女友達

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先日の帰り道、バスに乗るために走った。遠く背後に見えたバスが走る私をあっという間に追い抜いて50m先のバス停に止まった。僅か50mだ。何に走っても走ってもバス停にたどり着かない。高校生の頃まで駆け足が早かったのに。と思いながら、随分昔のことになってしまったことに気が付いて、走りながら苦笑した。今の自分はあの頃とは比べようも無い。足が速かったと言っても誰も信じてくれないくらいに。親切なおじさんがバスに待たせてくれた。よくバスで一緒になるおじさんだ。多分外国人で、所帯持ちのおじさん。数年前は毎日お弁当箱を手にぶら下げていた。あれは多分奥さんの手作り弁当だったに違いない。最近は手ぶらで歩いているところをみると、別に夫婦喧嘩したわけではなくて、おじさんの職場でケータリングサービスか何かがあるのだろうと察している。兎に角おじさんのおかげでバスに乗り遅れずに済んだ。それにしてもおじさんに大きな借りが出来てしまった。この次、おじさんが乗り遅れそうだったら、私がバスを待たせなくては。

女友達からメールが届いた。昨夏ポルトガルで知り合った女友達からだった。この夏はどうするの? ポルトガルへ行く? この夏も会えるかな。そんな内容だった。私たちは偶然リスボンの店の中で出会い、初めはゆっくり、そして1週間もしたら前から知っている人のように思えてきた。旅先での出会いは楽しい。それも一瞬の出会いでなく、こんな風に夏の一部を共に通過したりすると。彼女と共に歩いた道を思い出しながらあの夏を恋しく思った。夕食を共にしてからお腹をさすりながら歩いた坂道。8月なのに剥きだしの腕を摩りたくなる程ひんやりした空気に満ちた晩で、そんな冷たさから逃げるようにカフェに吸い込まれて行った。それはあまりにも有名なカフェで、私はリスボンに着いてから毎日のように通うことになった店だ。滞在先のアパートメントからは決して近いとは言えないにしても、ぶらぶらと歩いていけば15分ほどの場所にあった。何時もひとりだから席に着くことは無く、カウンターの前に立って覚えたてのポルトガル語で、カッフェをひとつお願いします、と言って出されたものをぐいっと飲み干すとまた外に出て行くのが常であった。しかしあの晩は席に着き、なかなか注文を取りに来ない給仕を辛抱強く待ち、温かい飲み物が出されてほっと一息ついたときにはもう真夜中になっていた。あら大変。私は地下鉄でアパートメントに帰る彼女のことを気遣い、彼女は徒歩でとぼとぼと歩いて帰る私を心配した。あの晩、多分私たちはあの晩を通じて単なる知り合いからもう少し踏み込んだ関係になったのだ。ところで私はこの夏の予定が全く立たない。本来ならば日本に帰省と言いたいところだが、残念ながら雲行きが怪しくなってきた。兎に角家を何とかしなくては。仮住まいももうそろそろ終わりにしたい頃である。私はそんなことを連ねた上で、それにしても少しボローニャからひとっ飛びするのも悪くない、と何処かで落ち合うことを彼女に提案した。提案は気に入って貰えたらしい。それぞれが行きたい場所を挙げて共通の場所で落ち合おう。そういうことで話が纏まりそうである。そんな気軽な女友達。彼女は昨夏の贈り物だ。そうねえ、何処で落ち合おうかしら。そんなことを考えながら過ごす4月も悪くない。

今日は朝から大風が吹き、急に気温が高くなった。20度を越えるとこんなにも気持ちが良いものなのか、と小さな感動も覚えた。街のあちこちで木蓮の花を見かける。裸の樹に唐突に花開く木蓮の花。やっとそんな時期になった。重いコートを脱いで、暖かいセーターからコットンのさらりとしたセーターに着替えて、足首丈のブーツからモカシンシューズに履き替えて、太陽の恵みを感謝しながら街を闊歩しよう。私の季節の始まりだ。


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