暑いのが苦手

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暫く休みだと思うと人間よく眠れるらしい。夜中に一度は目が覚めてしまう習慣がついて随分になるが、今日は一度も目が覚めずに10時過ぎまで眠った。そんなことを聞いたら海の向こうにいる私の家族は呆れかえるに違いないが、私には必要だった睡眠だ。ここ数日続いていた不調をすっかり拭い取り、爽やかな目覚めだった。そんなに何時間も眠れない、と私の知人たちは言い張るが、私は眠ろうと思えば丸一日だって眠れる。特技といえば特技、しかしあまり自慢できたものではない。

実を言えば早く起きて涼しいうちに散歩に出掛けようと思っていた。だから既に日が高く、地面に太陽の光が照り付けているのを見て、そして昨日よりも更に暑い風に満ちているのを感じて一瞬迷った。夕方涼しくなるのを待ってから出掛けるのもよいかもしれない、と。それでも身支度して思い切って家を出たのは、いつだって旧市街の散策は仕事帰りの夕方であることを思い出したからだ。いつもと違う時間帯のほうがよいのではないか。気分転換になるのではないか。同じ景色が違って見えるのではないか、と。そうして家を出てみるとテラスで感じたよりも更に気温が高く、停留所近くのデジタル温度計が36度をしるしているのを見て、思い出したかのように汗が噴き出した。折角乗った旧市街行きの13番のバスを途中で降りたののは訳があった。月初めにオープニングパーティをしたばかりのカフェに立ち寄りたかったからだ。此処は私と相棒の友人の妹の店。友人の妹は昔からカフェの経営者になりたかったとのことで、5年前にうちの近所に小奇麗で感じのよいカフェを開いてずいぶんの成功振りだった。そして今、もうひとつ、と考えたらしい。店を開けてまだ6日目だが、随分と人の耳に入っているらしく賑わっていた。Buongiorno と言って店には入ると友人と彼の姪っ子がカウンターの中で忙しく働いていた。どうしたんだい、と訊く友人に私が答える。あなた達がちゃんと真面目に働いているかどうか確認しに来たのよ。すると店中の客たちが大笑いして、奥の男性がこう言った。大丈夫、僕がちゃんと見張っているから。もう、常連客が出来たらしい。これで安心。多分この店はどんどん人気が出て繁盛するだろう。私は冷たいカッフェを注文した。暫く店の中の人達と世間話をしてから、店を出た。次なる目的地はPiazza Santo Stefano。今週末は月に一度の骨董品市があるのだから。広場へと続く入り口辺りの店を覘く。絵画や額縁や版画が並んでいた。その先には小物が並び・・・と突然誰かが大きな声で私の名前を呼んだ。歩調を止め辺りを見回すと、向こうのほうに見覚えのある女性が居た。ああ、ティツィアーナだ。彼女とは今年の冬の終わりを待たずに長年続けていた店を閉めて以来、一度も会っていない。暫く前に電話を突然貰ったが、その後もまだ会っていなかった。私達はといえば単なる店主と客の関係だったが、こうして道端でばったり会うと旧友に会ったような懐かしさがあった。彼女は駆け寄ってきて私を抱きしめると、左右の頬に挨拶のキスをしてくれた。元気そうね、うん、元気なの、と私たちの関係は実に気軽だ。彼女は既に骨董品市でなにやら獲得したらしく、大きな袋を両手に持っていた。時は既に昼食時で、彼女は家に戻るところだった。よく店で見かけた、彼女の旦那さんが家で待っているに違いなかった。また会いましょうね、と言いながら私たちは別々の方向に歩き出した。こんなところで彼女に会うとは。やはり思い切って家を出て来てよかったと思った。休み明けの骨董品市はなかなか賑やかで楽しく、収穫こそ無かったが大変目の保養になった。よいものを見る、それがよいのである。それにしても暑い。すれ違う犬もばて気味だ。最後に古本屋に立ち寄って冷やかすと、その近くのバールに飛び込んだ。冷たいレモンソーダでも、と思って。

そんな暑さも晩になると嘘みたいに涼しい風が吹き始めた。このくらいがいい。私はやはり暑いのが苦手らしい。夜風に吹かれながら相棒にそう言うと、寒いのも苦手なくせにと言い返された。うん。確かに。


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