想う

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完全にアウトだった。先週から引き続いて体調は最低だった。何年かに一度こんな風に寝込むことがある。何日経っても少しも回復しないと自分はこの先ずっと病気のままなのかもしれないと気分がすっかり塞いでしまうのだ。体だけでなく心まで弱ってしまっている証拠だった。それは全く残念な瞬間だけど、そんな時に周囲の病気の人たちがどんな気持ちで居るのかにようやく辿り着くことが出来るのである。それから若くして逝ってしまった私の親愛なる女友達、もう何年も前に地上から姿を消した私の父、舅のこと。この数日間私は色んなことを思い出し、そうしては涙がこぼれ、そうしてはまた熱が上がった。全く悪循環だったが、それもまた今の私には必要なことだったのかもしれなかった。自分のことだけでなく周囲を眺める余裕を持つこと。周囲の人を思うこと。私を取り囲む状況や人々に感謝すること。最低の体調を長々と引きずってしまったけれど、それに思いが至ることが出来て良かったと思う。そうして再びいつもの元気な生活に戻ることが出来たなら、そのことにも感謝しよう。

私は猫が嫌いだった。私たち家族は私が思春期を迎える随分前に東京から田舎に引っ越した。いい土地があったから、ということで両親が随分前に購入したその場所に家を建てたからだった。それでなくとも田舎町なのに駅から15分バスに乗って、そして下車すると子供の足で15分も歩かなければならないところに家はあった。そんな具合だったから私たち家族の新しい家は全く大変な場所にあったと言って違いなかった。だいたい周囲には家が数軒しかなくて空き地ばかりだった。新しい家には適当に広い庭があって、それが父と母の喜びだったかもしれない。その証拠に隣りの空き地の持ち主が買わないかと声を掛けてきた時、彼らは考える間も惜しいかのように手に入れることに決めた。そうしてそれなりの広さを獲得すると、日当たりが特別良い場所が菜園になった。彼らにとって人生初の菜園だったらしく、土の手入れや種選び苗選びに勤しんだものだ。兎に角田舎だったので様々な動物が来た。一番驚いたのは雄の雉で、その大きさと言ったら、その美しさと言ったらなかった。野兎も来た。しかし一番頻繁に来たのは猫だった。毎日3匹ほどやってきて畑で遊んでは折角の芽を蹴散らして行ったから母は猫を酷く嫌った。私はそんな母の様子を見ながら育ったから、いつの間にか私も猫が嫌いになってしまった。ところがである。アメリカで相棒と結婚した頃、裏のテラスに猫が来るようになった。まだ子猫で弱っていた。ご近所さんが引っ越した時に置いてきぼりになったらしかった。空腹らしく執拗に泣いて裏の扉を叩いた。ある晩、扉を開けると猫は中に入ってきた。触ってみると柔らかでふわふわした。猫ってこんなに可愛いものだったのかと感動した瞬間だった。最後までうんと言わなかった相棒だったが器に入れた牛乳を舐めながら涙を流す猫の様子を見て気が変わったと言って、私達は猫を家族の一員として招き入れることにしたのだ。そうして一緒に生活してみると猫というのは何と人間的で愛らしい存在なのかと知り、毎日が発見だった。猫が私になついたのは私がご飯を担当しているからで、本当になついたのいは相棒だった。お腹が満たされている時によく分かる。相棒にはすり寄るくせに、私には膝にパンチをしたり脛に絡みついて歩けないようにしたりした。しかしそんなことですら可愛かった。ああ、猫とはなんと素敵な動物なのだろう。私達は友達であり、家族であった。猫は友人と共にアメリカに残り、あれから18年以上経った。猫はもう随分前に天に召された。友人に可愛がって貰って幸せだったはずだ。猫をボローニャに連れてこれなかった私達は、だからあれ以来どんな動物も家族の一員にしていない。自分たちへの罰みたいなものだ。でも、そろそろその罰を終わりにしてもよいだろう。もう、恐らく、何処に移り住むこともないだろうから。連れてこなかった私達を、私達の猫も許してくれているに違いない、と思いながら。

ところで近所の猫は最近どうしているのだろう。もう何か月も見ていない、ような気がするけれど。数週間もすれば外に出てくるのだろうか。やれやれ、やっと暖かくなったと言いながら。でも、私の顔を忘れてしまってはいないだろうかと、少し心配な今日である。


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コメント

日本からこんにちは。4年ぶりに里帰りしています。で、実家に置いてきた猫と戯れる日々。
高齢で持病もあるのでイタリアに連れて来れなかった仔。実家とスカイプすると、必ず画面に割り込んでくる仔です。長年自分は犬派だと思っていたんだけれど、犬みたいに聞き分けが良いくせにしっかり「猫」している彼女に猫の魅力を教わりました。

猫は10歳すぎると猫又になる、なんて言いますよね。
早く尻尾が2本になったりして、おしゃべりをはじめてくれればいいのに、と思います(笑
同居人が増えたら・・きっと毎日がにぎやかになりますね。

2014/03/07 (Fri) 14:14 | erieri #Qi8cNrCA | URL | 編集
Re: タイトルなし

erieriさん、こんにちは。日本に帰省しているんですね。4年ぶりですか。感無量ですね。
私も犬が好きで犬派だと思っていたのですが、いえいえ、猫もまた可愛いものです。ご実家で存分猫さんと遊んでくださいね。
猫は10歳すぎると猫又になるって、そうなんですか。私の猫は16年で天に召されましたがしっぽが2本になったりすることも、お喋りすることもありませんでしたが、人の目を見て話しかけるようなことはありましたよ!だから私達はよくわかり合えていたのだと思うのです。erieriさんの猫さんが人間の言葉を話し始めた日にはどうぞお知らせくださいませ。
日本滞在、堪能してきてくださいね。

2014/03/08 (Sat) 00:47 | yspringmind #- | URL | 編集

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