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まるで空までが聞いていたかのように復活祭の今日は雨が止み、俄かに温かい日差しが街を包んで穏やかな一日となった。きっと今年も復活祭は雨だから、と皆が不満を述べているのが聞こえたのだろう。兎に角、嬉しいではないか。空に感謝。料理好きの相棒が朝から腕を振るって昼食を準備した。自分が一番料理がうまいと思っていて、他の人に手をださせない。以前は妻の領域を犯す油断のならぬやつと思っていたが、そういう人には料理させるのが一番と何時の頃からかそう考えるようになり、そうしたらつまらぬことで衝突しなくなるようになった。それに私の義務も減った。私はその合間に他に山ほどある仕事やしたいことをすることが出来るのだから、有難い話である。相棒はついに私が相棒の料理の腕に観念したものと思い込んでいるようだが、まあ、そういうことにしておこう。

そういえば復活祭に向けてこの祝日にふさわしい陶器の置物、例えば兎などを居間に飾ろうと思っていたのに、うっかり忘れてしまった。次に移る家のことであれこれ時間を費やしていたし、体調不良で寝込んでいたし。理由は幾つも見つかるけれど、要するに私はうっかり忘れてしまったのだ。ああ、残念。ところで私が何故そんな陶器の置物を、と考えるようになったかと言えば、それは少し前に旧市街の理念の店先で、クリーム色の兎の置物を見つけたからである。昔からここに居座るこの店はなかなか趣味が宜しくて、私は店の前を歩く時は大抵歩みを止めて鑑賞するのだけど、決して安易に手が出ない値段がつけられているので文字通り鑑賞するだけである。モダンなものはあまりなく、古いボローニャ人たちが好みそうなものばかり。私はその枠には入らないにしても、そういうものをずっと眺めて生活してきたこともあり、違和感を感じるどころか大変好ましくさえ感じるのだ。ふさふさと毛足の長い子の兎は欧羅巴の種類だろうか。顔はくちゃくちゃしているけれどなかなか良い。と思いながら眺めていたら、美しいものをさりげなく身に着ける私より一瞬年上くらいの女性が横に立った。彼女は携帯電話で友人と話をしているらしく、話しながら私が眺めていた其の店先を覗き込んだ。彼女は上機嫌で、イタリア人らしく大きな声でこう言った。ええ、そうなのよ。昨日帰ってきたところなの。そう言って笑った。聞き耳を立てていると、彼女が上機嫌な理由が分かった。彼女は何かの懸賞で旅行が当たったらしく、友人だか夫だか、兎に角もうひとりを携えて2週間のモロッコ旅行に行ってきたのだ。ええ、それは素敵な2週間だったのよ、と焼けた肌を空いた手でなでながら言った。ほほう、懸賞で2週間のモロッコ旅行が当たったとは、なんという幸運。幸運の女神にウィンクされた人が存在することを知るのは良いことだ。いつか私にもそんなことが起きるかもしれない、と。ところですでに幸運な彼女は経済的にも幸運らしく、すたすたと店の中に入っていった。やはりこの店はボローニャ人が好むのだ。それを確認すると私は何か仕事を終えたような気分になっちて店の前から離れたのだ。あれからすっかり忘れてしまったのだ。困ったものである。次の復活祭には、きっと。私はそう思いなおして菫色の手帳に‟兎”と書き込んだ。

復活祭。この春の良い季節を、多くの人が満喫することを心から願います。Buona Pasqua.


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コメント

なんとも味わいのある兎ですね。耳がちょっと傾いてわいい。

2014/04/21 (Mon) 11:02 | つばめ #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、実に欧羅巴の兎って感じがしませんか。それもフランスの。ヴェルサイユ宮殿か何処かの草原に潜んでいそうな。ボローニャ辺りの兎でないことは確かですよ。ふふふ。

2014/04/21 (Mon) 17:57 | yspringmind #- | URL | 編集

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