残り

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いつもの生活の戻るのは良いことだ。と言っても冬休み中だから、いつもの生活と言いながらも全然いつも通りではない。夜更かしはするし朝寝坊はするし、したいことしかしていないからストレスがこれっぽっちもない。これを私は幸運と呼ぶ。誰にでもありそうでなかなかない幸運。今日は髪を切りに行った。切ると言っても元々長い髪ではないので、他人には分からないだろう。言うなれば自己満足。しかし髪を整えて新しい年を迎える準備をする儀式みたいなものは私の年末の習慣で、これをしないわけにはいかない。髪を切って店の人たちに挨拶をして出ると、新年を迎える準備が万端のような気分になれるのだから、私は全く単純でよい。それで髪を洗って貰っているとき、こんな話が飛び交っていた。女主人が向こうに居る若い女性客に声を掛けた。あらあなた、顔色がいいけれど睡眠時間が増えたんじゃない? すると女性客が明るい声で答えた。冬休みなのよ。だから一日の半分は寝ているの。目覚まし時計なんてセットしないのよ。起きたい時間に起きるんだからすごいでしょう? それから何が嬉しいって午後の昼寝。こんな幸せってあるのかしらと思ったわ。彼女が言い終えると店主が言った。私が娘から貰った本に出てくる動物に似ているじゃないの。朝寝て、昼も寝て、夕方も寝て、夜になると一瞬起きて人参を齧るとまた寝る動物なのよ。ああ、この動物は架空の動物で存在はしないのだけどね。すると女性客はあははと笑ったかと思うと、人参をパンドーロ(クリスマスの時期に食べる甘いパンのようなもの)に置き換えたら私だわ。そうしたら架空の動物じゃなくなるわね! と言ったので、店にいた客という客が大笑いした。多分誰もが自分にも似ていると思いながら。兎に角冬休みは誰もがそんな風になるらしい。夏のように活発に動き回る人が少ないのだ。私の髪を洗ってくれていた女主人の甥っ子が、君も肌の調子がいいようだけど、あの寝てばかりいる動物みたいな生活しているのかと訊く。ううん、そんなに寝ていないけど、したいことしかしていないからストレスがないのよね。そう答えると何処かから、それは素敵ねえ、とのため息交じりの声が聞こえた。そうだ、本当に素敵なのだ、ストレスがないと言うことは。それから素敵なことがもうひとつある。ヴィエンナへ行って寒い中を歩き回りながら、私は見失っていた私の中で大切なことをもう一度見つけた。自分らしく生きること、これ以上素敵なことってあるだろうか。

ああでもない、こうでもないと考えながら散策しているうちに、一年が終わっていくだろう。残り、たったの3日間。


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コメント

お話を読んでいますと、なんだか楽しそうで自分が美容院のはしっこからのぞいている小さなねずみにでもなった気分です。ちょっと遠い世界の美容院でそんなやり取りが行われてるとは。ほのぼのです。

2013/12/30 (Mon) 14:26 | つばめ #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

つばめさん、こんにちは。この美容院が好きなのは店の人も客も気がいいところでしょうか。色んな話が飛び交いますが、その場にいない人のゴシップは決して出てきません。大抵こんな具合に、その場にいる人たちのごく普通の生活の話。でも、何か面白いのです。私はいつも、それこそ小さなネズミになって話を聞いているのですが、時々急に話を振られて困ったことになったりするのですよ。

2013/12/31 (Tue) 16:08 | yspringmind #- | URL | 編集

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