北の海

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私が泊まっているホテルはいわゆる環状道路の外にある、住宅街に位置する。といっても不便ではなく、それどころか便利で快適で文句のひとつもつけようが無い。何処の国でもそうだけど笑顔に勝るものは無い。此のホテルの一番の魅力はまさにその笑顔である。ああ、此処に決めてよかった、と昨日から何度思ったことか。

朝、目を覚ますと薄日が差していた。これはいい。簡単に朝食を済ませて散策に出掛けた。雨降りだったら行こうと考えていた近所の美術館を横目に東へ東へと歩いた。昨日ホテルの青年が教えてくれた地元の人々が行く市場へ行ってみようと思ったのだ。此の辺りは面白いから是非行ってみて欲しいと青年が言ったとおりだった。街の中心とは違う、もう少し市民の生活空気が漂う界隈。何度も足を止めてわき道に反れ、そうしては方向感覚を失わぬ為にまたメインの通りに戻って歩いた。それにしても寒かった。気温は5度ほどだっただろう。何ブロックも続く市場をすっかり見終えたところでトラムに乗った。今回の訪問で見たい所がひとつあった。それは中央駅の向こう側にある北の海。何が在るでもないが、どうしてもその様子を一目見たかった。それ以外の理由は無かった。しかし地図でみると海とは一言も書かれていない。もしかしたら運河なのかもしれない。中央駅でトラムを降りると通行人に道を尋ねた。駅の向こう側へ行く道はどれですか。するとこんな答えが返ってきた。駅の向こう側? ああ、海だね? 私は歓喜して、そう、海がみたいんです、と答えると通行人が親切に道を教えてくれた。此処をずっと真っ直ぐ行ったら海だから。海。やはりあれは海なのだ。私は走り出したい気持ちを抑えて言われた道を真っ直ぐ歩いていった。駅を出ると霧が掛かっていた。フェリーボートの発着所の近くにカフェがあった。不思議な形をした店で夏に並べるテラス席用の木の椅子が幾重にも重ねられていた。中にはちょっとよい感じの大人の男女が座っていて、話しながら時々海を眺めていた。発着所には沢山の人が集まっていた。歩きの人は少なく、大抵が自転車に乗る人達だった。此の国の人達と自転車が密接しているのを実感しながら、その様子を暫く眺めていた。そんな私の様子を人々は不思議そうに思ったに違いないけれど。みんなと一緒にボートに乗ってみようかと思ったが、ほかに見たい所がいくつもあったので次のお楽しみにとっておくことにした。11月下旬はアムステルダムの人々にとってまだ秋なのだろうか。それとも初冬なのだろうか。寒がりの私には初冬どころか真冬であるが。それにしても、小一時間あの寒いなかに立っていたせいで鼻風邪を引いたらしい。家に帰ったら相棒がきっと言うだろう。寒いのに何故そんな所へ行ったのだとか、どうして一時間もそんな所に突っ立っていたのかとか。それは、私にしか分からないこと。いいや、本当は私にだって分からないのだ。


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