モカシンシューズ

DSC_0045 (640x428)


急に暖かくなったボローニャ。今日は小鳥の囀りで目が覚めた。週末でも朝早く起きる相棒が窓を開けたからだった。本当ならばもう少し眠っていたいところだけど、外のざわめきと小鳥の囀りが放って置いてくれなかった。何かわくわくするような、そんな気分。久しぶりにそんな気分になってもぞもぞとベッドから抜け出して居間へ行くと窓が大きく開け放たれているにも拘らず寒くない、それどころか暖かい風が流れ込むのだ。いつもと違う朝だった。身支度をして近所のカフェに行くと相棒と友人達が驚く。こんなに早く顔を出すには初めてだね、と。確かに。ボローニャ市内に暮らし始めてから土曜日の度に朝寝坊を楽しんでいたから、確かにこんなに早く外に出るのは初めてだった。そう思ったら、ひょっとして近所の人達は、あの家の奥さんときたら土曜日は大変な朝寝坊だ、と思っているのではないだろうかと気になった。が、本当なのだから仕方が無い。でもこんなに外の空気が気持ちがよければ、そんな私でも寝坊などしていられない。そうだ、今日から土曜日の朝寝坊返上だ。冬物を大きな紙袋に詰め込んで近所のクリーニング屋さんへ持って行き、気分がすっきりしたところで13番のバスに乗った。

冬の間中愛用していたショートブーツを綺麗にして先日ようやく仕舞ったら、急に新しい靴が欲しくなった。踵の低いモカシンシューズ。でもぺったんこだったり、ドライビングシューズではない、もうすこしかっちりした感じの靴。それとも細身の女っぽい靴。気に入りの細身のジーンズに合うような、ラフな感じのものがいい。ついでに言えば初夏には素足で履けるような、柔らかい革のものがいい。いつもの店のショーウィンドウを覘き、そこから先の入ったことのない店を覘き、もう一見覘いてみたが良い出会いがなかった。まあいいさ、無理して探すことなどない。其のうち劇的な出会いがあるに違いない。そう思って靴探しを止めて散策を始めた。さん・フランチェスコ教会の辺りは小さな子供たちが一杯だった。若い夫婦が歩き始めたばかりの子供の手を引いてゆっくり歩いているのを見ていたら、ふとフィレンツェの友人のことを思い出した。驚くほど可愛い男の子に恵まれた彼女だった。なのに思い悩んでいた。子供がなかなか歩き出さない、と言って。其れは母親なら心配で仕方ないに違いないことで、周囲の私たち友人も酷く心配だった。良い靴を履かせなさいと医者に奨められ、大人の靴ほど高価な柔らかい革の靴を購入した。高いなあ、でもこれで歩くことが出来るなら、安いものなのだ、と私たちは彼女を励まし、心の中で応援したものだ。其のうち男の子は何事もなかったような顔して歩き始め、私たちはほっと安堵の溜息をついた。小さな子供がおぼつかない足取りで歩いている姿を見つけると、いつも其のことを思い出す。10年も前のことだ。久しぶりにVia San Feliceを歩いた。1ヶ月ぶりだった。其の間に店が幾つも閉まり、また今まさに閉めようとする店もあり、不景気が此処まできていることを確認した。この通りには小さな洒落た店が連なっていて、それなりに何処もが繁盛していたのに。ふと心配になってある店を目指した。いつも室内履きを購入する店だ。この辺りで一番庶民的な店。洒落てはいない。流行っているというよりは細々と続いているという感じだった。しかしこの不況の大波に飲み込まれてしまったのではないだろうか。しかし店にはいつもの若い奥さんがいて、こんにちは、といつもの顔で挨拶してくれた。案外、店は私が知らないだけで上手くやっているのかもしれない。さて、店に入ってしまったからには何か見せていただこう。そうだ、代えの室内履きでも見せてもらおうか、春らしく軽い感じの。奥さんに選んで貰った。高いものではない。たったの10ユーロだった。多分この手頃な値段がこの店の息の長さの鍵なのかもしれない。そんな事を考えながら店を出たところで思い出した。この近くに飛び切りいい靴屋があるではないか。行ってみると店はもうすぐ昼休みなのに幾人もの客がいて、全然店が閉まりそうな気配はなかった。こんにちは、ちょっと見させてくださいね、と挨拶して中に入る。店内の靴を観察しながら、うーん、そうねえ、と考えていたら、おかっぱ頭の美人さんが此処にもあるんですよと足元の大きな引き出しをぐいっと引っ張った。あっ、あった。かっちりした形のモカシンなのに手にとってみたら驚くほど柔らかくて軽かった。私の愛する鹿の皮だった。私は丘を走る鹿が大好き。でも鹿の革で作った靴や鞄も大好きだ。この矛盾に一時酷く悩んだけれど、すきなのだから仕方が無い。履いてみたらまるで誂えたようにぴたりと足が納まった。こういうのが出会いなのである。そう言ったら相棒は都合のいい口実だと笑うだろう。それならこれは春のご褒美としようか。しかしそれだって相棒は、またご褒美かとうんざりするに違いない。まあ、宜しい。何しろ毎日真面目に働いているのだから。私は一瞬悩んだ振りをして靴を自分のものにした。時間にして5分と掛からない買い物だった。多分、新記録だった。

それにしても気分が良い。温かい風。行き交う人々の笑顔。私だって、笑いが止まらないほどご機嫌だ。


人気ブログランキングへ

コメント

お元気そうで何よりです。今日は私にも馴染みのSan Felice通りのお話で嬉しかったです。今度いけるのは来月かな?夏かな?どうぞ「ご機嫌な日々」がいっぱいありますよう。

2013/04/20 (Sat) 17:58 | OrpheusGB #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

OrpheusGBさん、こんにちは。また近いうちにボローニャに来ますか。時間があるようでしたら連絡くださいね。良い季節になりました。明るい夕方を一緒に楽しみましょう。

2013/04/20 (Sat) 19:23 | yspringmind #- | URL | 編集

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する