月に一度だけ

DSC_0015 small


10月。日本では夏のような暑さが戻ったらしく半袖姿で街を歩いているらしいが、ボローニャは着々と秋を深めている。外の明るさに騙されてうっかり軽装で出かけようものならば、風邪を引くこと間違いなしだ。私が暮らす今のアパートメントは日本式に言えば4階。しかしエレベーターなどという便利で洒落たものはないから、うっかり忘れものをしたりすると大変だ。忘れものでないにしても、例えば軽装で出てきたものの外に出てみたら思いのほか冷え込んでいてコートやスカーフを取りに戻ろうという時。うーん、どうしたものか、と思い悩むのだ。勿論その後には選択の余地のないことに気づき、やれやれと頭をかきながら先ほど降りてきた階段を再び上ることになるのだけど。だから、最近私はいつも大荷物なのだ。無駄な往復をしないようにとすべてを鞄に詰め込んで家を出るのだ。しかし今のアパートメントを不便だとか何とかで嫌っているわけではない。むしろ私はこのアパートメントを出来ることならば購入したいとすら考えているのだ。勿論、ここの大家である私と相棒の知人がうんと言えばのことである。建物は古いしエレベーターはないし直すところも沢山あるけど、それからもう少し広ければもっと嬉しいという思いもあるけれど、何しろ日当たりと風通しが良くてテラスの前がすかーんと100メートルほど視界を遮る建物がない。しかも周囲には私好みの大きな木があちらこちらに生えていて環境的によろしい。だから、知人も手放したがらないのである。気長に知人の気が変わるのを待つのみ。それが得策というものだろう。それにしても美しい秋の空。夕方の、日が暮れる前の青空は高く遠く住んでいて、向こうのほうに鰯雲が見える。ボローニャ旧市街の骨董品市はさぞや賑わっていることだろう。

そういう私はその骨董品市を土曜日のうちに堪能した。日曜日はいつだって姑と日曜日の昼食会をする役目があるからだ。私が言う骨董品市とは月に一度出るPiazza Santo Stefanoのそれである。一体どれほどの歴史があるのか知らないけれど、この辺りでは大変有名。私が相棒に連れられてボローニャに初めて来た20年前には既に存在してた。多分もっと昔からやっていたに違いないけれど、誰に聞いてもその答えは見つからない。さて、昨日はすぐにいいものを見つけた。テーブルだった。1,5メートル四方程のテーブルで大を支える足の部分の特徴があった。今まで見たことのない様式で、好奇に駆られて店主に声を掛けた。そるとそては1900年初期のものでロマーニャ州、つまりチェゼーナやリミニ辺りで作られたものだと分かった。豚を解体するテーブルだったらしい。ほらね、肉切り包丁の跡が沢山あるだろう? そう言いながら説明してくれた。このテーブルの上で豚が解体され、肉を挽いて腸詰にしたりしたのだろうか。想像するとあまり気色は良くなかったが、素朴なそのテーブルをひどく気に入って値段を聞いた。850ユーロ。勿論交渉の余地はあるんだよ、と店主はウィンクを投げかけた。相棒が見たらどう思うだろうか。何しろ彼はこの道に秀でているから、やたらな買い物はできないのだ。勿論、850ユーロなんて現金も持ち合わせている筈もなく。私は店主に説明の礼を言いながら連絡先を訊ねた。チェゼーナに店があるそうだ。来る前に携帯電話に連絡してくれれば、すぐに店に戻るから、と言う。彼は店の近くに住んでいて滅多に店にいないのだろうか。それともしょっちゅう誰かに誘われて近くのバールにカッフェをしに行って留守しているのかもしれない。私は住所と電話番号が書き込まれた小さな紙切れを鞄の中にしまうと、店主と硬い握手をして店を離れた。酷く後ろ髪をひかれながら。それにしても大変な賑わいで出店も驚くほど多かった。家具だけにとどまらず古いランプや絵画、額縁、宝石、レースのテーブルクロス、陶器、本。見ごたえがあるのは良いが、何しろこの広場ときたら足元が悪くて足がつかれる。広場は握り拳ほどの丸石が敷き詰められているため足の踵や足首がポルティコの下を歩くのとは比較にならぬほど疲れるのである。この広場も骨董品市も大好きだけど、この丸石だけは苦手だ。と、ひとり呟きながら歩き回った。骨董品市の端っこでギターを奏でるふたりの男を見つけた。なかなか良い。何に誰も足を止めようとしないのは何故だろう。それともあれこれ物色しながら人々はこっそり耳を傾けているのだろうか。彼らがもし他の広場で奏でていたら、あっという間に人垣ができて人気者になれるのに。何故もこんな場所を選んでしまったのか。

大好きな月に一度の骨董品市。次はひと月先だ。


人気ブログランキングへ 

コメント

今日の日本は 秋でした
台風も去り 秋晴れ 肌寒くなりました


日曜日の昼食・・・役目があるのですね
毎週ですか???
私は 滅多に合うこともないので、その滅多に合う事も苦痛に感じるダメ嫁です

実の父ですが、それはそれは厳しい父です
そんな父が 珍しく 言い放った言葉に驚きました


明日から五日間休日です

そうですね~ 楽しみます
うれしい 休み たのしみま~す

2013/10/17 (Thu) 09:18 | 春風 #jgTtIlIo | URL | 編集
Re: タイトルなし

春風さん、こんにちは。日本は暑くなったと思えば台風が来て、その後には秋が来てと目まぐるしいですね。体調を崩さないように気を付けてくださいね。私の姑のところで昼食は毎週日曜日のほぼ義務で十何年も続いています。自分でもよくやっているなあ、と時々あきれるというか、ため息が出るというか。まあ、続けられる限り頑張ります。ところで5連休いいですね。楽しみましたかー。

2013/10/19 (Sat) 17:28 | yspringmind #- | URL | 編集

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する