金の滴

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雨が上がって空気が乾いた途端、綿毛が舞い始めた。本当ならばもっと早く舞っていた筈だが、雨降り続きで遅れ遅れになっていたのだろう。車の窓を開け放して走ろうものなら、綿毛が中に舞い込んできて大変なことになる。だからどんなに暑苦しくても窓は閉めておかねばならなかった。上等な晴天、と言うとぴったりの日曜日。綿毛は嫌いだけれど、それも晴天の証拠と思えばよい。何事も受け取りかた次第でポジティブなものに変身する。

昨日友人と話をした。久しぶりだった。アメリカで知り合った彼女とは、友達歴こそ長いけれど一緒に過ごした時間は酷く短い。私達はいつも遠く離れながら、昔は手紙を通じて、その後はメールで、そしてここ数年はSkypeなどというテクノロジーものを介して付き合っているのである。それにしてもこのテクノロジーは大したものだ。昔は国際電話と言えばお金がかかるのが当たり前で、長々と話をすることは許されなかったと言うのに、無料でしかも相手の顔を見ながら話をすることが出来るのだから。こんな時代がやって来るとは、いったい誰が想像していただろう。そういうことを改めて口にする私を周囲の人々は時代遅れと言って笑うけれど、それでもこの便利さには脱帽なのだ。彼女は長く暮らしたブダペストをここ数年離れて異国で暮らしている。私は彼女を通じてブダペストの魅力を発見したので、ブダペストを訪れる時には彼女にも存在してほしい、という気持ちが心の根底に潜んでいるらしい。だから彼女が不在になってからというもの、ブダペストには一度も足を運んでいない。私達は何処にもいるような普通の人間だから、楽しいことばかりでなく悲しいこともつまらないことも通過している。毎日の、普通の生活の中で遭遇するあれこれを話のついでに報告するが、それで私達がしんみりすることは殆ど無い。それどころか、あははと腹の底から笑ってつまらないことも腹立たしかったことも笑い話と化して面白おかしく話し終えることが出来る。それが私達の得技なのだ。昨日も私達は散々笑ってそろそろ終わりにしようかという頃に、久しぶりにブダペストに行きたい話を持ち出してみた。すると彼女がそんな話を待っていたと言うように、9月に少し帰ると言うではないか。9月、まさに私が考えていた時期で、あっという間に話がまとまった。9月にブダペストで。それは願ってもない話で、私の気持ちが上昇気流に乗ったこと間違えなしだった。その前に長い夏休みが存在するが今年に限っては何の予定もない私は、何の計画も立てずにいて、何となく冴えない気分だったから、ブダペストの話は空から降ってきた金の滴みたいなものだった。早くも涼しい風が吹き始める9月のブダペストを友人と肩を並べて歩くこと。気に入りのカフェに立ち寄り、気に入りのレストランで食事をして。時にはひとりで路地を歩き、居心地の良い本屋で写真集を探そう。知人たちにも声を掛けてみようか。ワインの一杯くらい、一緒に楽しめるかもしれない。相棒にそんな話をしてみると、どうやら彼も乗り気なようだ。車での長旅になるのだろうが、それもたまには良いだろう。少し先の旅行の計画。こんなものが私には必要だった。

今週は沢山の予定がある。どれもこれも大切なことばかり。明日も、その翌日も、その後も。息が詰まってしまいそう。でも、金の滴がある。我ながら単純であると笑ってしまうが、単純な性格もたまにはよいものだ。暫くの間、私は金の滴を持ち出して様々な面倒なことを乗り越えられるに違いない。


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コメント

綿毛・・・
7~8年まえまで月の半分をイタリアで仕事をしていた夫は
その綿毛に やられていたそうです
こちらでは、目には見えない花粉と戦っているようですが

金の糧

私も先日久しぶりに会った友人から 近くの外国旅行へ行こうと
誘われました・・・
三日以上休むことができない今の職場のことが脳裏に浮かび

それでは、新幹線で日帰りができ、美味しいものを食べ、
日ごろの事など忘れてたのしもう~

と 決まり 別れました

この歳にして いまだ ひつまぶしとやらを食べたことがなく
今から楽しみにして
仕事と家事に追われております

ブタペスト
行ってみたいです

2014/05/06 (Tue) 07:17 | 春風 #jgTtIlIo | URL | 編集
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2014/05/08 (Thu) 16:00 | # | | 編集
Re: タイトルなし

春風さん、こんにちは。返事が遅くなってごめんなさい。
ご主人は7、8年前まで月の半分をイタリアで仕事をされていたのですか。それではこの綿毛はご存知でしょう。これは私の大敵で、うっかり喉に入ると大変なことにもなるのですよ。確かに日本のスギ花粉も強敵ですね。
お友達と新幹線で日帰りの旅。素敵ではないですか。私も今度帰省したらばそんな旅をしてみようかと思っているのですが、さて実現するでしょうか。ブダペストはまだ訪れたことが無いようですね。どうぞいつか行ってみてください。私がこだわる理由を分かってもらえることでしょう。

2014/05/10 (Sat) 00:03 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: 金の滴

鍵コメさん、こんにちは。初めまして。私はその映画の題名を知っているだけで見たことはないのですが、そうですか、似たような天井画がでてきますか。これはボローニャ旧市街の、カブール広場に面した建物の回廊の壁画です。回廊は一般市民が歩ける場所なので、特別な場所と言う訳ではありません。ま、確かに贅沢ですね、こんな天井画の下を歩けるのは。私はこの天井画の下でバスを待つことが多いのですよ。これからもお付き合いお願いします。

2014/05/10 (Sat) 00:08 | yspringmind #- | URL | 編集
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2014/05/10 (Sat) 03:34 | # | | 編集
Re: 金の滴

鍵コメさん、こんにちは。映画は見ていませんが、この映画を撮ったホテルは知っています。以前の職場がそのホテルの背後にありましたから、中を見せて貰ったこともあるのですが、確かに眺めは良かったです。急にこの映画を見たくなってきましたよ。

2014/05/10 (Sat) 23:20 | yspringmind #- | URL | 編集

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