文化

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金木犀の匂いがする。快晴に吹く微風がテラスの角に置いた金木犀の花の匂いを運んでくる。今年も咲いた。冬の恐ろしく冷たい風や大雪にも負けず、後にやってくる春と夏の間にたっぷり太陽と雨を吸収して、9月になるとまるで当然のような顔して花が咲かせる。有難いと思う。今年も咲いてくれて有難うと金木犀に話しかけた私の声は多分ちゃんと伝わったはずだ。恐らく今週一杯くらいいい匂いを放ってくれるに違いない。この時期辺りからボローニャや近郊の町で様々なことが催される。例えばワインや栗、収穫した穀物や牛肉や腸詰、ポルチーニ茸もあればトリュフもある。車でその辺りを彷徨っていれば何かしら面白い祭りに遭遇する。村や町に暮らす人達が楽しむために行われるものが多く、それだからますます楽しい。中にはとんでもなく美味しいものに出合えることがあり、ボローニャ辺りの人達はその手の情報をあの手この手で探っては週末の催しもの巡りをするのである。旧市街で行われるのは郊外のものとは少々違っていて、例えば芸術、例えば文学、例えばモーダを主題にしたものが多い。昨日、旧ボローニャ大学の中庭が妙に賑わっているので覘いてみたら、職人さんたちが集って店を出していた。帽子を作る職人さんの店があり、絹や純毛でスカーフを織る職人さんの店があり、向こうのほうにはヴィンテージ風の衣服を作る店があり、そして靴を作る店があった。靴職人は40前後の男性だ。この店の名前はずっと前から知っている。ボローニャに来たころからずっと。あの頃は彼の両親が店を営んでいた。手作りの靴は当時80万リラから作りますよ、と店に飛び込んで値段を訊ねる私に彼の母親が教えてくれたものだ。3ヶ月かかりますよ。でもあなたの足にぴったりの靴を作ります。彼女はそう言って棚から一足の靴を取り出して見せてくれた。靴には客の名前が書かれた札が括りつけてあった。客には仕上がるまでに3,4回店に来て貰って、ぴったりの靴を仕上げるのだそうだ。数年前、彼らが引退したと知人から聞いたけど、そうか、息子がちゃんと後を引き継いだのか、と分かり嬉しくなった。靴が出来上がる工程を見るのは初めてではない。しかし何時見てもその丁寧さに感動する。昔、手先が器用で衣服の類は何でも作る母が言っていたのを思い出す。何でも自分で作れるけれど、靴ばかりはそうはいかない。靴は大切、履ければいいってものではないからね。足にちゃんと合っていなければ、歩くこともままならない。だから家では子供の頃から靴だけは念入りに選ぶ習慣があった。職人が靴を作る様子は興味深く、そのうち彼の周囲に人だかりが出来た。彼が仕上げた靴が幾つも並んでいて、明らかに外国人風の男性がそれを感動の眼差しで眺めていた。思うに靴は、イタリアの文化のひとつである。と言ったら妙にイタリア贔屓だなと周囲のイタリア人たちに冷やかされたが、イタリアに暮らし始めてからずっとそう思っていたのだ。若い彼が靴を作る文化を両親から引き継いでくれたことを嬉しく思い、イタリアの靴文化は当分安泰であると内心安堵の溜息をつくのだった。それにしても秋が駆け足で近づいている。そういえば金木犀が咲くのも少し早いようだ。長い秋になるのだろうか、それとも秋は案外あっという間で長い冬になるのだろうか。どちらにしても赤ワインが美味しい季節であることには違いない。。


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コメント

赤ワイン

私も飲みたくて、今日あたり おいしいワインをいただきたく・・・
そんな気分でした

昨夜は、最高にハッピーでした
たまには、いい
夢を見るのも大切
全身で音・生名声を浴びてきました

一年分の疲れが 飛んで行った感じです
なななんと、再来月追加公演があるらしく、行ってしまいそうです
老若男女楽しんでおりました

2012/09/17 (Mon) 07:44 | 春風 #jgTtIlIo | URL | 編集
Re: タイトルなし

春風さん、こんにちは。夏場に頂くと体温が上がって暑さが増す赤ワインは、この頃から咽喉元から先を滑らかに滑りながらじーんと良い気分にさせてくれますね。なかなか良い季節ではありませんか。
楽しい晩だったようですね。一年分の疲れが飛んでいっただなんて、それは全く幸せなことです。ほんと、たまには夢を見るといいです。私もそんな風に夢見ながら頑張っています。

2012/09/19 (Wed) 21:42 | yspringmind #- | URL | 編集

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