いつもの生活

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ボローニャに戻って一週間が経つと言うのに、まだいつもの生活の調子に戻れない。時差ぼけではないが日本ぼけと言うか、日本文化ぼけと言うか、幸せぼけと言うのか知らないが、兎に角雲の上をふわふわと歩いているような感覚が続いている。そうだ、とても楽しかったのだ。たったの11日間といえど、あれは確かに私に必要だった幸せな時間だったと思う。そんな風に思っていることを、私の家族は知らないに違いない。いや、案外気が付いていたかもしれない、と今日もそんなことを考えている。そんなに長くイタリアに暮らしているのに、何故イタリア国籍をとらないのだと用事があって役所に行くたびに市の職員に聞かれるが、そう簡単な話ではない。何しろ日本と言う国は二重国籍を認めていないのだから。イタリア国民になったらば日本国籍を手放さねばならない。私がそんな説明をするたびに、相手は深く頷くのだ。成程ね、自分の国籍を手放すなんて出来ないわね、と。私がそんなに日本人であることに拘ることを私自身時々不思議に思うのだけど、少なくとも母が存在する限りは、と思っていた。そして今は、昔より更に同じ気持ちを分かち合えるようになった姉が居る限り、よくしてくれる義理の兄が居る限り、年頃で気持ちを上手く表現できないために不器用ながらも慕ってくれる甥っ子たちが居る限り、私は日本人でいたいと思うようになった。頑なといえば頑なだけど、そのくらい拘っても別に人に迷惑が掛かるでもない。暫く拘り続けたいと思う。

今日は久しぶりのボローニャ散策。土曜日にしては早めに起きて外に出た。旧市街に着いたのはやっと街中の店が開いたくらいの時間で、人はまだ少なく、外気もまだ冷たくて気持ちが良かった。終点の手前でバスを降りたのは、ウィンドウショッピングでもしてみようかと思ったからだ。いつも見るだけのエルメスの店先。此処はいつも観客が沢山で賑やかだ。見るだけ、見て目を豊かにしましょう、と。その先にあるグッチの入り口近くに若い女性が立っていた。恐らく何処かの豊かな家の娘さん。長い豊かな髪を高い位置でひとつに纏めて、さわやかで素敵だった。彼女は隅っこに向かって何か話しかけていた。彼女の目線を追ってみたら子犬が居た。革紐につながれた茶色の子犬。ほら、怖くなんか無いのよ。其処から出て来て一緒に散歩しましょうよ。彼女はそう話しかけるが子犬は小さく丸まってしまう。その様子が可愛くて、思い切って彼女の話しかけた。あなたの子犬、人が沢山居る場所が怖いの? すると彼女は頷いて、そうなの、家の中ではものすごく元気で大変なくらいなのに、と言って笑った。私は腰を低くして子犬に話しかけた。出ておいで、頭を撫でてあげるから。すると子犬はもぞもぞと出てきたので頭を柔らかく撫でてあげると、知らない人から優しく頭を撫でられて嬉しそうな表情を見せ、しかしそのすぐ後には、そうだ、怖かったのだと、思い出したらしく再び奥のほうに逃げ込んで丸まってしまった。私と彼女は顔を見合わせて、何だか変なの、と笑った。最後の手段と言って彼女が小犬を抱き上げると、小犬は嬉しそうな顔をして喜んだ。成程、こういう作戦だったのね、と言う私に彼女はいつもこうなのだと言って無き笑い顔を見せた。チャオ、楽しい散歩を。私たちは手を振って分かれた。こういうことはボローニャならではのこと。知らない人ともお喋りを楽しめる魅力、それがボローニャ。家族との楽しかった時間が楽しくて何時まで経っても大呆けだけど、こんなことを繰り返しているうちにいつもの生活に戻っていくのだろう。うん、それでいい。

8月最後の1日。


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コメント

夏休みのお話っていくらでも、聞けると思うんです。誰にでも、でもyspringmindさんのお話を聞くとなぜか心に残るものがあります。
書き方でしょうか、いや人間性かな。今年の夏休みは大したことはしませんでした。でもそれもミュンヘンにいるから気にならなかったのかなと感じたり。

2013/09/05 (Thu) 16:36 | ineireisan #pNQOf01M | URL | 編集
Re: タイトルなし

ineireisanさん、こんにちは。夏休みの話は全く尽きませんね。そうだ、つまらない気分のときは夏休みの話を思い出すとよいのかもしれませんね! ところでこの夏はミュンヘンに居たそうですが、私はミュンヘンの町に大変関心を持っているのですよ。飛行機だったらひとっとびの場所にあるのに、行きたいと思いながら何年も経ちました。

2013/09/06 (Fri) 20:14 | yspringmind #- | URL | 編集

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