夏の終わりのセンチメンタル

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夏休みの終わりは一年の終わりよりも淋しい、と私は子供の頃から思っていた。そんなことを子供の頃から思っていた私は、一種、感情が冷めた子供だったに違いない。それともその反対で、感受性の強い子供だったのかもしれない。どちらにしても私は夏休みを終える頃になるとそんなことを感じて、ほんの少しセンチメンタルな気分になる。その夏休みが、たとえ何処にも行かずに何事もなく終わるにしても。夏の終わりのセンチメンタル。私は何時の頃か、そう呼ぶようになった。

テレビのニュースによると高速道路が大渋滞とのことだ。最後の最後まで楽しんで、明日から始まる仕事の為に家路につく人たちの車の列。これは毎年同じことで、特に珍しくもなんでもない。皆、承知の上でぎりぎりに帰ってくるのだから放っておいても良いかと思うが、そんなことを報道するほど今日のイタリアは平和ということなのかもしれない。
そんな中で、新聞のボローニャ版に面白い記事が載っていた。其れというのも昨夜中、市内の菓子店に泥棒が入ったという話だ。ボローニャのサッカー場の近くに位置するチャームという名の菓子店でのこと。ガラス戸をこじ開けて侵入した泥棒が盗んだものはと言ったら、50個ほどのケーキだった。店内にある冷蔵庫に収められていたひとつにつき30ユーロほどの、様々な種類のケーキを50個ほど。それ以外に盗まれたものはないらしく、店の人が不可解と言いながら、思わずくすりと笑ってしまったという話だった。盗んだケーキを転売することは無いだろう。それではお腹が空いていたのか。何処かでパーティでもするのか。防犯カメラは壊されていたし、こんな泥棒を探し出すのは難しいね、と店主と警察の話であった。あはは。長くボローニャに暮らしていると色んな話を耳にするけれど、こんなへんてこな話は聞いたことが無い。夏休みの終わりにぴったりの、ちょっと間抜けで笑いを誘う事件だった。

姑のところで日曜日の昼食を終え、家に帰って来る前に近くのバールで相棒とカッフェをした。と、横から私達ふたり分のカッフェを払ってくれる者あり。振り向けば名前も知らないけれど、このバールで毎日のように会う青年が居た。あら、いいわよ。という私に、この間君の旦那さんにご馳走になったからな、という。青年は案外義理堅い性格のようだ。彼の手元には持ち帰り用のカッフェが。誰に持って帰るのか、あんた、彼女はいないって言っていたけど。と問う私に、ああ、君は分かっていないな。女は持ち帰りのカッフェくらいでは満足しないんだ。女は例えば薔薇の大きな花束だったり、小さな箱に納められた宝石だったり、ピカピカに磨いた車でのドライブが好きなのさ、と言いのけた。成程、青年は色んな経験をしているらしい。それではこれは誰の為なのかと訊けば、家で待っている父さんの為だと言った。そうか、父さんか。それでは冷めないうちに持っていかないとね!私達は良い日曜日の午後を、と挨拶を交わして別れた。名前も知らない単なる知人が沢山いるバール。深入りせずに気さくな話をしながらカッフェをするのは楽しいものだ。

あの青年も、隣に立っている女の人も私も、明日から仕事が始まる。


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コメント

ほんとにたくさんのケーキはなんのために要るんだったんでしょうね。
青年はよく知ってますね。女性は華やかなものを喜ぶと言い切ってますね。お父さんは温かなコーヒーとは、お父さんを大事にしてるんでしょうね。

2014/08/25 (Mon) 07:22 | つばめ #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。あのケーキがお腹の空いた人々の手元に届くとよいなと思いました。盗むのはよくないこと、だけどもしそれが貧しい人たちの手元に届くならば、と思いました。
青年は若いけれど沢山の女性経験があるそうで、恋愛に年齢は関係ないと言っていました。年齢は関係ないけれど、物欲の多い女性と恋をすると大変なのだそうです。これは世界共通、と皆で笑いました。そして父さんはコーヒー。コーヒーを父さんに持ち帰る青年は、案外心の優しい人なのかな。

2014/08/26 (Tue) 20:45 | yspringmind #- | URL | 編集

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