複雑な心境の金曜日

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年をとると心が頑なになるらしい。イタリアに暮らしてもうじき19年が経とうとしている最近は外国人を珍しげに眺める目や多少なりの偏見にも慣れてきたし、しかし大都市でないボローニャでも外国人が珍しくなくなりつつあり近頃は、随分と肩の力を抜いて暮らせるようになった。暮らし始めたばかりの頃は、一歩でも外に出る時には心を武装しなければならなかった。さもなければ偏見や物珍しい動物でも見るような目に、私はズタズタにされてしまうからだった。それでなくても背の小さい私だから、見下されないようにと胸を張って相手の目をしっかり見ながら話をする努力をしたものだ。そういう努力は案外実りがあって、そのうち見下したり珍しげに見る人は居なくなったが、それらは私のごく普通の習慣となり、そこいらのイタリア人より口が達者で小さいくせに堂々としていると、友人たちにからかわれるようになった。

今日、そんなことを思い出したのは老人のせいだ。私は酷く滅入っている。直に80歳になろうとしている、若い頃はマーロン・ブランドに似ているということでマーロンと呼ばれていた老人だ。見るからにとても頑なな印象のある老人だった。酷く外国人に偏見を持っているらしく、こちらが挨拶をしても挨拶のひとつ返すでもない。今日、私はそんな人から公証人を介して小さな家(アパートメント)を買った。私はそれまで売主を知らなかったのだ。この件に関しては相棒が走り回っていたし、不動産屋が居たし、売主は年老いているからと言う理由で甥っ子が売主の代理人をしていたからだ。それで売買契約をする今朝、公証人のところで本人に初めて会った。マーロンと呼ばれているが特にマーロンの面影はなく、ゴッドファーザーと言えばそんな感じはなくもなかったが、会った瞬間に嫌な予感がした。それが外国人嫌いとまでは察知できなかったが、数秒後に挨拶が返ってこないことで確信した。勿論、握手もしない。今どき外国人をここまで嫌う人は少なく、私は完全にノックアウトされてしまった。周囲はこの状況に敏感に気がついて、買い手の私が腹を立てて、ええい、止めた! と言いださないかと心配したようだった。しかし私も立派な大人になったので、このくらいのことはぐっと堪えることが出来ると言うものだ。老人は心が化石化してしまったのだろうと思ってさらりと流したが、実はすっかり落ち込んでしまった。19年も前に戻ってしまったような気がして深い深い溜息をつくと、周囲が申し訳なさそうな顔で私を見ていた。こんな人はそう滅多にいるものではない。こんなボローニャだってもう少し人々のメンタリティは開けていて柔軟なのだ。しかし。今回の件に関して私には少し時間が必要らしい。自分の家を手に入れて嬉しい金曜日。だけど外国人に偏見のある老人に会ってがっかりした金曜日。折角の金曜日にケチがついてしまったような気分。まったく複雑な心境の金曜日となった。

明日の土曜日は、そうだ旧市街を散歩しよう。春の空気の中を彷徨ったらば、つまらないことなどじきに忘れてしまうだろう。


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コメント

大変でしたね。
読んでいて少し胸が痛みました。
私はまだメンタルが成熟していないので、そういう人に会ってしまったら暴れてモノを壊してしまいそうです。(というか、昔やったことがあります。)
もう金輪際会うことはないんですよね?
気分転換して、すっきり流してください。

2014/04/11 (Fri) 23:24 | micio #O/XG6wUc | URL | 編集

イギリスの田舎に住んでいるある日本人は、乳母車を押して歩いていても
「中国人帰れ」とビールの空き缶を投げられたりしたとブログに書いていましたが
残念な人間の一面ですね。

私は先月エクアドルのアンデスの町に行ったのですが、
不思議そうな視線にあいました(笑

一見、現地人(樽体系で黒髪)にも、たくさんいる欧米人(白髪多し)にも
マッチしない外見が、不思議がられたのかもしれないですが、
南米では中国人がたいそう嫌われているとのことで
どちらかというとアジア系の顔という点にも理由があったのかもしれないです。

今日は心地よい空気が心に満ちていますように!

2014/04/12 (Sat) 00:12 | るみこ #- | URL | 編集

こんにちは。ysprigmindさんに、あたたかな風が吹きますように。

2014/04/12 (Sat) 16:05 | つばめ #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

micioさん、こんにちは。この件に関しては、案外傷つきましたよ。どんなことがあっても二度と会わない、と相棒に宣言したので何かで会う必要があるときには相棒が何とかしてくれるでしょう。気分転換はしましたが、いやあ、暫く引きずりそうなんですよ。

2014/04/12 (Sat) 22:19 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

るみこさん、こんにちは。こういうことは都会でないところで起こりがちなことなようです。ボローニャが都会でない証拠でしょうか。残念であり、しかしこの時代になってもそんな考えを持つ人が居ることに驚きを隠すことが出来ません。
アンデスの町でもそんなことがあるのですね。そう考えたら、地球のどこにでもありがちなこと、とさらりと流すのが賢いと言うことになるのでしょうね。仲良しのイタリア人女性に昨日のことを話したら、そんな時代遅れの考えの偏った人の存在は忘れるに限ると言っていました。それが得策かもしれませんね。

2014/04/12 (Sat) 22:26 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、 有難うございます。なかなか忘れられませんが、忘れる努力をしてみましょう。そんな人ばかりではないものね。

2014/04/12 (Sat) 22:28 | yspringmind #- | URL | 編集

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