寒がり

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静かな一日。ボローニャ郊外で繰り広げられる様々な祭もほぼ終わったらしい。周囲からもトリュフ祭りへ行くとか、ポルチーニ茸祭りに行くとか、めっきり聞かなくなったから。秋が終わりつつあるのを感じる。冬が目前まで迫っているのを感じる。この時期、気をつけなくてはならないことがある。家に閉じこもらないこと。寒がりの私のことだ。うっかりすると一日家に閉じ篭ってしまうことがある。何しろ寒い。そして家ですることは山ほどある。したいことも沢山ある。でも、外に出よう。こんなに手軽な気分転換方法を逃す手はない。日頃職場に閉じこもって書類とにらめっこしているのだから、週末くらい外に出て色んなものを見て感じなかったら心が偏ってしまうと言うものだ。そう自分に言い聞かせて、温かい襟巻きを首に巻きつけて、帽子を目深に被って、さあさあと自分の背中を押すのだ。そうして帰ってくるときには、やはり出掛けてよかったと思うのだから。

ボローニャに暮らし始めた年の11月、ローマへ行った。あの日はとても寒くて私が暮らしていたボローニャ郊外の平地の町には重苦しい霧が朝から立ち込めていて一寸先も見えなかった。車で同行する相棒が、うんざりだと言わんばかりに頭を左右に振りながらハンドルを握っていたのを思い出す。霧は町を出てからも、高速道路に乗ってトスカーナ州に入ってからもウンブリア州に入ってからも続き、おかげで随分時間が掛かった。ローマについてようやく霧が晴れたときには、予定よりも3時間遅く、空がもうじき暗くなるという頃だった。ボローニャのカープレートをつけた車はローマ人たちに幾度もクラクションを鳴らされた。遅い遅い、もっとスピードを出せ、と。私たちは地図で道を確認しながら走っていたので彼らと同じスピードで走ることが出来なかったからだ。それにしてもローマの車のスピードはめまぐるしくて、地図を見ていなくたって到底そのスピードにはついていけなかっただろう。夕方のローマ。大きな街独特の喧騒が満ちていた。私たちは大きな公園の近くに宿を取り、荷物を置くと相棒の古い友人に電話を掛けて再び車に乗って出掛けた。友人は昔アメリカに住んでいた人だった。アメリカにいた頃、彼と相棒は仲がよかったらしい。幾つもの思い出を共有していたらしく彼の美しいアメリカ人の妻や賢そうな息子、そして私の存在をすっかり忘れてお喋りに夢中だった。アメリカ人の妻はイタリアに暮らし始めたばかりの私のことが気になるらしかった。何故なら彼女がこの街に移ってきた当時、文化や考え方の違いに酷く苦悩したからだった。私はくすくす笑いながら、それは既に私も感じていること、しかし、こんなギャップは私にとって初めてのことではなく、日本からアメリカに移り住んだときにも経験したから大丈夫と答えると、それならいいけれど、と彼女は少し安心したらしかった。あの晩の手料理は美味しかった。ローマ生まれでローマ育ちのお姑さんから教えて貰ったという料理の数々に、相棒も私も驚くばかりだった。その傍らで彼女の夫が自慢げに微笑んでいた。翌朝、私は仕事の面接に行った。ローマに暮らす人々には私のしっかり着込んだ冬の装いが可笑しかったらしく、君は何処から来たのかとからかわれたものだ。ボローニャが寒かったからと答えると、今度はボローニャから面接に来たのかと驚かれた。私はその面接に合格して、ローマに本当の冬がやって来た頃に仕事を始めることになった。誰ひとり知らないローマの会社で。でもみんなは私のことを知っていた、ボローニャから来た人、と。あの日の厚着があっという間に噂となって人々の耳に届いたらしかった。確かにあの日のローマは温暖だった。軽快な装いの人々とすれ違いながら、カシミアのタートルネックセーターの自分を恥ずかしく思ったものだ。それだけボローニャとローマの気候が違うと言うこと。私はその日までちっとも知らなかったのだから仕方がない。

今日のボローニャは格別寒い。明日から冬の長いコートを着て出掛けようと思う。さもなければ体が冷えてどうしようもない。と、あの日のことを思い出して、だけどカシミアのタートルネックセーターはまだ止めておこうと思い、こっそり思い出し笑いした。


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コメント

長いコートの季節・・・これから本格的な寒さが始まるのですね。
いいタイミングで、少し気温が高い街での生活がスタートされるそうでよかったですね。

お腹は、夏も 冬も 寝てる時も暖かくしているほうが身体にいいそうで、
最近は日本でも色々な腹巻が売られていているようです。
私も先日友人が幾つか送ってくれましたが、お腹が温かいと寒さの体感が随分と違います。

日本ではヒートテックの下着とか防寒効果のあるものが豊富ですね。

私は冬はレッグウォーマーも手放せません(笑)


2012/11/18 (Sun) 21:36 | るみこ #- | URL | 編集
Re: タイトルなし

るみこさん、こんにちは。今朝は急いでいたのでうっかりいつもの短いジャケットで外に飛び出してしまいました。寒い。お腹も冷えるけど腰が冷えますね。何しろ丘の辺りは朝晩零度近くになるので、今頃からはがっちり着こんで出掛けなくてはなりません。ああ、早くボローニャ市内に暮らしたいです。
昨年の夏に帰省した際、ヒートテックの下着を探しましたがやはり夏は何処にも売っていないようですね。ボローニャならば夏でも下着屋さんへ行けば冬のウール+シルクのシャツの一枚くらい手に入るのですが。
るみこさんはレッグウォーマーが手放せませんか。私はスカーフと帽子ですよ。風邪を引かないように気をつけなくてはね。

2012/11/19 (Mon) 21:49 | yspringmind #- | URL | 編集

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