白いボローニャ

DSC_0008 (Small)


外の雪。眺めていると凍り付いてしまいそうだ。昨夕、仕事帰りに旧市街を放浪して体が冷えてしまったらしい。晩になって熱が出た。しかし其れも朝を迎えると平熱に戻り、迷った挙句また旧市街の散歩に出掛けた。雪は降っていなかった。しかし雪に覆われた路面は冷たくて、酷く滑りやすかった。だからなのか、行き交う車も街を歩く人もとても少なく、嬉しいような淋しいような。いつもとは違う土曜日の風景だった。バスの終着地まで行こう思っていたのにふたつ前で下車したのは、何の理由も無かった。ふと思いついてバスから飛び降りてしまったのだ。七つの教会群のある広場に向かって歩いていたら見慣れぬものが目に飛び込んだ。老人と犬だった。でも何か見慣れないものが・・・と観察してみたら、犬が靴を履いていた。四つの赤い靴。目を見開いて驚く私に老人が声を掛けてきた。フォックステリアですよ、と。私はうんうんと頷きながら、あなたの犬は散歩の時にいつも靴を履いて出かけるのかと質問すると、何足も持っているのだといって照れ笑いした。雨の降る日は長靴を履くし、真夏の太陽で路面が焦げそうな日は涼しげなサンダルも履くと言う。そんな犬に向かって、あんた、お洒落ねえ、と話しかけていると通行人たちが集まってきて犬は一気に注目の的、人気者になった。狐や鼠を獲るフォックステリアは見かけによらず高貴な気持ちを持っているらしく、えへん、と胸を張って見せる。その姿勢のよさと赤い靴がミスマッチで益々人気は高まる一方だった。それではまた会いましょう、と老人と犬に挨拶をして私は人の群れから離れた。七つの教会群を通り過ぎ、美味しいカッフェを提供するいつものバールも通り過ぎて目指したのはサン・ペトロニオ教会だった。教会の上階から雪に覆われた白いボローニャを眺めたいと思って。ところが上階へと続くエントランスは閉まっていた。がっかりだったが、そんなこともあるかもしれないとは想像していたから、小さな溜息をひとつつくと、まあ、いいさと気を取り直した。子供たちが昨晩積もった雪の中を走り回る。滑って転んでどろどろになるが泣く子供はいない。それどころか何がそんなに楽しいのか、どろどろになったズボンを摘み上げながら高らかに笑う。其れを見て親たちが嘆き、子供たちはまた何も無かったみたいに走り回る。私もそうだった。雪が降ると庭に飛び出し、それから公園に駆けつけてぐるぐる走り回った。いつもなら転ぶと同時に大泣きするが、雪の中に転がることが特別なことに思えて笑いが止まらなかった。大きな雪だるまを作ったのに、怪獣の像みたいだと言われてかんかんに怒ったことですら今はよい思い出だ。あんなに雪が好きで雪の中を走り回っていた私は、今は酷い寒がりで雪が降ることを望まない。そう言いながらもこんな日に散歩に出掛けるのだから、私は案外昔から何にも変わっていないのかもしれない。大きな子供。大人のぬいぐるみを着た子供。多分そんなところだろう。それにしても。数日前、仕事を半日休んで楽しい午後を過ごした。あの日も寒い一日で、手も鼻も耳も凍ってしまいそうだった。酷く寒そうに見えた広場の噴水の横を通り過ぎながら、こんな日に人と約束をするなんてと思ったのだ。しかし其れでよかったのだ。予定を数日ずらしていたら、此の雪で延期になって、約束が知らない間に消えてしまっていたかもしれない。そんなことってよくあることだ。だから、楽しいことはあまり先に延ばさないほうがよい。気が付くと雪が降り始めていた。私は雪から逃げるように近くのカフェに飛び込んで、温かいチョコレートを注文した。雪片はどんどん速度を上げて落ちてくる。週末の雪。此の雪が今年最後の雪になると良いけれど。


人気ブログランキングへ

コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2013/02/23 (Sat) 20:12 | # | | 編集
Re: タイトルなし

鍵コメさん、こんにちは。翌日から雪が降り始めましたからね。昔の人は善は急げと言いましたが、よく言ったものですね。ボローニャ市内と言えど旧市街に比べると私が暮らす辺りは20センチ積もりました。ボローニャ市が10センチまでは除雪車の出動なし!と決めたために一時混乱がありましたが、今朝にはすっかり道が開いてバスも正常に運行。昼にピアノーロに暮らす姑のところに行ったら、40センチ積もっていました。でも質の良い雪で、パウダースノーって言うのでしょうか、綺麗で感激しました。私が住んでいた頃はそんな素敵な雪は降らなかったけど。思うに街で会ったあの犬は、今日は長靴を履いてお散歩なのではないかと。昨日は街中で靴を履いた犬のほかに、高級冬用ジャケットを着た犬も見ました。みんなお洒落で驚きです。

2013/02/24 (Sun) 17:35 | yspringmind #- | URL | 編集

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する