寒い日の夕方には赤ワイン

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祝日と土曜日に挟まれた今日5月2日は、働いている人がとても少ない。私はそのごく少数派で、しかし元気に仕事へ行こうと思えるこの健康を心から嬉しく思った。それにしても雨。恐らくそんなことになるだろうとは誰もが想像していたけれど、しかしこんなに雨が降って肌寒い一日になろうとは。5月にしてはしっかり着込んで家を出たが、それでも十分とは言えず、幾度寒いを連呼しただろう。その上、家に携帯電話を忘れてきたので、何となく居心地が悪い。心細いと言ってもよかった。自称テクノロジーものに疎い私が携帯電話を忘れたごときで此れほど心細くなるとは、と全くおかしな話だった。10年前までは携帯電話など無くてもよいと言っていたのに。そして携帯不電話を持つようになってからも、使うことはあまりなく、鞄の中に放り込みっぱなしだったのに。兎に角そんな一日を終えて職場の外に出た時、雨は止むこと知らずで外はますます冷え込んでいた。私の頭から爪先までを雨に湿った冷たい空気がすっぽり包んで、ややもすれば風邪を引いてしまいそうだった。だからバスに乗って旧市街へ行くと、まっすぐフランス屋に飛び込んだ。

此処に立ち寄ったのは3か月振りだ。酷い風邪を引いて寝込んだり薬を服用していたりで、ワインを頂けなかっただけでなく、ワインを頂く元気もなかったからだ。久しぶりにきたこの店の中は、随分と変貌を遂げ、大きな鳥かごの飾りや新しい種類のワインが、私の目を楽しませてくれた。シニョーラ、お久しぶり。店主がそう言いながら注文を取る。とても寒くて疲れているから飛び切り味わい深い赤、を頼んだ。すると大変自慢げに奥からボトルを取り出してきて、それではこれが良いでしょう、と言いながらグラスになみなみと注いでくれた。注文してから5か月も待たねばならなかった特別のワインだそうだ。店主の願いが叶って一昨日やっと店に届いたと教えてくれた。深い赤。グラスを鼻孔に近づけてみると、魅力的な匂いがした。何時だか私の知人が言っていた。ワインとは、色を楽しみ、鼻で匂いを楽しむ。そしてようやく口の中で転がして楽しむことが出来るのだ、と。私はそれに耳を傾けながら、全くその通りだと思った。そして喉を湿らせながら奥深い部分に落ちていく。今日注文したワインは、まさにそんなワインだった。それにしても深い。これ、それにしても強いわね、と言ってみると店主はそんなことないと肩を持ち上げる。が、ボトルを見ると14,5度。空きっ腹には刺激が強いが、おかげで体中が温まった。勘定を済ます前にチーズを買った。私はこの店の或るチーズが大好きで、店に立ち寄るたびに買い求める。色んな所で探してみたが、此れが手に入るのは今のところこの店しかないようだ。これこれ。冷蔵庫に入れておくと、翌日の夕方遅くに帰ってくると何故が半分以上が誰かさん達の胃袋の中に納まってしまう。それは相棒と彼の友人で、私が返ってくる一瞬前に、うちで赤ワインを開けるついでにこれを食べてしまうのだ。それともこのチーズがあまりに美味しいので、ついでに赤ワインを頂いてしまうのかもしれなかった。どちらにしても妻が帰って来る前に、友人と家で食前酒とは良い習慣だ。もう少し待っていてくれたら一緒に楽しめるというのに。そんなことを店主に話すと、店にいた人達が皆笑った。シニョーラ、隠しておかなくてはいけませんよ! シニョーラ、張り紙をしておかなくてはいけませんよ! 次から次へと案が浮かぶ中、私は勘定を済ませて店を出た。雨が止んでいた。

明日は酷い雨になるらしい。でも、と願う。雨はもう十分。太陽の光が必要なのだ。私にも彼にも彼女にも、それから街の緑や庭の薔薇の花にも。神様、太陽の恵みを与えてください。


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コメント

おいしそうなチーズとワインですね。その場にいる皆さんで気さくに話せるのも楽しそう。雨がよく降るんですね。

2014/05/03 (Sat) 14:00 | つばめ #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。ええ、本当に美味しいんです。私は此処にはいつも一人で立ち寄るのですが、大抵お喋り相手がいるのです。顔見知りでも何でもないけれど、だけどだからこそ気軽に話が出来て楽しい。と私は思うのですよ。
それにしても雨ばかりです。もうそろそろ晴天の毎日になっても良いのではないでしょうか。

2014/05/03 (Sat) 23:06 | yspringmind #- | URL | 編集

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