土曜日のこと

DSC_0010 small


夜中に目が覚めたのは激しい雨音のせいだった。暑い晩だったので居間とキッチンの大窓を大きく開け放ったままだったのを咄嗟に思い出して飛び起きた。案の定、雨は中に吹き込んでいて床が濡れていたが、私がそんなことにお構いなしだったのは稲光のせいだった。それは妙に明るい夜中だった。其れと言うのも雷があちらでもこちらでも同時に交互に光り続け、それはスペクタクルショーにも似た、興奮すべき情景だった。空を眺めているうちに、此れは何か大変なことが起こる前兆なのではないかと胸騒ぎを感じ始めた私は急に怖くなって、ベッドに戻った。大きな雷音と異様な光から逃げるように、私はシーツを目深に被って目を閉じた。面白いことに相棒は寝息を立てていた。外の様子などお構いなしに。よほど疲れているのか、無神経なのか。しかし、大きな地震に目を覚ますこともなく寝入っていた私がそんなことを言うのは筋違いというものだ。

朝目を覚ますと素晴らしい快晴だった。大雨に清められた空気のせいで太陽の光が強く感じられた。それにしても空気は冷たく、まるで高原に出も来たような錯覚に陥りそうな朝であった。今日は午後に予定があるので朝のうちに楽しんでおくのが得策だった。私は簡単に身支度をして家を出た。旧市街はこの気持ちの良い午前を楽しむ人で賑わっていたが、ちょっと道をそれると誰ひとり居ない。そんなところが実にボローニャらしいと思った。私は散策を楽しみながら、実は探していたのである。白いコットンのブラウス。レース地で作られた、又はレースを縫い付けたような、着やすくて涼しくて素敵なものを探していた。探し物をしている時は見つからないと言うけれど、2時間も歩き回ったのに探し当てることが出来なかった。いや残念。そう思いながらも、此れでよかったようにも思える。あと少しすれば夏のサルディが始まるのだから。サルディを目前にして買い物するなんてありえないのだ。疲れはじめた足。最近は2時間も歩くとすぐに疲れてしまう。もっと歩きたいと思いながらも、午後の用事を思い出してちょうど来たバスに乗って家路についた。
午後の用事。とは言っても手の焼けるものではない。それどころか友人たちの赤ん坊の洗礼式なので、喜ばしい用事だった。ボローニャ郊外の、もう直ぐフェッラーラ県という辺りに暮らす友人たち。家の近所の小さな教会で家族親族、親しい友人が集まって祝った。そんなお祝いに呼んで貰えたのは光栄で、幸運でもあった。家に戻って来たのはもうすぐ21時という頃だった。土曜日の晩なのに妙に静かだった。思うにそれは今晩のイタリア、イギリス戦サッカーが原因らしかった。イタリア人は昔のようにサッカーに関して楽観的ではなくなった。昔のイタリアとは違う。決勝トーナメントに行けるだろうか。そんな不安を抱くようになり、ゲームの前は妙に静まり返るのだ。

ああ、ゲームが始まった。真夜中というのに誰もがテレビにかじりついて興奮する土曜日の夜。良い眠りに着けるかどうかの瀬戸際なのである。


人気ブログランキングへ 

コメント

こんにちは。はじめまして。
少し前にはじめてお邪魔し、少しずつ前にさかのぼって読んでいます。

写真は大半がボローニャの街ですよね?色が本当にきれいで、見ていてとても楽しいです。わたしは北米在住で、自分が住んでいる街を美しい街だなと思うことも少なからずあるのですが(主に夏、笑)、ボローニャの写真を見ていると、わたしが住む街ではまず目にすることのない色ばかりで目を奪われます。
鮮やかな色の壁、微妙な発色の生地、などなど、こんな微妙な色あいがあることを思い出させてもらったと言っても過言ではないほどです。そしてこんな色に囲まれて毎日暮らしていれば、そりゃあセンスも磨かれるよなあと思ったり。北米の特に西海岸はとてもカジュアルなのです。

ワインの立ち飲みができる食料品店、焼き栗をはじめとする季節のフルーツを食べさせるお店などもわたしの住む街にはなく、所変われば楽しみ方も変わるものだなあとこれまた興味をそそられます。
喉が痛い時にはジェラートなんですね。わたしもジェラートは大好きなので、いいことを聞きました、笑。

ところで今日はイタリアが勝ちましたね。うちの夫はイギリス出身なのでくやしがっていましたが、今日はイタリアが強かったと認めていました。しばらくはワールドカップでみんなやきもきですね。

2014/06/15 (Sun) 08:53 | mk #- | URL | 編集
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2014/06/15 (Sun) 11:13 | # | | 編集
Re: タイトルなし

mkさん、はじめまして。文章が長くて読むのが大変だと言われる私のブログを少しずつ前にさかのぼって読んでくださっているようで、ありがとうございます。写真の90%以上はボローニャの写真です。私という人はあまりボローニャから出る機会が無いので、必然的にそんな具合になっています。私はその昔サンフランシスコに暮らしていましたから、mkさんの言わんとしていることが分かるような気がします。というのも私がボローニャに初めて来た時、多少なりとも新鮮なショックを受けたからです。色の洪水と感じたように覚えています。そしてイタリア人たちに何故もっと色物を身に着けないのかと訊かれたのも覚えています。彼らの配色センスは実に絶妙で、関心の連続でした。
それでワインの立ち飲みができる食料品店は本当に私好みで、今ではこれ無しでは生活がつまらなくなってしまう程なのです。そして焼き栗とスイカやメロン。この店の存在には初めは全く驚きでした。何という田舎くささ。でも考えてみたら人間味溢れていて楽しいものです。今ではこれが楽しくてなりません。
ご主人はイギリス出身なんですね。私は昨夜のイタリアとイギリスは対等の対等、どちらが勝利を収めても満足でした。私の相棒はイギリスのスピーディな動きに、あの強烈なゴールに、声を上げるのも忘れて固まっていましたよ。敵チームなのに、すごいなあと一体何度感嘆の声を上げていたことやら。
これからもお付き合いお願いします。

2014/06/15 (Sun) 19:25 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

鍵コメさん、はじめまして。愛読してくださっているとのこと、ありがとうございます。
私は知的でも素敵でもないのですが、しかしそうでありたいと願ってやみません。そう願っていれば、いつか素敵な女性になれるに違いありません。と、信じて。
そちらでも雷と雨が激しかったんですね。昨日あった沢山の人達と、あの夜中の様子の凄さ、怖さで話の花が咲きましたが、何だか妙な天気だと思いませんか。夏はやはり、空が晴れて明るいのがいいですね。雨が降っては散策も楽しめませんから。素適なところに暮らしているようで、羨ましい次第です。どうぞ散策を堪能してくださいね。
これからもお付き合いお願いします。

2014/06/15 (Sun) 19:35 | yspringmind #- | URL | 編集

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する