ご褒美

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今日も引き続き快晴のボローニャは、クリスマス前と言うことで街中の店が開いているようだ。これはボローニャに限ったことではなくイタリア中と言ってもよかろう。勿論小さな村は別として、ある程度の規模の町ならばこんな時期に店など閉めていられないよ、と言うことらしい。昨日エルメスの前を通ったら、店内が妙に賑わっているのが視界に入った。この店がこんなに賑わうなんて。世の中にはこんな高級品をぽいっと購入する人がこんなにもいるのかと思わず足を止めてしまった。すると左手から給仕風の見かけの良い男性が銀の盆に足の長いシャンパングラスを乗せて歩いて来るのが見えた。そしてシャンパンを来客たちに振舞った、美しい笑顔を添えて。どうやら特別な日らしい。常連客を招待してのちょっとしたパーティなのだろう。いつもショウウィンドウを眺める専門の私だから、そんな光景がとても特別に見えた。美しいものが好きだ。エルメスの美しい絹のスカーフは永遠の憧れ。少し奮発すれば手に入れられないこともないけれど、こういう憧れは簡単に手に入れないほうが良い。簡単に手に入れられないから、いつか何か特別な時に自分へのご褒美として、又は誰かから頂いた時に、飛び上がるほど嬉しいのである。まだまだ。まだまだ。私は自分に言い聞かせる。自分へのご褒美ならばもうふた頑張くらいしなくてはね、と。

ご褒美と言えば、先日相棒と少し遠くの店に行った。店を紹介してくれたのは相棒の知人で、私の知らないイタリア人だった。今年の6月の終わりに結婚して20年を迎えた私達は何か特別なものを作ろうと言うことになって、ずっと考えていたのだ。私は金属アレルギー体質で、アクセサリー類を一切身に着けないのが長年の習慣だ。結婚指輪もとってしまったし、昔していたピアスも既に人に譲ってしまった。唯一身に着けているのは腕時計で、それも時々どうしようもなく辛くなる。それなのに私達は記念に特別な指輪を作ることにしたのだ。それは相棒が昔からしているわりと幅の広い金の指輪。まっすぐ輪切りされたものではなく平行に波打つ、少し見かけの変わった指輪だ。何しろ長年はめていたので彫られていた図柄は消えてしまっていたが、それでも何か良い感じの指輪であるには変わらなかった。これと同じものを私ようにひとつ作ってお揃いにしたらどうだろう。それにしても同じものを作ることは可能なのだろうか。そんな話をしていたところに相棒の知人が現れて、紹介してくれたと言う訳だ。私達は相棒の指輪を渡して、これとすっかり同じものを、と注文すると店主はしばらく考えていたが、快く引き受けてくれた。ひと月もかかってようやく指輪が出来上がり、傷だらけになっていた相棒の指輪も美しく磨かれて戻ってきた。私が望んだように相棒のと全く同じだった。指にはめてみたらぴたりと来た。長い間指輪をしていなかった指が、驚いている。毎日アレルギーがでていないことを確かめながら、大丈夫、まだ大丈夫と自分に言い聞かせる。この揃いの指輪は言うなれば私達へのご褒美。今まで案外うまくやって来たことへのご褒美。それから互いの存在を確かめる象徴。

昼間の快晴は朝晩の冷たさに比例する。落ち葉が凍り付くほど冷たい。美しく凍り付いた落ち葉を眺めながら歩くのは、冬だけの楽しみ。冬のご褒美、と呼ぶとよいのかもしれない。


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コメント

『ご褒美』を読み、yspringmindさんの愛情の深さが伝わってきて涙を流しました。こんなに純粋で深い愛情を、これだけ控えめに語る人がいるのかと。
たとえお互いの存在が当たり前のようになっていたとしても、お互いの関係を問う、ということは必要なことで、愛情を確かめ合うことは大切なことだと思います。

2013/12/16 (Mon) 17:03 | Alpes #- | URL | 編集

こんにちは。
アレルギーがあるのに、新調した指輪はしっくり指になじんで毎日を過ごしている、とは。なんてすてきなことでしょうか。
手というものは自分でなにかにつけて眺められるもの。
きっと日常にお揃いの指輪のはまった指をふと目にするとき、暖かく幸せな気持ちが胸に広がるんだろうなぁと羨ましくなりました。
お元気で、お二人ともよいお年をお迎えください。

2013/12/17 (Tue) 07:24 | 大庭綺有 #oSFUNe7U | URL | 編集
Re: タイトルなし

Alpesさん、こんにちは。こんなに長く続くとは結婚した当時は当の本人たちにも想像できなかったので、20年と言うねン月を振り返って互いの辛抱強さに感心していると言うのが本当のところなのですよ。幾度もの嵐が吹き荒れ、幾度も雷音が響き渡り、それはもう穏やかとは言いがたい年月でしたが、過ぎてしまえば何だか当然のような気もする。他のご夫婦はどんななのでしょうね。兎に角そんな訳で指輪を作ってみました。

2013/12/17 (Tue) 23:31 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

大庭綺有さん、こんにちは。久しぶりですね。
アレルギーがあるので指輪を作るのは一瞬躊躇いました。でも、指は慣れるものなのかもしれませんね。今のところ指と指輪は仲良くしているようで、内心ほっとしているのです。それにしても手というものは自分でなにかにつけて眺められるものとは、よく言ったものですね。確かにそうですよ。時々指輪を互いに見せ合って、何だか夫婦みたいだ、と笑っています。ふふふ。

2013/12/17 (Tue) 23:37 | yspringmind #- | URL | 編集

ご馳走さまです。
読んでて私も暖かい気持ちになって、ふふふと笑ってしまいました。
よいナターレをお過ごしください。

2013/12/21 (Sat) 14:08 | micio #O/XG6wUc | URL | 編集
Re: タイトルなし

micioさん、こんにちは。うちの夫婦は実にさっぱりしていてこういうことはあまりないのですが、ま、20年も続いたからね、と。周囲の人も驚いているんです。よくも20年続いたね!!!と。そんなに驚かれたってねえ。
micioさんもよいクリスマスをお過ごしください。

2013/12/21 (Sat) 19:10 | yspringmind #- | URL | 編集

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