外に出掛けよう

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不安定なこの時期は気をつけねばならない。例えば今日のように晴天だけど、一日中冷たい風が吹く日など。こんなに晴天だからと半袖姿でテラスに出てみたら、驚くほど涼しかった。周囲を眺めてみれば近所の元気な女の子ですら長袖シャツを着ているではないか。彼女は4月の声を聞いた途端に夏のような軽装で外を歩いていたというのに。それでは、と長袖シャツに気に入りのスカーフを首に巻いて外に出た。

行先は旧市街。だけどなんとなく気乗りがしないのは朝から体調がよくないせいだ。それは季節の変わり目によくあることで、熱っぽくて酷く疲れているような感じ。かと言ってどこが悪い訳でもない。こういう時は外に出掛けて気分転換するのが良い。私は自分を元気づけて外に出てみたのだ。少し歩いてみたらどうだろう。気に入りのカフェでカップチーノでも頂いてみたらどうだろう。家の中でぐずぐずしているよりはずっとポジティヴでよいだろうと思って。一年振りくらいに、ある店に立ち寄った。それは7つの教会群から直ぐ其処に在る小さな店だ。私より年上の、髪の長い女性が経営している店で、私は一頃この店に足繁く通っていた。もっともそのうちの半分は単に除くだけの見物客としてだけど、そんなことを繰り返しているうちに店主が顔を覚えてくれて、街中を歩いていても向こうから声を掛けてくれるようになった。この店に置かれている衣服にしてもスカーフにしても、面白いものが多い。遊び心というのだろうか、幾つになっても自分を魅力的に見せることを忘れてはいけないわよ、と言わんばかりのものが多かった。シンプルなものが好きな私には店に並ぶ柄物の衣服がショッキングであったが、店主と話をしているうちに彼女のそんな感覚に同感して、好むようになった。今日は店主は留守で、何時も居ない女性が店の奥に居た。素適な柄のドレスを見つけた。これはボローニャにひとつしかないに違いない。それからはっとするような明るい緑のスカーフ。半袖のブラウス。どれもこれも魅力的だったが、そのうち立っているのすら辛くなり、出直すことにした。大して歩いても居ないのに。どうやら今日は本当に体調がよくないらしい。気分は明るいが体がついてこないというのは残念なことだ。しかし其れもまた、無理をすればつまらないことになるので退散することにした。
家の近くの停留所でバスを降りた。偶然にも相棒と遭遇して、一緒に家まで歩こうかということになった。と、近くに黄色い車が妙な止まり方をしていた。ふと見ると見慣れた顔があった。この界隈に住む、技術専門学校か何かの教師をしている男性だ。いつも髪がぼうぼうで、飼っている犬の毛もぼうぼうで、似た者同士ということでこの辺りでは有名だった。彼は相棒を見ると嬉しそうな表情をして、ちょっと来てくれよ、というように手で合図した。訊いてみれば車が動かなくなってしまったらしかったが、それは彼の車ではなく、通りがかりの女性の車らしかった。そうして黄色い車の中から出てきたのは長い巻き毛の魅力的な若い女性だった。彼の顔には、どうだ、こんな女性を助けないわけにはいかないだろう、と書かれてあった。私が見る限り、相棒の顔にも、そうだな、助けないわけにはいかないだろう、と書かれてあったように思う。彼と相棒は車の後ろを押し始め、果たして車のエンジンがかかり、女性は沢山の礼を言って去って行った。いい年したふたりの男性は車など押して疲れたらしいが、魅力的な女性に礼を言われて大変満足そうであった。ふたりの気分はスパークリングワインのようだったに違いなく、肩を組んでバールの中に消えて行った。冷たいものでも飲むに違いなかったが、妻は路上に残されてほんの少し寂しかった。いや、なに。どちらにしろ酷く疲れていたのだ。家に帰って休むのが得策だ。

今夜は美しい三日月が見えた。風が吹いて外気が冷たい分だけシャープに見えた。5月はこれで終わり。案外いい5月だった。


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