上昇気流

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2日前から上昇気流に乗っているらしいボローニャ。今日は、半袖姿がちょうどよい、と思う一日だった。旧市街が異常に混み合っていたのは月に一度の骨董品市のせい。それにしても旅行者が多くて驚いた。それも20人ほどのグループ。幾度そんな人たちとすれ違ったことか。10年前だったらばそんな人たちを見かけることすら珍しかったと言うのに。噴水の水飛沫が、水の滴る音が気持ちの良い土曜日。

連なる店のショーをウィンドウに、母の日に向けて本日のみ20%の割引有、とのカードが張られているのを幾度も見た。そうか、明日は母の日か、と思いながら歩いていたら、エルメスの店先にふたりの女性がウィンドウを覗き込んでいるのが目に入った。2人は少し違いの姉妹らしく、よく似ていた。どちらも60歳になっているだろうと思われるが、身綺麗で姿勢が良いので年齢をあまり感じさせない。お母さんはエルメスが好きだから、やはり贈り物はエルメスのスカーフにしましょう。そうね、それなら大袈裟過ぎなくていいかもしれないわね。彼女たちはそんなことを話していたのだ。そうして彼女たちはウィンドウの中にあるエメラルドグリーンが美しい、新しい図柄とみられる其れを指さしたり、それとも赤い縁取りでシマウマの柄の斬新なものを指さしたりして楽しそうに物色し始めた。彼女たちの母親は恐らくすでに80歳を超えているに違いなく、そんな母親がそんな明るい色や斬新な柄のスカーフを首に巻いて喜ぶ様子を想像したら、何だかとても嬉しくなった。そうしている間に姉妹は店の中に吸い込まれていき、店員と仲良く話し始めた。どうやらこの店の常連客らしい。恐らく彼女たちの母親も、常連さんなのだろう。

そうしているうちに、自分の母親のことを思い出した。母は昔からお洒落だった。私は母の箪笥の中にあったシルクのスカーフが大好きだった。一番好きだったのは春用の黄色やオレンジが美しい薄いシルクのもの。典型的な70年代の図柄だった。私が子供だった頃、母が外に出掛けるとこっそり箪笥を開けてスカーフを首に巻いてみたものだ。肌触りがさわやかなスカーフ。自分の首に巻いても少しも素敵に見えなかったが、母が其れをしていると優雅で美しく見えた。それだから、そのスカーフは私の憧れだった。私がアメリカに暮らし始めた頃、母に思い切って訊いてみた。あのスカーフを頂戴な。母はまさかそんな古いスカーフを求められるとは夢にも思っていなかったから、一瞬驚き、しかし私がそのスカーフに憧れていたことを知ると酷く喜んだ。そうしてスカーフは私の手に渡り、春になるとそれを首に巻くのが一種の儀式なのである。そういえば、今年はまだしていなかったっけ。春らしい春を飛び越えて一気に夏に入ろうとしているが、本当の夏がやって来る前にあのスカーフをして出掛けよう。私が今もこのスカーフを使っていると知ったらば、母は大変驚くだろう。それとももう、このスカーフのことは忘れてしまっただろうか。

上昇気流に乗ったボローニャから、遥か遠くに暮らす母を想う。何時までも元気で居てほしいと思う。


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コメント

噴水の光が気持ち良さそうですね。
若かりし頃の母親の身綺麗さというか美しさは子供ながらにうれしいですよね。いつの間にか歳は誰でも平等にとるけれど。
スカーフ大事にされてるのが、とても伝わってきます。幸せなスカーフですね。

2014/05/11 (Sun) 14:21 | つばめ #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。噴水を覗き込んでみたら、水がきらきらしているのに気がつきました。少し前までは寒くて近寄るのも嫌だったのに。
母親が綺麗なのは子供心に嬉しかったです。身綺麗にしている母をみながら、自分もこんな風になりたいと思ったものです。あれから何十年もの歳月が過ぎました。母だけでなく、子供だった私にしても。歳は誰でも平等にとるって本当ですね。
母からもらったスカーフは、今までも、そしてこれからも私の宝物です。

2014/05/11 (Sun) 17:22 | yspringmind #- | URL | 編集

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