お手本

DSC_0310 small


週末、そして祝日の月曜日。これで私の冬休みは終わり。今までになく長く楽しい冬休みだった。そうかと思えば飛ぶように毎日が過ぎて言ったような気もする。楽しかったからに違いない。そんな冬休みであったことを私は心から感謝する。こういうのが必要だった。ずっとそんな冬休みを心待ちにしていたのだ。誰に感謝しよう。冬休みに。空から見守っていてくれた神様に。支えてくれた周囲の人に。

ところで昨日の午後、冬の暖かいコートを求めて旧市街に行った。旧市街の賑やかなこと。それはもう驚きと言うしかなかった。少しは景気回復の方向に向かっているのだろうか。小さな店内に沢山の客人が入って忙しそうにしている店員たちを眺めながら、嬉しく思った。小さな店が次から次へと消えていくボローニャ。それを私はとても残念に思っていた。頑張れ、頑張れと別に知り合いが居るでもないし行きつけでもないけれど、それらの小さな店の前を通り過ぎるたびに声援を送らずにはいられない。私には幾つかに気に入りの店があるどれも此れも小さな店だ。私のコート探しもそのうちのひとつだ。その店に行けば必ず気に入るものが見つかると確信があったのである。大通りに面しているが何しろ小さな店なので見過ごしてしまう人が多い店。ボローニャ生まれの口数の少ない女性が営んでいる。店主がひとりで営んでいるから用心のために扉に鍵が掛かっている。店に客がいない時、彼女は店の左隅で本を読んでいることが多い。それは別に怠けているのでは無く、どうやら客がガラス越しに気兼ねすることなく品物を見定めることができるようにとの配慮らしかった。そうして客が店に入ろうとする頃を見計らって、扉の鍵を開けるのだ。小さな店だが長いこと続いている。ボローニャに暮らし始めたばかりのあの頃の私は酷く貧乏でしかも仕事もなかったから、いつか自分がその店の客になろうとは思いもよらなかった。いつもガラス越しにセンスの良いものが置かれているのを眺める専門だった。そうして少し生活が安定して仕事をし始めたが、やはり敷居の高い店にはかわりがなかった。少なくとも私にはサルディ以外の時期には手が出ない店だった。1度こんなことがあった。ガラス越しに中を覗いていたら背後に親子が立ち止ってこう言った。この店はいいものを置いているのだけど、何しろ高くてねえ。そんな声を背中で聞きながら、成程、誰にとってもそうなのか、と頷いたものだ。夏と冬のサルディにしか顔を出さない私を彼女はどう思っているのか知らないが、それにしてももう何年も年に2度だけ顔を出すのでいやでも彼女は私の存在を覚えるようになった。もしかしたらそんな客が多いのかもしれなかった。さて、店に入ると少し品定めをしてから暖かい冬のコートを探していると述べた。しかし重くて肩がこるようなものではなく、暖かくて軽いもの。そんな注文を付けると彼女はあなたのサイズならば、これはどうか、これはどうかと5,6着引っ張り出してくれたが私の表情が今ひとつなのを読み取ると、そうだ、と言って急な木製の階段を上っていった。上の方から声がした。いいのがあるのだと言った。彼女は嬉しそうに2着のコートを持ってきて、自信ありげにそれを見せた。きっと私が気に入るに違いないと。実際私はその双方ともひどく気に入り迷いに迷った挙句に店主の目から見て、より私らしいものを選んで貰った。彼女のセンスに任せておけば間違いなしだからだ。コートを選び出す間に私は彼女が61歳であることを知った。20代半ばの娘がいる。フェッラーラ大学に通う美しい娘だ。彼女が留守の時、かわりに店番をしているので話をしたことがある。兎に角、私は彼女のことを50歳程と踏んでいたのだ。彼女の年齢にひどく驚く私に、彼女は少し嬉しそうに、心がけているのよ、日頃から、と言った。好奇心をもって、身綺麗にして、しゃんしゃんと歩くようにしているのだそうだ。先日同級生に会って驚いたの、みんなどうしてこんなに老いてしまったのかと。好奇心がなくなると老いは早いと知ったらしく、元気な限り学んだり何かに参加したり、それから仕事も続けるのだと言って笑った。それはいいことね、と言いながら私は思ったのだ。見習わねば、と。生き生きとしていたい。別に若いままでいる必要はないが、内面から輝いていたいと思った。

ああ、それにしても良いコートを見つけた。やっぱりこの店は良い。勿論年に2度、サルディの時にだけしか買い物できないにしても。


人気ブログランキングへ 

コメント

私もシニア

宜しければ素敵なコートを。

2014/01/06 (Mon) 11:23 | テルミニ #- | URL | 編集

ガラスに建物が写った写真かなと見ていたら、なんとなく今回のお話の内容のように見えてきました。内面から輝く。最近、私も思いますね。

2014/01/06 (Mon) 23:12 | つばめ #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

テルミニさん、こんにちは。
ご褒美に素敵なコートをどうぞ。

2014/01/07 (Tue) 00:02 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。初めはガラスにうつった建物がシャープな印象で気に入って写したのですが、とっているうちにガラスの向こう側の、天井にぶら下がる幾つもの照明が炎のように輝いて美しさに気がついて撮ることになりました。内面から輝く。まさにそうです。私もそうでありたいと願っています。

2014/01/07 (Tue) 00:06 | yspringmind #- | URL | 編集

yspringmindさんのお買い物のお話は凄く好きです。
どういう靴やスカーフや服を買ったのかな?とか、店員さんとの楽しいやり取りや、お店の佇まいやら周辺の景色やら、色々なことを想像して一緒にお買い物をしている気分になり、とても楽しいのです。(^.^)

2014/01/07 (Tue) 19:38 | micio #O/XG6wUc | URL | 編集
Re: タイトルなし

micioさん、こんにちは。私はいいもの見つけるウィンドウショッピングも好きならば、気に入ったものを手に入れるのも好きですが、多分、店の人とのやり取りがそれ以上に好きなのかもしれない…最近気がついたんですよ!
それにしてもわたでぃと一緒に買い物している気分になって楽しいだなんて、嬉しいことを言ってくださいますね。ボローニャにはまだまだこの手の小さな個人商店が残っていて、皆個性があって面白いのです。それでは今度はどの店に行きましょうか。

2014/01/09 (Thu) 00:04 | yspringmind #- | URL | 編集

そうです。
>わたしでぃと
yspringmindさんとDateしてる気分かも。w
女性の買い物に気長に付き合ってくれる男の人って、あまりいませんけどね。

2014/01/09 (Thu) 08:54 | micio #O/XG6wUc | URL | 編集
Re: タイトルなし

micioさん、女性同士のデイトって私はいいと思うんですよ。その相手が気の合う相手ならなおさらね。買い物に付き合うのが好きな男性はあまりいないでしょう。女性同士がやはり気楽でよいのです。

2014/01/10 (Fri) 21:09 | yspringmind #- | URL | 編集

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する