冬の青空

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私は指折り数えて生活している。子供の頃、あと何日でクリスマスと心待ちにしていたように、私はあと何日で冬休みに入るのかを数えている。ようやく両手の指ほどの日数になったかと思ったら、もう残り7日である。忙しい毎日だから、次は残り3日だと狂喜するのだろう。こんな風に何かを心待ちにして指折り数えながら生活するのは案外楽しいものだと最近知った。特に楽しみが一杯の冬休みならば尚更だ。

朝から天気の良い土曜日。一頃雨ばかり降ってボローニャの人々の心を塞いだが、最近は空の機嫌が良いらしく青空を臨める毎日だ。私は思うのだ。天気とは何故もこう人の心を左右するのだろう、と。楽しみにしていた日帰り旅行の前の晩、天気予報で明日は雨になると知った時の悲しみと言ったらない。それから夏の開放的な天気は人々の心を陽気にさせて、冬の濃霧や長雨はいやでも人々を憂鬱にさせる。毎日青空を眺めることができたなら皆笑顔で軽快な気持ちで過ごせるのかもしれない。兎に角、私はそんな快晴に誘われて旧市街へ行った。最近つまらぬことばかりが起きるので気分転換が必要だったから。けれどそんな理由がなくとも私はやはり旧市街へ出かけていただろう。何しろ土曜日の散策は私の気に入りの習慣のひとつなのだから。そしてもうひとつ、クリスマスショッピングなのだ。12月に入って週末の旧市街は大変な活気である。それはクリスマスショッピング。大人になった子供たちに、孫たちに、恋人に、連れ合いに、両親に、友達に、そして自分にと贈り物探しに精を出す。今日もそんな人たちで街は大混雑だった。目的地を目指しながら街歩きを楽しむ。人の波に飲み込まれそうになったら路地に入り込み、ひと気のない空間を歩く。自分の足音しかしない自分だけの空間、自分だけの時間。それはとても貴重なこと。まっすぐ目的地へ歩いていれば10分で行けるところだが、そんな具合だから小一時間もかかった。しかし急ぐことはない。誰かと約束があるわけでもない。目的地は化粧品店。この店に初めて入ったのは18年前の初夏。知り合ったばかりの若いイタリア人女性が教えてくれた。彼女が使っていた檸檬の匂いが素敵な石鹸を私も買いたいと言ったから。大きな店で何でも揃っていたが店のシステムで困った。大きな棚に並ぶ商品を手に取ってはならなかった。中央のカウンターへ行って自分が欲しい物を小さな紙に書き込むのだ。そして店の人に渡すと品物を受け取れるという具合だった。商品名が分からないので店員にどんな石鹸であるかを説明しようと試みるが、紙に書けと言う。私は悩んだ挙句、諦めて店を出た。あれから18年。店の内装が変わり、システムも変わった。自由に店の中を歩き回り、見本を手に取ってみることもできれば、店内の其処此処にいる店員に声を掛けて必要な商品を出して貰うこともできる。あの、私の嫌いな紙はもうどこにも存在しない。あんなシステムだったことを、一体どれだけの人が覚えているのだろうか。今になってみればその古臭いやり方が面白可笑しく思えるけれど。さて、香水を買った。ひとつは姑の為に。姑は私がクリスマスに香水を持ってくるのをいつも楽しみにしているからだ。朝食後に香水を少しつけると一日愉しい気分で過ごせるらしい。もうひとつは相棒の為に。しかし自分が好きな匂いを選んだので、正直に言えば相棒と自分の為にである。多分相棒は受け取るなりすぐに感づくだろう。彼の為だけにしては随分大瓶で奮発したこと、匂いが実に私好みであること。勘定を済ましてから美しく包装して貰った。折り紙が上手な日本人の私だ。何故もそう手こずるかと思いながら店員の手元を眺めていた。私なら1分と掛からないところだが店員は5分もかけて包んでくれた。ところがである。包み終えた後の装飾センスの良いことと言ったら! 私には出来ない。どうしたらこうも華やかにリボンを掛けることができるのだろうと目を見開いて眺めていたら、店員が気にして訊いた。お気に召さないですか? やり直しましょうか? それで私はとんでもない、こんな素敵にしてくれたのに、と自分でも驚くほど大きな声で答えてしまい、店員はすっかり赤くなって照れてしまった。私は素敵になったふたつの包みを受け取ると包装の礼とホリデーシーズンの挨拶をして、ご機嫌な足取りで店を出た。

12月にしては暖かい。こんな日が暫く続いてくれればよいけれど。


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コメント

こんにちは。はじめまして。
今月末からボローニャを起点にエミリア=ロマーニャ州を周る予定で、そのための下調べをしている時にこのブログを発見しました。
この写真の目が潰れそうな青に、まず心惹かれました。私が住んでいるドイツの空はここのところ毎日グレー。太陽の光を長い間見ていません。ゲーテやスタンダールなどアルプスの北に住む人々が何故イタリアを目指したのか、何だかわかるような気がします。
こんな天気が12月末まで続くと良いのですが…

素敵な写真と文章、今後も時々拝見させていただきます。どうぞよろしくお願いします。

2013/12/15 (Sun) 14:00 | mayumi #vcul9rTE | URL | 編集

わくわくするお話しですね。どんな包装だったのでしょう。人のセンスはどこで培われるんでしょうね。親しい人が自分で包装したものなら、心がこもっていればセンスなど別にいらないけれど、店員さんがした包みが、はっとするくらいかっこよかったらそれだけで、数倍も感動しますよね。

2013/12/15 (Sun) 14:22 | #- | URL | 編集

深い青色の空がとても美しく、気持ちが良くなります。冬の空の色は、日中は濃い青、夜になるとより一層濃さを増し、濃い紫色のようになるので、何かこう宇宙に引き込まれそうな不思議な迫力がこもっているような感じがします。と言っても特に宇宙の話に興味がある訳でもないのですが。
お買い物の様子は何やら楽しそうで、とても楽しく感じられるという瞬間を得られたのは大変幸せなことです。yspringmindさんがどんな香水を購入されたのか気になります。
それにしても、yspringmindさんは本当にPiazza Galvaniがお好きなのですね。私もPiazza Galvaniは大のお気に入りの場所です。

2013/12/15 (Sun) 15:47 | Alpes #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

mayumiさん、こんにちは。今月末からボローニャを起点にエミリア・ロマーニャ州を周りますか。それは楽しみですね。ただ今ボローニャは市民が驚くほどの快晴続きで、此れは実に珍しいことであります。暫く続くことを心から願っています。この青い空には全く脱帽でした。こんな空を見ていたら悩むのがばかばかしくなると言うものです。冬には濃い霧が発生するこの辺りですから、実に貴重なのですよ。
これからもお付き合いお願いします。

2013/12/15 (Sun) 23:39 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

名無しのコメントさん、こんにちは。箱を包装紙で包むところまでは実に普通だったのですが、リボンの扱い方には感心しました。リボンは実に普通の幅細のものですが、何かこう芸術的と言うか、受け取った人がまずはそのリボンの掛け方に心打たれるだろうと思われるような、そんな感じ。家に帰ってきて真似してみましたが、できない。器用なはずの日本人の私なのに! あれはやはり才能に似た何かなのでしょう。彼女は実に普通の顔してリボンを掛けていましたけれど。

2013/12/15 (Sun) 23:44 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

Alpesさん、こんにちは。冬は空気が冷たくて澄んでいる分だけ空の青さは格別です。夏にはどこを探したってこんな青はありません。でも、それに気がつく人は案外少ないようです。私が青い空を撮っていたら、周囲の人たちも空を見上げて、今気がついたみたいに、あ、空がこんなに青いなんて、と驚いていましたよ。
私が相棒と自分用に購入したのは、シャネルの男性用。きりりとしていて印象的。何時だったかすれ違った男性がこんな匂いを私に残していき、感動したものです。
Piazza Galvaniが無かったらボローニャじゃない。そのくらいここは大切な場所なのですよ。

2013/12/15 (Sun) 23:51 | yspringmind #- | URL | 編集

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