感じの良い人

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8月最後の日にふさわしい。日差しは強いが乾いた風がゆるりと吹く。日除けのカーテンが揺れるたびにテラスに落ちたカーテンの影が波のようにゆらゆら揺れる。何て事の無い日曜日だけれど、そんな様子を眺めながら過ごすのがとても楽しい。

昨日旧市街の化粧品店に立ち寄った。何時も行く店があるのにたまにし行かない別の店に飛び込んだのは、単に通りかかって、あ、そう言えば、と思い出したからだった。肌の悩みであれこれ質問をしたら、時々しか行かない客なのに、何も購入しない客なのに、沢山のサンプルを分けてくれた。顧客獲得のためのサービスなのか、それともこの店員の人柄なのか。どちらにしても大変気持のよい接客であった。日本ではこういうことが日常化しているようだから、さして感じることは無いだろうけれど、ボローニャに居てこんなことがあると感動する。それだからこちらの方も、単に無料で沢山いただいて得したと言うよりも、まあ、申し訳ないわね、質問に答えて貰えるだけでも十分有難かったのに、などと恐縮と同時に次はこの店で購入することにしようと思う訳だ。さて、頂いたサンプルを早速使ってみたところ、肌に合う。店員の話によれば人間の肌は夏から秋へと移り変わる時期に疲れを感じるらしいのだけど、どうやら私の肌もまた、そんな疲れを感じていたらしい。うん、あの店に行ってまずは店員に礼を言うことにしようとか、其れで頂いたサンプルのあれを購入することにしようとか、様々なことを考えるわけだけど、何しろ沢山サンプルを頂いたので商品購入はひと月も先のことになるだろう。

感じの良い人と言うのはそれだけでとても素敵だ。感じよくすることを時々取り違えている人が居る。例えばごまを擂って相手の気持ちを持ち上げようとしたり。思ってもいないのに、やたら同意してみたり。もっと普通にしていたって、感じよくは出来るのに。感じが良いと言うことは、もっと普通でさっぱりしているものだと思う。

昨夕、近所のバールで店主がワインを奢ってくれた。店主は私と同じ建物に暮らしていて、手っ取り早く言えば私達が家を探していると知り、自分が住んでいる建物の中のひとつが売りに出たから、なかなかいいから、と勧めてくれた人である。数戸しかないこの建物だ。変な人に来られては大変、と素性の知れた常識のある人達が来ることを願ってのことだったと後々知らされて、私も相棒も驚いた。そうか、私達は常識がある人たちなのだな、と。それはどんな褒め言葉よりも嬉しかった。何しろ私達はボローニャに暮らすようになってもうじき20年経つと言うのに、することなすことイタリア的ではないと親戚に指摘され、まるで不道徳の非常識もののように感じて悲しい思いをしていたからだ。常識のある人を望んだ店主もまた常識的な感じの良い人で、私達は店主に感謝の言葉もない。探していた家よりもずっと小ぶりの家だけど、何の不足もない、充分な家。何よりも住人が互いに尊重し合うこの建物に来れたのは、全くの幸運だったと思う。べたべた付き合うこともなく、交わす言葉はシンプルで、他の人に関心を持ちすぎない。私がアメリカで好きだったのはこんな感じのことだったから、この家での生活は快適以外の何物でもない。

ああ、それにしても、週末とは何故駆け足で走り抜けていくのだろう。暗くなり始めた空にこうもりが二匹飛んでいる。子供の頃、近所の森で見たこうもりをボローニャで普通に見ることが出来るのは全く不思議なことだけど、そうだ、此処には不思議が普通に転がっているのだ。さ、夕食の準備でもしようか。


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コメント

夏の終わりの空で、気持ち良さそうな空気まで伝わってきました。

2014/08/31 (Sun) 22:38 | つばめ #- | URL | 編集

見事なコントラストですね。雲の流れを見ていると、時間がゆったりと過ぎて行くような気がします。陽光は、時間によって、季節によって、美しさが異なりますね。

住居は安らぎを見出す、暮らしの基盤となるところですから、常識的で価値観が同じであることは極めて大切なことだと思います。シンプルで心地よい生活が一番だと思いますが、いかがでしょうか。

私はyspringmindさんのように人間が出来ていませんので、私だったらの話で大変恐縮ですが、私だったら、価値観が違う人とは、たとえ親戚であっても付き合いませんね。yspringmindさんは毎日様々な人々と温かい交流のある幸せな生活を送っているではありませんか。それは他人に対する配慮や気遣いといった良いマナーを持っている証なのではないでしょうか。

2014/09/01 (Mon) 16:29 | アルプス #- | URL | 編集

感じのよい人に会うと、ほんとに気持ちが晴れやかになりますよね。
わたしもそういう人になりたいなと思いつつ、うまくいかない日もあり。

ワイン屋さん、客商売だからきっと人を見る目がありそう。
そんな方に見初められるって嬉しいですね。

2014/09/02 (Tue) 04:46 | mk #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんな気持ちの良い空はなかなか見られぬものです。特に今年のボローニャときたらば、雨が多くて灰色の空ばかりを眺めていたような気がします。気持ちの良い空気、伝わったようですね。

2014/09/03 (Wed) 19:41 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

アルプスさん、こんにちは。素晴らしい空でした。ここ最近では見られぬような。私は昔から空が好きで、こんな風にして空を眺めながら沢山の空想をしましたよ。空想ばかりしている、と大人から窘められながら。
良い家は沢山あるし手に入れることもできますが、住人だけは本当に運なのだと思います。私が以前暮らしていた家は、家こそ良いけど住人が問題でした。ですから今の家は、本当に気持ちよく暮らせる、と言う訳です。家も人間もシンプルが一番です。
ところで私は人間が出来ていないので、其れこそ苦闘するわけです。兎に角イタリアの家族親戚のしがらみの多いことと言ったら、それは本当に全くもう! なのですよ。しかし私は単純なので、バールの店主の一言で気をよくしましてね。ふーん、常識的だったのねー、と。我ながら笑ってしまいます。

2014/09/03 (Wed) 19:48 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

mkさん、こんにちは。感じの良い人と会った日は、自分までもが感じの良い人になったような錯覚に陥って、全くご機嫌なのです。良く見回せば、案外お手本になるような感じの良い人は沢山いるのかもしれませんね。そうだとしたら、世の中は案外捨てたものではないと言うことですよ。
バールの店主は実にぶっきらぼうなのですが、恐らくですね、彼ははにかみ屋なのですよ。ま、そんな人に常識的人間と思って貰えたのは、私のちょっとした金メダルです。

2014/09/03 (Wed) 19:53 | yspringmind #- | URL | 編集

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