静かな雨

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昼から雨が降る予報だった。そして雨は本当に正午を過ぎた直ぐ後に降り始めた。侮って傘を持たずに出てきた私は旧市街で小さな傘を購入することにした。安い傘は幾らでもある。街角に立っている外国人の男たちから買えばよい。しかし大抵直ぐ壊れて損した気分になるのだからと、以前折りたたみの傘を購入した鞄屋さんへ行った。Via d’Azeglioに面してある此の店は、歴史があるらしい。随分の常連客が居ると聞いたことがある。私が店に入ったときもそんな常連客で賑わっていた。折りたたみの傘が欲しいのだけど、という私に店の人がこんなのはいかがと大振りな折りたたみの傘を差し出した。すると脇から常連客が口を挟んだ。ねえ、この方にはあれのほうが良いんじゃない?其の言葉に店の人が頷いてとても軽くてコンパクトな傘を出してくれた。よく見ると以前購入した傘メーカーのものだった。うん、これなら間違いは無い。と、それを購入することにした。あまりの早い決断に店の人も常連客も目を丸くして、定価から2ユーロ引いてくれた。こんなこともたまにはある。新しい傘を差して歩き出した。色は日本に暮らす日本人なら購入しないに違いない金色掛かった茶色。模様は無く、可愛げはまったくない。日本の選択肢が沢山ある傘売り場を思い浮かべて、溜息をついた。雨は強く降ることもなく、しかし止むことも無かった。少し歩いたところの靴屋の前で足を止めた。店は昼休みで閉まっていた。先客のご婦人の横に立って割引になったブーツを眺めていたら背後にアメリカアクセントの英語を話す3人組がやって来た。若い3人組だった。男性がイタリアの靴が一番だと言った。すると女性がこんなに沢山靴屋があると幾らお金があっても足らないわね、と言って、ああ、危険な町だわ!と嘆いたので、私と先客のご婦人が笑った。ご婦人は私よりずっとずっと年上に見えた。英語がわかるらしかった。確かに靴屋がこんなにあると危険だわねと私が3人組に話しかけると、ご婦人が其の後に付け加えた。でも大丈夫。ほら、昼休みで閉まっているのよ!そう言って3人組にウィンクを投げた。私たちは笑って、チャオ、チャオと手を振って別れた。私はポルティコの下を歩きながら、先ほどのアメリカ人が嘆いていた言葉を思い出していた。ああ、危険な町だわ!うん、確かに危険である。だから昼時のウィンドウショッピングが宜しい。見るだけ。本当に見るだけ。大通りから外れて路地を歩き始めた。街は静かな冬の雨に濡れて、鮮やかに見えた。人はごく僅かで、通り過ぎる車は無い。ボローニャが一番ボローニャらしく見える場所、それが路地なのだ。1月がもう直ぐ終わり、寒い2月が過ぎたら春がやってくる。其の頃には私と相棒の仮の生活も終わり、新しい場所での生活が始まるのかもしれない。落ち着いて暮らせる私達らしい住まいが見つかりますように。静かに降り落ちる雨を見上げながら、そんなことを呟いた。


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コメント

素敵なお住まいが見つかりますように。

2013/01/20 (Sun) 15:41 | micio #O/XG6wUc | URL | 編集
Re: タイトルなし

micioさん、有難うございます。頑張りますよ。春を目標にこれから家探し大作戦が始まります。

2013/01/20 (Sun) 23:24 | yspringmind #- | URL | 編集

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