詰めて、既に10回もブダペストを訪れたのだから。それでもまだ訪れようと思うのだから、立派に惚れている証拠だろう。
それにしても忙しい毎日。急ぎ足は夏ばかりではない。私もまた急ぎ足で、毎日歩き回っている。楽しく旅行に発てるようにと毎日がぎゅうぎゅう詰め、という感じだ。ちょっと路上のテーブルに着いて休憩でもしてみようか。休憩して、そうしてまた頑張るのも悪くない。


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コメント

おもしろいほど道の中程にセッティングされたテーブルですね。こんなもんなんですかね。さぞやおいしい料理が運ばれてくるのでしょう!
旅行楽しみですね。古道具屋で買われた絵が気になります。みんながひかれる絵とは、生き生きとした絵なのかなと勝手に想像しています。

2014/09/05 (Fri) 16:06 | つばめ #- | URL | 編集

かつてボローニャに滞在していた時、9月中旬あたりで薄手のコートが必要になるくらい肌寒さを感じたことがありましたが、9月初旬でジャケットとスカーフの出番が来るなんて、早いですね。東京はまだ蒸し暑いです。

見る人見る人が心を掴まれ、魅了されるということは、それは大変素晴らしい芸術品だということです。それが古道具屋にあって、yspringmindさんが購入された。人でも物でも運命的な出会いがあります。yspringmindさんはいつでもアンテナをきれいに磨いているので、その絵に出会えたのでしょう。私もそんな素敵な絵に巡り会えるよう、常にアンテナを磨いていたいと思います。

2014/09/05 (Fri) 16:19 | アルプス #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。私もこの大胆なテーブルの置き方に惹かれました。こんな真ん中に置いて、と。勿論車は通らないけれど、しかしまたこんな風にぽつんとテーブルを置くなんて。特別席なのでしょうか。
旅行までの毎日は忙しすぎるほど忙しいのです。しかし楽しみなんですよ。ブダペストを歩いていると何て事の無い店に宝が隠れていたりします。私が前に買った絵は、今ではうちの宝です。さ、今度はどんなのに出会えるでしょうか。

2014/09/06 (Sat) 20:10 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

アルプスさん、今年は潔く夏が去ろうとしています。今日などは久しぶりに気温が上がりましたが、しかし夕方から剥き出しの足首の冷えること! 街のショーウィンドウに飾られている秋冬物が暑苦しく感じられないほど。今年の9月は私がイタリアに来て一番涼しい9月です。
良い絵とは、決して有名な画家が描いたものや値が張るものとは限りませんね。良い絵とは、見る人が良いと決めるので、自分と相性の合う絵に出会うと言うのはとても稀なことと思うので、この絵に関しては大変幸運だったと言えます。元々私は古道具屋が好きなので、旅先でこの手の店を見つけては時間を費やすのです。アルプスさんにもきっと出会いがありますよ。人が良いと決めるのではなくて、アルプスさんがこれだ!と思ったものが素晴らしいものなんです。私も常にアンテナを磨いていたいと思うのです。

2014/09/06 (Sat) 20:17 | yspringmind #- | URL | 編集

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