さやいんげんを食べよう

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市場で桃とさやいんげんを買った。桃はいつもの黄桃。皮がするするとむける甘い桃は子供の頃食べたものと一寸も違わない。イタリアでは品質改良あまりおこなわない。だから昔ながらの味を楽しむことが出来るのだ。もっと甘く、もっと見栄えの良いものに、と日本では試行錯誤するけれど、それも善し悪し、美味しいものはそのままとっておいても良いのではないかと思う。少なくともイタリアで普通に店先に並ぶ黄桃は味がギュッと詰まっていてみずみずしくてとても美味しい。特別な名前などついていなく、単に黄桃。敢えて言えば何処で育ったものかの違い。でも私が行く店は何処も地元、若しくはエミリア・ロマーニャ州内で生産されたものばかりだ。何しろこの辺りは土がよくて、美味しい果実が育つ。ちょっと自慢しすぎだろうか。

ところで桃の美味しさはともかく、さやいんげんは今が旬だ。美しい緑色の、しかし日本のものよりひ弱な感じのさやいんげん。これを茹でて何もかけずに食べるのがとても美味しい。塩味は茹で湯に少し入れるから、それで十分なのだ。さやいんげんの頭としっぽをを綺麗にする作業と茹でる作業が嫌いだけど、夏場はこんなシンプルなものが美味しいのだ。あれあれ、以前は死んでも食べないと言っていたくせに。相棒がそう指摘するのも無理はない。舅がまだ居た頃、私は確かにそう言った。舅は無類のさやいんげん好きで夏になると何はさておいてさやいんげんを食べたがる。毎日だ。自ら店に行って袋いっぱい買ってきて、キッチンに立って黙々とさやいんげんを茹でる準備作業をしていた。今日もさやいんげん! とそれを嫌う私に、なにを言うか、さやいんげんは栄養があって良いんだぞ、と返す舅。それは嫁と舅の夏の戦いで、周囲は今日も戦うのかと呆れ顔だった。でも、私は嫌いだったのだ。あの噛んだときの歯がキュッキュッとするのが。そんなことは無いと言う舅に、いいや、する! と言い返す私。だから私は昔から、日本に居た時もさやいんげんを茹でたものが大嫌いだった。舅とつまらないことで毎日言い争ったのも昔のことになった。舅は何年も前に他界したからだ。一昨年の夏の日、店先でさやいんげんを見たら舅のことを思い出して急に買ってみたくなった。大きな男の手でふた掴み分ほど。けっこうな量で綺麗にするのが大変だった。舅はこんな面倒くさいことをよく率先してやっていたものだと感心した。大きな鍋にたっぷりの湯、少し塩を入れて茹でたさやいんげんは美しい緑で、自然の甘みで美味しかった。これに舅はオリーブオイルとワインビネガーを掛けて食べていた。私はそのままで十分美味しいと思った。夕食のテーブルに茹でたさやいんげんが並んでいるのを見て相棒が笑った。嫌いじゃなかったのか。うん、嫌いだったけど食べてみたら美味しかった。それを聞いて相棒が、父さんが居たら、だから言ったじゃないかと怒るだろうな、と言うので、ううん、多分こんな風に言うと思う、ほーら、だから言っただろう、俺の言うことに間違いはないんだから、と舅のまねをして言うと、相棒が大きな声で笑った。そうだ、父さんはいつもそうだ、自分の言うことに間違いはないって。さやいんげんはとても美味しくて、舅が天井の隅っこ辺りに張り付いて、こっそりのぞいているような気がした。舅と私は相性が抜群に悪かったが、何時の頃からかいつも私の見方をしてくれるようになった。案外私達は似た者同士の頑固者で、だから初めの頃は互いに忌み嫌っていたのだろう。何時の頃からかさやいんげんは私の好物となり、この季節になるのが楽しみになった。

今日も暑い一日だった。家の中でさえ29度とはどういうことか。それでも鍋一杯のさやいんげんを茹でるのだから、私も無類のさやいんげん好きと呼んでよいだろう。


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コメント

yspringmindさん、こんにちわ。いつも更新されているのを楽しみして読んでます。
昨日も暑い1日でしたね。
私も夕食はさやいんげんを近所のおばーちゃんから頂いたので、茹でて食べました。茹でたてのさやいんげんを、そのままつまみながら少し冷えた白ワインと一緒に。素材が生きるシンプルな食べ物とワイン。いいですね(笑
以前の投稿に食欲がないと書かれてましたが、私はそんな時、BAYER社のGEFFERを食事の前に飲んでます。胃がすっきりするような感じがして、時々使ってます。
今日もトスカーナの朝は、空が高く暑くなりそうです。広大な土地に咲いている向日葵も頭を持たれて枯れてますが、どこまでも続くぶどう畑の緑がきれいです。
では、よい1日をお過ごしくださね。

2014/08/12 (Tue) 08:03 | サンジ #- | URL | 編集

たしかに、さやいんげんを噛んだらきゅきゅとしますね。舅さんとの言い合いのところで、yspringmindさんも負けてなかったんだなと笑ってしまいました。いいですね。
みかたをしてくれるようになったのは温かいですね。

2014/08/12 (Tue) 14:22 | つばめ #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

サンジさん、こんにちは。少し前までこの夏は涼しくて・・・などと言っていたのが嘘みたいに暑くなりました。湿度が高いのが堪えますね。近所のおばーちゃんからさやいんげんを頂くなんていいですね。新鮮なものはシンプルな調理で食べるのが美味しいですから、この場合は茹でるがまさに最良の方法と言えるでしょうか。それに冷えた白ワイン。幸せな時間ですね。(少なくとも私はそれを幸せと呼びますが、如何でしょうか。)ところでBAYER社のGEFFERを食事の前に飲むといいとのことですが、この薬、イタリアに売ってますか。ネットで調べたのですが出てこないんですよ。良いと言われるものはとりあえず試してみたいので、もう一度調べなおしてみます。

ああ、トスカーナのどこまでも続くぶどう畑。近いうちに車を走らせて見に行きたいと思います。サンジさんも素敵な一日をお過ごしください。

2014/08/12 (Tue) 23:10 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。さやいんげんを噛んだらきゅきゅする、と言うことに同感いただけてうれしいです。これを言うと誰もが笑って、そうかなあ、と首を傾げるのですよ。私の感覚が変なのかと少々自身が無かったのですよ。私と舅の相性は全く最悪でした。私が全然負けずに言い返すのが舅にはまた気に食わなかったようですが、悪い人ではありませんでした。最後の数年間は何時も私の味方でした。今はもういなくて、本当に残念。一緒にさやいんげんを食べることが出来るのにね。

2014/08/12 (Tue) 23:16 | yspringmind #- | URL | 編集

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