窓の柵

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4月になった。イタリアは昨日に続いて祝日。此の祝日を何と訳すかは非常に悩むところであるが、私はいつもこんな風に言うのである。日本語ならば復活祭の翌日。英語ならばEaster Monday。根拠はあまりない。ただ、そう言うと大抵の人が成程と納得してくれるので、異論が出るまでこのままにしておこうと思う。

職場によっては金曜日から休みに入って今日まで4連休なんてこともあるそうだが、私はカレンダー通りの3連休。3連休でも有難く、自分の体を労わるにも充分である。朝ゆっくり起きて朝食を済ますなり、バスに飛び乗った。特に何の予定もない祝日だ。天気はぱっとしないけど旧市街へ行ってこよう、と思ったのだ。月初めはいつも緊張する。バスの定期券に日付の刻印を入れるのを忘れないようにしなくては、と。バスに乗り込むなり定期券に刻印を入れ、ほっとしながら席に着く。こんな日はがらが空きと思っていたが、各停留所から人が乗り込みバスはあっという間に満員になった。と、4人組が乗り込んだ。まさかと思ったがそうだった、乗車券の検札だ。まさかと思ったには理由がある。私の周囲の人達はいつもこんな風に言うのだ、祝日には絶対検札などある筈がない、と。私は先ほど刻印を入れたばかりの4月の定期券を自慢げに見せる。検札員が定期券の裏側に小さなチェックを書き込んで、グラッツェと言いながら返してくれた。しかしながら乗客の半分以上は無券乗車で、次の停留所でさあさあと検札員に促されて降りていった。こんな風に下車してから、ゆっくり罰金手続き、なんてこともある。僅か1,20ユーロを節約してしまった為に、課せられる罰金は恐らく50ユーロ弱。馬鹿馬鹿しい話である。無券乗車はしないに限る。驚くほどがら空きになったバスが旧市街に入ったところで下車した。店という店が閉まっていた。昨日の新聞に書いてあったとおりだった。こんな日は散策が良い。ショーウィンドウの誘惑がない分だけ、散策に夢中になれるというものだ。私は暫く歩いたところで左折して坂道を上り詰めたところで小さな広場に辿り着いた。此処にはいつか来たことがあった。あれは何時だっただろう。そんなことを思いながらまた歩き始めたところで再び足を止めた。柵が備え付けられた窓。ボローニャに暮らし始めてから間もなく知り合った年上のポーランド女性のことを思い出した。彼女は私より数年早くボローニャに暮らし始めたらしかった。彼女はボローニャ人と結婚していて、旧市街の中心にある厳めしくて由緒ある館に暮らしていた。経済的には全く不自由のない筈だったが、彼女は仕事を探していた。其れまでは市の図書館で働いていたが、契約が切れて更新して貰えなかったのだといって嘆いていた。彼女は自分も社会に参加してボローニャに暮らしている実感が欲しいのだと言った。私はそんな実感も欲しかったが、其れよりも経済的に必要に迫られて、同じく仕事を探していた。そんなことがきっかけで私たちは知り合ったのである。その彼女がある日こんなことを言った。私の家の窓という窓には、牢獄のような柵が取り付けられている。私はそれが大嫌いで、窓から顔を出せるような家に暮らしたいのよ。旧市街にありがちな悩みだった。確かに泥棒が忍び込まないように柵が取り付けらた窓が多かった。しかし私は、そんな由緒ある旧市街の館に暮らせるのは大変な幸運で、柵は其のうち慣れてしまうに違いない、と言って笑った。そうだ、柵に関しては慣れてしまえばいいだけだ。ところがである、昨年末に現在の仮住まいに引っ越してきてはたと思った。窓に柵があるのだ。旧市街ではないが柵が取り付けられていた。相棒はそのくらい我慢しなくちゃ、と窘めたが、そのうち私たちのどちらもが柵にストレスを感じ始めた。窓から顔を出せないではないか、と。私は柵に関して相棒と論議しながら、もう十何年も前に彼女が嘆いていたそのことを思い出していた。たかが柵。しかし嫌いなものは嫌いだ。私は窓柵のない家に暮らしたい。あの日彼女が言ったように、私が相棒に訴えると、相棒は笑うことなく、僕も、と言った。あの日私に笑われた彼女はちょっぴり可愛そうだったな、と目の前の窓を眺めながら反省し、さて此の家の主はどんな気分なのだろうと思いをめぐらすのだ。

それにしても折角の夏時間なのだ。高気圧よ、ボローニャに早く来い。さもなければ夏時間の恩恵を授かることが出来ないのだから。


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コメント

病気をしてこうやって寝込んでいるときに、仕事のことや生活のことを考えると
私は社会の一部だったのだと実感します。
いつまでもふわふわと海外に住んでいた自分が、急に大事な社会の一部だと
考えられて、またがんばらなくてはと思うのです。
イタリアの仕事探し大変そうですね。

ちなみにドイツでも一回にすめば窓に格子が設けられます。
でもこの写真のような格子ではなくて、我が家の格子はくるくると
デザインされているので、そんな風に考えたことはなかったです。

ただこの格子やはり人間用にできているので、気を抜くと我が家の猫が外へ飛び出して
行きそうになり、おもいきり窓を開けることができません・・・・

2013/04/03 (Wed) 07:11 | inei-reisn #pNQOf01M | URL | 編集
Re: タイトルなし

inei-reisnさん、こんにちは。病気をして分かることは沢山ありますね。私たちのようなタイプの人間は社会の一部でいることは、案外大切なのではないでしょうか。と言いながらも私はたいしたことはしていないので、偉そうなことはあまり言えませんけれど。
イタリアでは地上階に限らずこんな格子の柵が窓に取り付けられていることが多いです。泥棒対策なのでしょうけど、有り難いようで有り難くない。私はもっと自由な窓が好きです。猫は・・・確かにするりと出て行けますね。

2013/04/06 (Sat) 00:23 | yspringmind #- | URL | 編集

yspringmindさん、こんにちは

私も、京町家に暮らしているので

窓は格子戸ですが^^;

これが、鉄の格子だったら・・・と想像すると

わたしも、ストレス感じます


せめて、イタリアの国旗の様な

カラフルなトリコカラーに塗り替えられたら

気分も晴れますか^^(大家さんに、怒られますかね?)

2013/04/06 (Sat) 12:53 | 高兄 #eP1cGWnA | URL | 編集

今日は、強風の中 久しぶりに近所を散歩してきました
偶然ですが・・・
窓に素敵な格子がある お宅を発見
いつも通ってはいたのですが、気付かなかった新発見

明日から新学期が始まる娘達
私も ドキドキです

2013/04/07 (Sun) 09:20 | 春風 #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

高兄さん、こんにちは。確かに京都は格子戸だけど鉄柵ではないから感じが随分柔らかいですね。鉄柵はストレス感じますよー。しかも開くことの出来ない鉄柵は。
こんなイタリアではありますが中には鉄ながらも格子ではなくて模様の柵もありまして、そういうのは美しいと思うのですが、此れにしても開閉が自由に聞かないとなるとやはり同じようにストレスを感じるのかもしれませんね。

2013/04/07 (Sun) 16:00 | yspringmind #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

春風さん、こんにちは。ご近所に素敵な格子がある家を発見ですか。私も見てみたいです。それにしてもそういう季節なんですね。新学期!初々しい季節の始まりですね。

2013/04/07 (Sun) 16:03 | yspringmind #- | URL | 編集

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