人参のように赤い髪

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心待ちにしていた土曜日は晴天。平日ならば既に家を出て職場についている時間にもそもそとベッドから抜け出す喜び。カーテンの隙間から零れる太陽の光が、何時まで寝ているつもりなのだと私に呼びかけているようだった。ゆっくり朝食をとり、家の中を片付けて、家を出たのはもうじき昼という頃だった。太陽が随分高いところに位置するようになった。冬の、あの斜めから射す太陽ではなく、頭の上から私達を照らす太陽。目的地は旧市街で、しかしいつもの散歩ではない。髪を整えるのが今日の主な計画だった。何週間もしつこい咳と闘ってきた。まだ完治とはいかないけれど、時々起きる発作的咳を除けば、静かに生活ができるようになった、と自負する。勿論友人と美味しいお茶の会を持つにはまだ至らないけれど、ましてやワインを頂きながら愉しいお茶べりなんてこともまだお預けだけど。こんな時間に店に行ったらさぞや混み合っていることだろうと思えば、こんな良い天気の日には皆どこかへ遊びに行きたいらしく、店は思いのほか空いていた。土曜日にこの店が空いているのは稀なので、ツイている、と心の中で呟いた。久しぶりねえ。そうなのよ、悪い風邪を引いてね。私達は言葉を交わし、そしてこんな話をした。私が人参のような赤い髪が好きだという話。本の中の赤毛のアンみたいな赤い髪。そんな赤い髪には緑色のドレスが良く映える。アンは自分の髪の毛を赤すぎると嫌っていたが、大学に入ってからの彼女の親友は、アンの赤い髪を美しいとあんなに褒め称えたではないか。人参のように赤い髪に緑のドレス。それとも緑色の瞳。何て素敵なんでしょう。私はそう話をくくり、店主が全くあなたの言う通りだと頷いた。そのうち客が数人入ってきた。そのひとりはすらりと背の高い女性で美しかった。いや、美しい印象を持つ女性と言ったらよかった。何しろ彼女は私が大好きな人参のような赤い髪で肩に着かない巻き毛だった。そのうえ瞳はエメラルドグリーン。まるでヴォーグ誌に出てくるような女性。私と店主は狂喜した。ところがその客は赤い髪が嫌なので黒く染めてほしいと言う。店主は驚き私を指さしながら客に言った。駄目よ、それはいけないわ。あなたは彼女が憧れる美しい人参のような赤い髪に、それが映える緑色の瞳を持っているのに。黒く染めるなんて、そんなことをしてはいけない。そういわれてはどうしたものかと女性客は考えて、髪を染めるのを止めにした。それでは手入れだけにしましょう、と。私と店主はほっと胸をなでおろし、上手くいかないものだと笑いあった。黒髪にしたがる赤毛の女。赤毛に憧れる黒髪の女。髪の手入れを終えて外に出ると、外気はますます柔らかくなっていた。春の空気。そう決めつけるにはまだ早いかもしれないけれど、このまま春の気候が安定するだろう。街の中心のPiazza Maggioreには沢山の人達が地面に腰を下ろして陽を浴びていた。まるで恋人たちの集会みたいに男女が仲良く腰を下ろす様子を眺めながら、私はその間を縫うように歩いた。

今日で冬時間はお終い。明日の朝目を覚ましたら夏時間が始まっているのを、何か良い知らせのように思いながら、喉を潤わす為にバールへと急いだ。


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コメント

ご無沙汰いたしております。

赤毛の女性ですか、私はまだ目にしたことがないので、羨ましいですね。
いま、9歳の娘が「赤毛のアン」にハマって、四六時中その本を読んでいます。
挙句に、舞台となった場所に行きたい、と言い出しています。

ボローニャで、赤毛の女性に逢えるなら、ボローニャでもいいかな、と思っていますが。

2014/04/05 (Sat) 16:24 | Via Valdossola #P6wRKz4w | URL | 編集
Re: タイトルなし

Via Valdossolaさん、こんにちは。お嬢さんが赤毛のアンに夢中だそうで、私はとても嬉しくなりました。私もまた同じ年頃の頃にアンシリーズを読み続けて、何時かアンが暮らしていたプリンス・エドワード島へ行きたいと夢見たものです。赤毛のアンからアンの青春、アンの結婚とアンの一生を読み続けたら、Via Valdossolaさんにもその気持ちわかってもらえると思うのですが。いやあ、ボローニャも良いけれど、やっぱりプリンス・エドワード島に連れて行ってあげてくださいよ。お父さん株がぐっと上がります。

2014/04/05 (Sat) 17:53 | yspringmind #- | URL | 編集

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