寒い冬

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冷たい雨が雪になったかと思えば翌日は快晴。空気が冷たい分だけ空が青い。同じ冬でも同じ寒い季節でも、空が青いのと鼠色では気分が随分と違う。もっとも油断はならなくて、毎日小さな傘を鞄の中に備えているけれど。

昨日辺りから体調が好転し始めた。こちらの方も油断は禁物だけど、ようやく旧市街の食料品界隈で買い物をする元気が出た。昨日はとんでもなく寒い夕方だった。足早に夕食の為の買い物を済ませてバスの停留所へと歩いていたところ、ガラス越しに店主と目が合った。フランス屋の店主だ。そういえば昨年末から立ち寄っていなかった。このまま素通りしてしまうのは感じが悪いかと思い、挨拶くらいしていこうかと思いたって店に入った。こんばんは。久しぶりですが元気ですか。遅くなったけど明けましておめでとう。そんなことを言いながら。店主が機嫌が良く、私の顔を見るなり赤ワイン用のグラスを引っ張り出して、こんな寒い日は勿論赤ワインでしょうねと言いながら、今日のお勧めはこれと言いながら、グラスに注いだ。本当は挨拶だけして帰るつもりだったが、店主がいつも赤ワインを注文する私に先回りして差し出してくれたので一杯頂くことにした。互いの仕事の様子を話し、こんな時代に仕事があるだけでも喜ばしいことだからと労わりあっているところに買い物帰りらしい夫婦客が入ってきた。やあ、こんばんは。夫と店主が目を合わすと無言の了解なのか、夫婦客の為にシャンパンを注いだ。夫婦が嬉しそうに乾杯したので見ている方まで嬉しくなってきた。それで私は思わず声を掛けた。嬉しいわね、夫婦が一緒に買い物して、帰る前に食前酒を楽しむなんて素敵だわ。すると夫が答えた。僕たちはなるべく一緒の時間を作って、出来るだけ食前酒を楽しむようにしているんだよ。だってそれは僕らにとって、とても素敵な時間だからね。それを聞いて喜ぶ私に妻の方が口を開く。これは私達の特別なひと時なのよ。この時間を削ることなんてできないわ。私はレティツィア。あなたは? 年のころが同じの彼女はとても気さくな性格らしく、私の名を知りたがった。私が自分の名を教えると、彼らは話の端はしに私の名前を入れながら、まるで前からの知り合いのように色んなことを話し出した。それはとても不思議な感じで、とても居心地が良かった。ああ、もう行かなくては。そう言いながら残りのワインを喉に流し込む私に、また会えるといいわね、ここでまた会えるかしら、と彼女は言った。会えるわよ、きっと。私時々この時間帯に立ち寄るから。上の階に行くことはなく、いつもカウンターの前での立ち飲みなの。私がそう答えると、店主はうんうんと頷きながら、そう、彼女の特等席はカウンターの前の立ち席なんだよ、と笑った。私達はまたいつかここで会うことを約束して別れた。本当はワインを飲む予定はなかったが、これも一種の運命か。それが運命の一種なら、運命とは何て素敵なのだろうと思った。帰りのバスはなかなか来なくて随分と待たされた。いつもなら来ないバスに腹を立てるところだけれど、これも運命の一種かと思うと、あーあ、仕方ないなあ、と笑うのが得策だった。

寒い冬。何処でどんなことがあるか分からない。分からないから人生は面白いのかもしれない。


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コメント

初めてコメント致します。
私もイタリア在住ですが、街角のお店で起こりそうな一コマが素敵な文章で綴られて、つい惹きこまれました。写真もとても良い色。これからも更新を楽しみにしております!

2014/01/30 (Thu) 18:55 | ジーナ #iOg1CDVI | URL | 編集
Re: タイトルなし

ジーナさん、こんにちは。イタリアに生活すること自体は少しも特別ではないと思いますが、ここでの生活は知らない人との交流チャンスが沢山あって良いですね。私は話好きなので、こんな知らない人との出会いや立ち話が楽しくてならないのです。それからワインの立ち飲みも好き。イタリアならではのことと思っていますが、どうなのでしょうね。
これからもお付合いお願いします。

2014/01/30 (Thu) 23:53 | yspringmind #- | URL | 編集

日本に住んでいるイタリア人の友達が、日本の立ち食い蕎麦屋の存在には理解ができないと言っていました。
私は利用したことがないのですが、立ち食い蕎麦屋では、yspringmindさんが経験したような楽しくて素敵な会話は期待できそうにもないですね。
あ。そうか。だから、友達は立ち食い蕎麦屋が好きではないのかも。
と、今気がつきました。笑

2014/01/31 (Fri) 16:39 | micio #O/XG6wUc | URL | 編集
Re: タイトルなし

micioさん、こんにちは。日本の立ち食い蕎麦はワインの立ち飲みとは少し事情が違うようです。食べるのはやはり座って食べるのがいいかなあ、と。イタリア人にしてみれば座る時間も惜しんで食べる日本の立ち食い蕎麦はせっかちに見えるのかもしれませんね。イタリア人にとって食べると言うことは、イコール人生を堪能するみたいなことですから。
ワイン片手に店の中で立っていれば、話しが弾むと言うのがイタリアです。これは一度経験したらやめられなくなるのですよ。

2014/02/02 (Sun) 00:07 | yspringmind #- | URL | 編集

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