香りの良い軽めの白

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朝方大きな雷の音で目が覚めた。それは本当に大きな音で、あのボローニャ辺りで起きた大きな地震があった時でさえ目を覚まさなかった私を、揺り起こすような大きな音であった。はっと目が覚めた次の瞬間に耳にしたのは激しい雨の音だった。明け方前だったらしく外は薄暗かった。窓の外を覗いてみたら見たこともないような激しい雨が降っていた。そうだった、今日は雨の予報だった。そんなことを思いながらもう一度ベッドの中に潜り込み、折角の土曜日だけど今日は一日家でごろごろしようなどと思いながら、もう一度深い眠りに落ちて行った。次に目が覚めたのはいつもの時間より少し遅い頃だった。驚いたことに窓から太陽の陽が射しこんでいたことだ。あの時目を覚まさなかった相棒に、すごい雨が降っていたと言ったところで信じて貰えそうにないような快晴。どちらにしても相棒は既に仕事で外に出ていたので、雨ぼことを話す機会はなかったけれど。

昨日に引き続く素晴らしい晴天に気をよくして、朝食を済ませると家を出た。今日は店という店が開いていて、人混みも昨日のの3倍だ。閑散とした街も好きだけど、街は賑わっていたほうが良い。と思うようになったのはつい最近だ。好きだった店がひとつふたつと閉まっていくなかで、私はそんな風に考えを変えていったのだ。
何時も入らない店に立ち寄ってみた。此処には昨夏のサルディ以来だった。良い品揃えで人気があるが、私にはちょっと手が出ない。そんな店なのだ。そこで細身のパンツを購入した。足首が見えるような丈の。来週末の友人のところでのお祝いごとの為に購入したが、家を購入してからというもの、こんなことでもなければ買い物などできない。ひと目見て気に入った其れを迷うことなく手に入れることの、なんと気持ちの良いこと。勿論これが暫くの間の初めで最後の買い物なのだと自分に言い聞かせながら。
そのあと私は坂を下って食料品市場界隈へと吸い込まれていった。魚屋は今日も繁盛。すごい魚の匂いだけれど、魚屋なのだから文句を言うべきではないだろう。その角を度を曲がって青果店が立ち並ぶ路地に入ると、気がついた。あれ、これは何だろう。ガラスにはMERCATO DI MEZZOと書かれていて、中を覗いてみると大変な賑わいようであった。それはその食料品市場だった建物で、随分前に閉じられて、市民を随分と残念がらせたものである。此処にはよく買いに来たのだ。熟れたトマトを袋に一杯、シチリアのオレンジやプーリア州辺りで育つチーマ・ディ・ラパとか。便利な立地だった分だけ、此処が閉まったのは残念だった。もっとも路地に面した小さな店はそのまま残り、便利であることにはかわりなかったけれど。何時だったか友人が、この建物をコープが買い取ったと教えてくれた。それを別の友人に知らせると、何処も彼処もがコープの配下になってしまうと言って酷く憤慨していたのが印象的だった。さて、それで中に入ってみると・・・それは大変な繁盛ぶりであった。市場というよりはフードコートに似たような感じで、その場で食することもできれば、食材を買って帰ることもできると言った具合だった。昼時ということもあって、2階も含めてテーブルというテーブルは既に埋まっていた。その途中でグラスワインを出すカウンターを見つけた。カウンター席が幾つかあって、そこで頂くことが出来る。すきっ腹にどうかとは思ったが、興味が湧いて注文することにした。軽めの白。スパークリングが良いのだけど。銘柄やワインの名前を言って注文する人が普通だろうが、私はいつもこんな風に注文する。そうすると店の人がいろいろ提案してくれて、私はそれに耳を傾けるのが好きだからだ。薦めてくれたワインは香りの良い軽めの白だった。これは良いとカウンター席についてワインを楽しんでいると、背後で声がした。一席なら空いているけど、と振り向いてみると私と同じくらいの年齢の女性が立っていた。どうやら連れが居るらしかった。聞いてみれば彼女とご主人のふたり連れだと言う。私の横が空席だった。それなら私の席をどうぞ、私は立ち飲みでも構わないのよ、と席を譲ると彼らは酷く喜んで、しかし私に立ち飲みさせるなんてとんでもないと言って、ご主人が店内を走り回って椅子をひとつ抱えて戻ってきた。そしてカウンターの隅に椅子を置くと、シニョーラ、さあどうぞ、と席を勧め、彼らは仲良く並んで席に着いた。彼らはグラスワインをふたつ注文すると、私の方をくるりと振り向いて、Alla sua salute! (あなたの健康に乾杯)と言ってグラスをひょいと持ち上げた。私も一緒にグラスを持ち上げて乾杯した。飛び切りの笑顔を湛えて。これはイタリアならではのこと。ボローニャなんて規模の小さい町ならではのことである。時々ボローニャの閉塞感がどうしようもなく息苦しくなるが、こんなこともあると思えば悪くない。暫くワインを飲んでいなかったので心配していたが、特に気分が悪くなることもなく、おお、再びワインを楽しめるようになってきたのか、と嬉しくなった。

2週間前にオープンしたこの店の存在をよく言う人も居るならば、悪く評価する人もいるに違いない。でも。こんな店があってもよい。そうしてボローニャが少しずつ良い変化を遂げていけばよい。夕方の寄り道にぴったりの店、見つけた。


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