水曜日の早い夕方

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いつもの生活が始まる前にと、爪の手入れに行った。爪の手入れをしてくれるのはソニア。ソニアは夏の終わりに別の場所に新しいSTUDIOを開くので大忙しだ。今の場所は大通りに面していて便利でよいが、この辺りの人なら誰もが知っている、驚くほど共営管理費の高い場所なのだ。契約期間が切れるのを機会に、この近くの良い場所に新しいスペースを持とうと考えたのは、ごく自然のことに思えた。大通りからほんの少し内側に入ればよいだけ。其れだけで愕然とするほど経費節約になるのよ。とのことである。そもそも飛び込み客を受け付けられぬほどの繁盛ぶりで、しかも顧客からの口コミでさらに新しい客が通うようになると言った具合だから、目立つ場所や大通りに面していなくても全く構わないわけである。私もまた、1年半前に友人から教えて貰って通い始めた新規の客のひとりなのだ。新しい場所に自分のスペースを持とうとしている彼女はまだ30代の初め。そんな彼女が新しいことを恐れずに、尻込みせずに進んでいくのが私は大好きだ。何度も案を練った。きっとうまくいく。もしうまくいかなくてもやり直せばいい。チャレンジしなければ先が開けないでしょう? 私達は何度も互いの言葉を確認して、9月の新しいオープンに大きな希望を持つのだ。いや、私は応援するだけ。希望をもって突き進んでいくのはソニアなのだけど。それにしても爪の手入れがこれほど精神的にリラックスするものだとは。人に手を手入れして貰うのがこんなに素敵なことだとは、ソニアに会うまで知らなかった。私が知らないことは、まだまだ沢山あるのだろう。少しずつ発見していこうではないか。

ぴかぴかな爪になった私は水曜日の早い夕方を楽しむことにした。誰と約束もなければ、早く家に帰らねばならぬ理由もない。何しろ私は自由気ままな身分。それはお金では買えない尊いものだ。街には外国人が多く目につく。特にドイツ語やフランス語圏の人が多いようだ。言っていることはさっぱり分からないけれど、私の知らぬ言葉で楽しそうに会話する人達の横を通り過ぎるのは気分の良いものである。少なくとも、彼らがボローニャを楽しんでいると言うことだから。ポルティコの下を歩いていたら前方に面白い3人組が歩いていた。ドイツ人らしかった。背の高い夫婦に挟まれて歩く小さな男の子。夫婦は小ぶりのバックパックを背にしょっていて、男の子もまた小さな猿のリックサックをしょっていた。男の子は歩けるようになって間もないと言った感じだが、両親と手を繋ぐのが嫌いらしく、ゆっくり自分の足で歩を進めるのだ。面白い、と思いながら彼らの少し後を歩いていたら、男の子が、恐らくはおむつで大きく膨れているのだろう重そうなお尻で尻餅をついた。あらら。彼が後ろに倒れてそうになったのを助けるために駆け寄る私が、ほら、ポルティコの下の通路はグラニリアという石材で出来ていて堅いから、頭を打ったら大変なのと言葉を添えると、妻の方が有難うと言った。男の子は何が起きたかわからぬまま、知らない人に支えられたのが楽しいらしく声を上げて喜んだ。夫の方が言った。この子が手を繋ぎたがらないこと、周囲と同じように自分の足で歩きたいこと、夫婦がリュックをしょっているように自分も何か背中にしょいたかったこと。想像した通りだった。あはは、と笑いながら頷く私に、男の子は猿のリュックを見せてくれた。どうやら大変なお気に入りらしい。何処までこうして歩くのかと訊くと、2本の塔の近くのホテルまでだと言う。まだ結構歩かねばならないが、そのうち到着するさ、別に誰と約束しているでもない、気楽な旅行なんだよ、と夫が言った。私と同じだと心の中で思いながら、彼らと別れた。楽しんでね。うん、ありがとう。そんな言葉を交わして。

私の夏休みが終わろうとしているところに良い計画が。今は北の国に住んでいるブダペスト出身の友人たちと、ブダペストで会う計画。夏がすっかり終わってしまったに違いない9月に。楽しみが先にあるのは良いものだ。


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コメント

親子が休暇の時間を楽しむ様が目に見えるようです
そして、日常の生活の中で旅行者に出会う街に住むって
素敵だなと思いました  
私も夏の休暇から戻りました。 今は週末に市場の側のカフェで会う友人と
夏の休みの出来事を話したり、自分の町はいいなと思ったりしています。
ブタペストに行かれるんですね 
ご友人と会う楽しみも加わって、期待にわくわくしますね!

2014/08/20 (Wed) 20:25 | スプーン #EQkw1b1A | URL | 編集
Re: タイトルなし

スプーンさん、こんにちは。昔はボローニャで旅行者に会うことはあまりありませんでしたが、いつの頃からか、旅行者を見かけるのが当たり前になりました。勿論、フィレンツェやローマ、ヴェネツィアに比べたら全然比べ物にならぬほど少数ですが。多分、大きな町はもう見たから、それでは小さい町にも行ってみましょう、みたいな感じなのでしょう。
スプーンさんの夏休みの出来事、私も聞かせて貰いたいです。夏の旅先から自分の町に戻って来て、自分の町はいいなと思うのは、とても素敵なことだと思います。私もまた、ブダペストから帰ってきたら、そんな風に思いたいと思います。  

2014/08/21 (Thu) 23:15 | yspringmind #- | URL | 編集

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