美しいもの

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朝から曇り空。週末というのについていない、と思いながら旧市街へと向かった。もう正午を回っているから、昼食時だから、さぞかし空いているだろうと思っていたが、驚くほどの賑わいだった。ネプチューンの噴水広場の鼻先には今年もクリスマスツリーが置かれ、まだ12月になっていないのに何か酷くクリスマスの雰囲気が漂っていた。人々は早くもクリスマスのショッピングを始めたらしく、店の名前の入った紙袋の中から美しく包装された箱が入っているのが見え隠れする。昔のボローニャはクリスマス前に割引などする店はなかったが、数年前程からクリスマスの買い物はうちで是非してくださいねと言わんばかりに割引をするようになった。市民は賢いのでそういう店で買い物をするから次第に割引をする店が増え始め、今ではすっかりそういうものと思うようにすらなった。私が初めてブダペストへ行ったのは12月だった。豊かな人もそうでない人も皆がクリスマスの贈り物を用意できるようにと、12月に入ると割引をするのだと知って感激したけれど、やっとボローニャにもそんな習慣が定着したようだ。勿論、定着した根本的な理由は少々違うけれど、しかし嬉しいことにはかわりない。私は大きなクリスマスツリーを遠目に見ながら先を急いだ。私は髪を切りたかったのだ。行きつけの店は空いていたが、中で働く人が少なかったのでとても待つことになった。髪を切り終えて外に出たのは、16時過ぎだった。冷たい風が吹き、さもすると風邪を引いてしまいそうな寒さだった。昼どきに遠目に見たあのクリスマスツリーを近くで見ようと思って行ってみたら、クリスマスツリーよりも興味深いものがあってうっかり通り過ぎてしまった。私の目を引いたのは広場の噴水の前にあった幾つものテーブル席、そしてエンツォ王の館の前に置かれた横長の小屋だった。もしや。と思って覗いてみると昨年の今頃も一昨年の今頃もやっていたトレント地方のちょっとした物産展であった。この地方特有の黒パンやハム、瓶詰めその他がいっぱい並んでいて、ボローニャの人々の心をつかんでいた。このイヴェントはいわば恒例みたいなもので、楽しみにしている人が沢山いる。そして私もそのうちのひとりなのである。ただし私が楽しみにしているのは黒パンでもなければハムでもない。エンツォ王の館前の小屋の中で販売している焼きたてのストゥルーデルだ。これは一言でいえばリンゴのパイ。パイ生地の中にリンゴやら何やらを入れでぐるりと包んだ長細い形のそれをザクザクと幾つかに分けて販売している。一切れ3ユーロだがひとつ食べるとお腹が一杯になるくらいボリュームがある。それにしても長い列ができていて、そもそも列の最後が何処かわからないほどだった。それではと横の小屋に行った。温かいワインでも頂こうと思ったからだ。冬はこれが一番。体が温まる。それをゆっくり頂いてから例の列に並んでふたり分求めた。昨年は寒空の下で頂いたが、今年は持ち帰り。家で相棒とゆっくり頂くために。いやなに、昨年寒空の下で食べて風邪を引いたからだ。菓子を紙袋に入れてもらって手の上に乗せると、温かかった。サンペトロニオ教会の前を横切り教会の裏手に回ったところで、美しいものを見た。光の木、光の空飛ぶ絨毯。見る人によっては他のものに見えるかもしれないそれらは、既にすっかり暗くなった空の下で輝いていた。秋が本当に終わっているのを感じた夕方だった。

友人たちと夕食に出掛け、さあさあ、もう直ぐ零時になってしまうよ、と言いながら店を出たら空から何かが舞い降りてきた。それは目を凝らさねば見えぬほど細かい、しかし雪以外の何物でもなかった。そんな風に11月が終わり、こんな風に私達の12月が始まった。


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コメント

きれいなものを見つけるとうれしいですね。きれいな文章、きれいな写真をありがとー。一本だけというのがいいですね。私はなにげない1日でも1日一回ははっとするうつくしゆ瞬間があるなと思います。それは、自然からもたらせられることが多いです。たとえば、木の葉がはらはら音もなく舞ってたり、セキレイが車の間をちょこちょこ歩いてたりすることです。

2013/12/01 (Sun) 06:59 | #- | URL | 編集

こんばんは。ボローニャで生活していた時は秋と冬が好きでした。春と夏も良いのですが、ボローニャの夏はとても暑くて体がおかしくなりそうになり、避暑のためスイスに住む親戚のところに逃げてました。
アドベントが始まり、街にクリスマスの飾りが付けられると、伊語のsanto、聖なるという言葉が心身に染み入ってくるようなそんな気がしてました。西洋的な国家観というものを学んだ気がします。私は派手なクリスマスの飾りが苦手なので、シンプルだけど華があってとても美しく、細部に非常にこだわりのある、見とれてしまうほど美しい、存在感のあるボローニャのクリスマスの飾り付けが大好きです。人それぞれなので、ボローニャの街のクリスマスの飾り付けは地味ーと思われる方もいらっしゃるかも知れませんが。
「光の木、光の空飛ぶ絨毯」。美しすぎますね。
Strudel。私も今日の午後、紅茶と一緒に頂きました。とても美味しいです。

2013/12/01 (Sun) 14:48 | Alpes #- | URL | 編集

ボローニャに行ったのが2007年だからもう5年も前になってしまいました。
何回も通ったネプチューン広場ですが、クリスマスの頃はこの辺りはどんなに綺麗でだろう
と想像していたのを思い出しました。

これがそうなんですね。
この写真
すごく好きです。
クイズをしてくれないかなあ。
この写真欲しさに応募します。(笑)

2013/12/01 (Sun) 19:01 | September30 #MAyMKToE | URL | 編集
Re: タイトルなし

名前の無いコメントさん、こんにちは。綺麗なものを見つけると、ついているなあ、とか、全く幸運だ、などと思います。今この場所に居合わせたことを感謝せずにはいられませんね。教会の裏の広場で見つけたこのシーンは、冬の贈り物としか言いようがありません。寒い季節ならではの美しいものです。私も自然が齎す美しさに心を奪われることが多いです。そしてそれらは空や木に関係することが多くて、私は昔、空に浮かぶ小さな雲だったのかもしれないとか、気だったのかもしれないなどと思うのですよ。

2013/12/01 (Sun) 23:11 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

Alpesさん、こんにちは。確かにボローニャの夏は暑いですね。ボローニャの夏の暑さには頭が変になってしまいそうだと、この町に暮らし始めて以来毎夏思うのです。避暑の為にスイスへ・・・。いいですね。私は暑い夏はなるべく日陰を選んで歩くしか方法がありません。
ボローニャのクリスマスはミラノやローマに比べたらずっと素朴です。そもそもボローニャという町が地味で素朴な町なので、それで丁度良いのでしょう。塔も光のドレスを着せられて夜になると美しく、しかし地味に輝いています。すっかりクリスマスの準備が整ったと言った感じです。

2013/12/01 (Sun) 23:19 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

September30さん、こんにちは。2007年でしたか。あれからもう5年も経つのですね。この広場は、教会の裏手の、September30さんが良く通った、カフェのテーブル席が広場にせり出して並べられていた広場です。私はこの広場が個人的にとても好きで、この広場を無意識のうちに選んで歩いているようです。
写真を気に入っていただけて光栄です。まだ未熟も甚だしいので、人様に贈るなんて烏滸がましいですが、そういっていただけるのは本当に嬉しい。お言葉、早いクリスマスの贈り物として頂いておきますね。

2013/12/01 (Sun) 23:26 | yspringmind #- | URL | 編集

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